先日、世界的な大手レーベルのひとつ、「Universal Music Latin Entertainment」と契約を結んだことを発表したナオト・インティライミさん。

アジア人として初の契約(!)とのことですが、今回の世界デビューを含め、ナオトさんといえば、数々の大きな“チャンス”に恵まれているとネット上で噂になっています。

「エジプトで、プロサッカーチームにスカウトされる」

「パレスチナで、アラファト議長の前で『上を向いて歩こう』を歌う。2人で平和について語り合って、議長府に数泊もさせてもらった」

「コロンビアで、現地の有名アーティストに気に入られツアーに同行。デビューの話を持ちかけられた」

いったいなぜこんな信じがたいエピソードが多数あるんでしょうか!?

彼なりの「チャンスをつかむコツ」があれば知りたい。そう思い、取材してきました!

〈聞き手=いしかわゆき〉


【ナオト・インティライミ】三重県生まれ、千葉県育ち。世界66カ国を一人で渡り歩き、各地でライブを行う。ソロとしての活動のほか、コーラス&ギターとして Mr.Childrenのツアーサポートメンバーも。2010年にメジャーデビューし、「タカラモノ 〜この声がなくなるまで〜」、「今のキミを忘れない」は100万ダウンロードを超えるヒットを記録。その後もNHK紅白歌合戦出場、全国47都道府県弾き語りツアーなど精力的に活動を続け、2018年に名古屋ドーム単独公演で4万人を動員、2019年7月には「Universal Music Latin Entertainment」との契約を発表

いしかわ:
…あの、最初に全然関係ない話をしてもいいですか。

ご自身のことを「ティライミ」と呼んでいるというのは本当ですか?

ナオトさん:
ホントだよ!ケチュア語で「太陽の祭り」って意味なんです。イイ感じでしょ!?


ガチだった…! (ケチュア語とはおもに南米で話されている言語らしいです)

「団地に引きこもっていた」ところから、世界一周の旅へ

いしかわ:
今日は、ナオトさん流の「チャンスをつかむコツ」をお聞きしたいです。

ナオトさん:
そうだなぁ。やっぱり2003年8月から2004年末までの1年半、「世界一周の旅」に出たときは、各地でさまざまなスカウトを受けましたね。

まずはその話からしてもいいですか?


どうぞ

ナオトさん:
当時、日本で歌手としてデビューしてたんですけど、まったく売れなくて。

結局事務所もつぶれてしまって、8カ月間、亀戸の団地に引きこもっていたんです。

いしかわ:
ナオトさんでも引きこもったりするんだ…

ナオトさん:
するよ! 僕は中学2年生でギターを始めて、高校1年生で歌手を志し、大学在学中にデビューをしたから、それまでは有言実行で夢を叶えられていたんです。

それが、どれだけ自分が頑張っても結果が出ない。現実は厳しいんだと思い知らされました。

いしかわ:
努力だけではどうにもできないこともあると。

ナオトさん:
でも、ふと壁を見たら「2010年にワールドツアーをしたい」と自分で目標を書いた紙が貼ってあって、「このままじゃいけない!」と全財産の208万円を握りしめて立ち上がりました。

「ワールドツアーをしたいなら、下見に行かなきゃ!」ってね。

いしかわ:
超ポジティブじゃないですか!!

ナオトさん:
そう。僕は生まれながらにしてポジティブ&アグレッシブなんです!



基本スタンスは「飛び込んでいく」

いしかわ:
そして世界を旅行するなかで、いろんなスゴイ出来事に出会ったんですね!!

ナオトさん:
旅のなかではいろいろな出来事がありましたが、すべて「自然に起きた」というよりも、おそらく僕の「アグり」の高さが関係していると思います。

いしかわ:
アグり?

ナオトさん:
アグレッシブさですね

たとえば、エジプトでプロサッカーチームに選手としてスカウトされたときは、現地で草サッカーをやっている輪に飛び込んでいったら、地元チームの監督がたまたまそれを見ていて、「一緒にやらないか」とスカウトしてくれたんですよ。



いしかわ:
(そんなことあるんだ…!?)

