「三菱スペースジェット」受注商談に追い風、カギは“座席戦略”
米国の航空会社「メサ航空」と、M100の受注に向けた覚書を締結した。現状のカタログ価格は40億円程度とみられ、契約が成立すれば受注額は4000億円規模となる見込み。100席未満のリージョナルジェット機では群を抜く客席の広さや、燃費性能など経済性で高い評価を得たもようだ。
三菱航空機が開発する「三菱スペースジェット」シリーズは、5度の納期遅延などで苦戦が続く。M90は400機ほどの受注があり、運航に必要な型式証明の取得に向けて飛行試験を実施中。20年半ばに初号機を納入する計画だ。一方、米国規制に対応したM100は今後の主力機種に位置付けており、今回の大型受注で事業拡大に弾みをつける。
日刊工業新聞2019年9月7日電子版
小型機覇権争い、反転攻勢
三菱航空機(愛知県豊山町、水谷久和社長)が、国産小型ジェット旅客機の覇権争いに向けた布石を相次ぎ打ち始めた。米国の規制に対応した新機種の開発を本格化したほか、ブランドイメージ刷新を狙って名称を「三菱スペースジェット」に変更した。その傍らでカナダ・ボンバルディアが同市場からの撤退を検討。三つどもえの戦いから、ブラジル・エンブラエルとの一騎打ちに移行していく。起死回生をもくろんだ打ち手は局面を打開できるか。
三菱航空機は仏パリ郊外で開催された「パリ国際航空ショー(パリエアショー)」で、座席数65―88席の新機種「スペースジェットM100」の開発を公表し、2023年に市場投入する方針を明らかにした。座席幅を広めに設定するなど、100席未満のリージョナルジェット機にはなかった快適性を前面に押し出した設計だ。これに燃費性能など経済性を付加し、来るべき戦いに備えようというわけだ。
実際、市場の追い風は三菱航空機に吹き始めている。同社によると今後20年間のリージョナル機市場は5137機の需要が見込め、このうち約4割は米国が占めるという。
競合の一角だったボンバルディアは三菱航空機の親会社の三菱重工業とリージョナル機「CRJ」事業の売却で交渉に入った。100―150席級の小型旅客機「Cシリーズ」は米ボーイングや欧エアバスとの競争に敗れてエアバスの軍門に降り、民間航空機事業から撤退の意思を示している。
最大手のエンブラエルはボーイングと年内に合弁会社を発足させる計画だ。ただ業界関係者は「ボーイングはリージョナル機はニッチ市場と捉えており興味はないだろう」と指摘する。
加えてボンバルディアは、米国の航空会社とパイロット組合の間で結ばれた労使協定で座席数などの制限がある「スコープ・クローズ」を見越し、90席級の開発を凍結している模様。「ボンバルディアはリージョナル機の最新型を保有しておらず、三菱航空機は十分に戦える」と続ける。
三菱航空機がM100の開発に乗り出すのも、スコープ・クローズが大きく影響している。水谷社長も「スコープ・クローズは(座席数制限などの)緩和が期待されていたが、状況変化が起きず今に至っている」と認識。M100は現状のスコープ・クローズの基準を満たしているため、「個々の顧客のニーズに応えていきたい」(水谷社長)としている。
