勉強を通じて「野球に取り組む姿勢」を変える香取シニア
■野球と勉強に共通する「気持ちのオンオフ」の切り替え
照りつける太陽のまぶしさが一段と強く感じる土曜日の昼。香取シニアの3年生は、中学野球最後となる大会『マリーンズカップ』が迫る中、グラウンドの横のある手作りの学習部屋に集まった。手に持つのはバットでもグラブでもない。ドリルと筆記用具だ。
中学生という年代は野球でも勉強でも覚えることが非常に多い。時には頭の中がゴチャゴチャになってしまうこともある。そこを整理し、野球も勉強もパフォーマンスを向上させるのが豊田コーチの役割だという。指導の評判は高く、香取シニア以外にも関東一円の名だたる強豪チームでも指導を行なっている。
では、実際にどのようにして子どもたちを指導しているのだろうか。豊田コーチが教える科目は主に英語と数学。1、2年生には独自にプリントを作成するが、受験を控える3年生は各自の学力に合ったドリルを持参させる。
「3人が横並びの机で勉強するのですが、子どもたちの配置がポイントです。『学力が低い・高い・低い』という順に席を配置します。そうすると、学力の低い子が高い子に質問をする→高い子は教えるといった現象が起きます。学校の授業や塾というのは基本的に隣同士で会話をすることはできませんよね? でもうちはあえてOKなんです。
学校や塾の授業では知識を蓄える=インプットはできます。でも、インプットしたことをアウトプットする経験って実は少ないんです。インプットを一番効率よくするためにはアウトプットすることです。勉強を他者に教えることは自分自身の復習にもなり、まさにアウトプットといえます」
さらに、勉強時間にもこんな狙いがあるという。
「勉強に集中し始めたところであえてストップをかけてしまうんです。そして、休憩を挟んでまた始める。1時間半の試験も、1時間半の野球の試合もずっと集中することは不可能ですよね。どこかで気持ちを抜かないといけないですし、集中しなければいけない場面では一気に集中をしなければいけません。気持ちのオンオフの切り替えを身につけることは勉強でも、野球でも効率化のために必要です」
■勉強をツールにして、野球に取り組む姿勢を変える
「勉強の成績を上げることはもちろん大事ですが、一番は『勉強というツールを使って野球に取り組む姿勢を変える』ことが私に求められています」という豊田コーチが用いるのは、メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手や、菊池雄星選手が高校時代に使って話題にもなった「オープンウィンドウ」「マンダラチャート」と呼ばれるシートだ。将来の夢や目標は何なのか? 自分と向き合い、まずはそれを具体化させる。それを達成するためには「いま何に取り組むのか?」、そして「どうやって取り組むのか?」をシートに落とし込む。
「ボールの飛距離を伸ばすためにはどういった練習や取り組みをすればいいのか? 打撃のタイミングが課題ならまず何に取り組むべきなのか?」最初は何も書けなかった1年生も自分と向きあい、考え続けていくうちに、いつしか自発的にスラスラと書けるようになるという。
高校でも大好きな野球を続けられるようにーー
豊田コーチはグラウンドの外で子ども達の夢の実現を応援している。
(取材・写真:細川良介)