ナオトさん:
僕は幼稚園から高校生までは本気でサッカー選手を目指していて、Jリーグ・柏レイソルのジュニアチームにも所属していたので、海外ではサッカーをやっている人たちがいたら必ず混ぜてもらうようにしてたんです。

全員知らない人だけどね(笑)。

いしかわ:
それはたしかにアグレッシ…いや「アグり」が高い…!

どうやってパレスチナのアラファト議長の前で歌ったの…?

いしかわ:
では、「アラファト議長の前で『上を向いて歩こう』を歌った」という噂も本当なんでしょうか…?

ナオトさん:
ですね!

当時、パレスチナとイスラエルは紛争の真っ最中だったんですけど、自分にできることは「歌」しかないと思い、それをどこで歌えば届くかを考えたとき、「パレスチナ解放運動の指導者、アラファト議長に聴いてもらえばいいんだ!」と思って、議長府に飛び込みました

いしかわ:
また飛び込んだんですか!?

というか、どうやってそんなところに飛び込んだんですか…?

ナオトさん:
ジャーナリストに扮して。



ナオトさん:
そこで重要な役職らしき人に「歌いにきたんだけど」と言ったら、歌わせてもらえることになって。

アラファト議長は『上を向いて歩こう』にすごい感銘を受けて、食事会に招いてくれたんです。仲が深まって議長府に2泊3日することになりました。

いしかわ:
すごすぎる…

ナオトさん:
その後、国営放送でインタビューを受けて歌ったんですけど、なんとそれがパレスチナ中に流れていたらしくて。

いち若造の「平和への思い」を直接語ることができました。本当に奇跡のような出来事だったと思います。


ホント奇跡

コロンビアのレストランで即興で歌ったら…

いしかわ:
「コロンビアで、有名アーティストに気に入られ国内ツアーに同行」…ということもあったんですか?

これって夢だったワールドツアーにかなり近づいてるじゃないですか!

ナオトさん:
これもありましたね!

海外ではよく、Liveレストランやフェスに飛び入りで参加してたんですけど、その日もお客さんとして行ったらマイクを渡されたので、20分即興で歌ったんです。

そしたら、スカウトされて週3で歌うことになって、結局3日間の滞在のつもりが2カ月いました。ある日楽屋にいたら、コロンビアを代表するシンガー、アンドレス・セペーダに「うちのイベントに出ないか?」と声をかけられたんです。



ナオトさん:
そこから、ツアーで3〜4カ所を一緒にまわりました。すると、「アンドレス・セペーダにくっついてる面白い日本人がいるぞ」と噂になって、取材やラジオ出演をしてるうちに、CDデビューの話が来たんです

いしかわ:
すごい…!

ナオトさん:
でも、仮にコロンビアでデビューしたらしばらくはコロンビアに滞在しなくちゃいけなくないじゃないですか

それに結局、ワールドツアーをするにしても、まずは日本で結果を残したかった。だからとりあえず帰国しました。

いしかわ:
(全然執着しないんだな…)

チャンスをつかむコツは…

いしかわ:
すごいエピソードが数々出てきましたが…

ナオトさんはなぜ、そんなに大きなチャンスをつかめるんでしょう?

ナオトさん:
ひとつ言えるとすれば、それは、あらゆるチャンスに対して「I’m ready」でいることだと思います。


I'm ready

ナオトさん:
チャンスって何回あるかはわからないけど、そう何度もあるわけじゃないですよね。その貴重なチャンスに対し、自分がどれだけ準備ができているのかをずっと考えてきました。

たとえば、道端で、電車で、あるいは会社の飲み会で…自分のやりたいことのキーマンになるかもしれなかった人がいるはずなんですよ。

それに対して自分が「ready」じゃないと、何もできずに知らぬ間にチャンスを逃しているかもしれませんよね。

いしかわ:
たしかに…

先ほど「マイクを渡されて20分即興で歌った」と話されていましたが、「ready」じゃないと絶対できないですよね。

ナオトさん:
そう。「自分はこんなことができる」「こんなことがしたい」という旗をずっと掲げておくことが大事なんですよ。

僕は、歌えと言われたらすぐに歌えるし、夢も語れるし、今も最新のCDを常にバッグのなかに入れています

いしかわ:
常に持ち歩いてるんですか!

