家賃収入では返済できず?「アパート経営」のリスクを解説
「一般の方がアパート建設に踏み出すのは、相続税の節税が目的です。相続税は’15年の改正で、課税対象が広がりました。相続税を払わねばならない人が増え、節税ニーズも高まっています」
そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。今、特に地方で増えている賃貸アパートの建設。貸家の建設数は5年連続の増加で、’16年は8年ぶりに40万戸を超えた(国土交通省)。アパート建設の増加は、従来の業者ではない一般の人の参入が一因と考えられるという。銀行でお金を借りることで資産額が相殺され、相続税対策になるといわれるが、そんなにうまくいくものなのか?荻原さんが解説してくれた。
年初からの金融庁の調査で、一部の地方銀行が、顧客を建設業者に紹介している実態が明らかになった。契約が結ばれると、銀行は建設請負金額の0.5〜3%を手数料として受け取るという。
「とはいえ、アパート経営など初めてという方は不安が大きいでしょう。これに対し建設業者は、建てたアパートを一括で借り上げ、空室があっても一定の家賃を保証する『サブリース契約』を提案します。面倒な手続きや管理はすべてお任せで、家賃が保証されるなら……と心が動き、アパートローンは安定した家賃収入があれば返済できると判断する方もいるでしょう。しかし、ここに落とし穴があります。家賃保証は多くの場合、一定期間ごとに見直され、空室が多いアパートは保証額が引き下げられます。家賃収入がローン返済額を下回って、困窮する方もいます。また、リフォームなども指定業者が行うことが多く、費用が割高になる場合もあります。建設請負契約の際に、さまざまなコストについてきちんと説明していないケースも見受けられます」
だが、荻原さんは「アパート経営そのものが悪いわけではない」と語る。
「ただ業者任せにするとコストがかかり、儲けは減っていきます。決して人任せにせず、自分自身でアパートを“経営する”という覚悟が必要なのです。相続税対策は、アパート経営のほかにもさまざまな方法が考えられます。税務署や税理士などにも相談し、幅広い選択肢を集めたうえで、じっくり検討してください」