MaaSに照準 スズキ、単独では困難

 「我々は独立した企業として経営していくことに変わりはない」。スズキの鈴木修会長はかねてこう話してきた。ただCASEをめぐる動きは日々加速度を増しており、一社単独では対応が困難と判断。自動運転など次世代技術の研究開発を進めるため、資本提携に踏み込むことにした。

 スズキは15年に独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携を解消して以降、資本面では独立性を維持してきた。ただ16年に検討を始めたトヨタとの業務提携の段階から、資本提携は既定路線との見方もある。次世代技術では分の悪いスズキが生き残る道として、トヨタとの提携関係を深めることが不可欠だった。

 スズキの20年3月期の研究開発費は、前期比7・5%増の1700億円を計画している。CASE対応などに向けて増加傾向が続く中、トヨタの出資による資金調達は財務面でも大きい。スズキは16年3月期に35・4%まで低下した自己資本比率の改善が喫緊の経営課題だった。足元では40%を超える水準まで回復したが、もう一段の増資が必要と判断した。実務面でも提携効果の大きい、トヨタによる出資が最適と考えた。

 23日には約250億円を投じ、相良工場(静岡県牧之原市)の隣接地に次世代自動車の研究開発施設を整備することを発表。取得予定地の規模は約80万平方メートルに及ぶ可能性がり、自動運転技術や電動車の開発を加速する。

 トヨタ自動車やソフトバンクなどが出資する移動サービス会社、モネ・テクノロジーズ(東京都港区)にも出資しており、自動運転の先にあるMaaS(乗り物のサービス化)にも照準を合わせている。
(取材・長塚崇寛、政年佐貴恵)
日刊工業新聞2019年8月29日の記事を編集