ナオトさん:
ポイントは、いつ来るかもわからないチャンスに対して、努力しつづけ、準備することがでるかどうか。

たとえば、受験だったら試験の日に向かって努力すればいいからわかりやすいですが、人生のチャンスはそうじゃない

チャンスは1時間後に来るかもしれないし、10年後に来るかもしれない。「絶対逃すまい!」というハングリー精神を持って待っていれば、必ずそれをつかむことができるんです。

「人はお膳立てしてもらうと必死になれない」

いしかわ:
今回の世界デビューは、世界一周してた当時のコネクションから実現したんでしょうか…?

ナオトさん:
いや、実はコネクションは使っていないんですよ。

2016年に活動休止をして、ゼロの状態でギター1本持って、LAの空港に降り立ちました。「待ってろ世界!」って。


かっこいい

ナオトさん:
そこからいろんな人に会って、歌って、曲を作って、配って、営業して、また紹介してもらって…というのを2年半、ひたすら繰り返しました。

いしかわ:
かなり泥臭く活動したんですね。…でも、日本での知名度とかを使って、もっと簡単に世界デビューすることもできたんじゃないですか?

ナオトさん:
僕は、海外でデビューするなら、日本のキャリアを一切持ち込んではいけないと思っていました。

なぜなら、人はお膳立てしてもらうと「必死」になれないからです。

自分の夢に向かって引っ張ってくれる人って、誰もいないんですよ。自分が必死になるしかない。

ナオトさん:
「世界に出たい!」と僕が言うと、「ナオトならできるよ!」「いつか叶うよ!」と言う人はいるけど、それを鵜呑みにして「いつかできるんだ!」なんて思っていても誰も世界に連れていってはくれない。

自分の夢を叶えたいのなら、死ぬ気で命をかけて動かなきゃ

いしかわ:
これが「アグり」だ…!

ナオトさん:
動かなかったらずっと景色はそのままだけど、自分が動けば景色が変わります。

僕は大学生のころから2回デビューしても芽が出ず、30歳にしてやっと3回目のデビューをしたので、まだまだ夢を叶えている途中なんですよね。

久しぶりに会う友人に「最近どう?」と聞かれたら、「いや〜、相変わらずだよ」ではなく、いつでもホットなニュースを伝えられるようにずっと動いていたいな、と思ってます!


ありがとうございました!

今回の世界デビューの件を含め、ナオトさんは幸運に恵まれた人、と思っていましたが、彼が語る「チャンスのつかみ方」にハッとさせられました。

彼が誇る数々の“伝説”は、ラッキーだったからではなく、自分で必死に努力し、動いたからつかみとれたもの。

仕事をしていて「誰かがいい話持ってこないかなぁ」「ミラクルが起こらないかなぁ」なんて思うこともありますが、そんなときは、はたして今の自分はチャンスをつかむ「ready」ができているのか、改めて考えようと思いました。

〈取材・文=いしかわゆき(@milkprincess17)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=森カズシゲ〉

お知らせ



8月14日にナオトさんの新曲「まんげつの夜」が発売!

45億年前、地球に隕石がぶつかり、地球の一部が月になっていったという一説から、「月と地球」の関係を「身体の一部」のような恋人や家族との関係になぞらえて描いたというこの曲。

大切な人は近いがゆえに、冷たくあしらってしまったり、思いを伝えきれなかったりすることもありますが、1カ月に1度訪れる、「満月の夜」が、そんな人を思い浮かべるきっかけになれば、というナオトさんの思いが込められています。

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