理想的な結婚を、適齢期にした沙織。

誠実で、外見も稼ぎも良い夫と安定した結婚生活を送る。

今回は、大阪に嫁いだ友人の結婚式に、朋子と出席する。そこで直面したトラブルとは...?

前回 vol.15:有名ブロガーの花嫁。自己プロデュースを最優先した式の実態とは?




東京とは一味ちがう、派手で賑やかな結婚式


「あんたは本当に小食よねぇ。コーヒーだけなんて、信じられないわ。」

大阪へ向かう新幹線の中、今半のすき焼き弁当を頬張りながら朋子が言った。私にとっては、朝8時からすき焼きを食べる女の方が信じられない。

今日は、友人の文香の結婚式だ。東京生まれ東京育ちの彼女だが、大阪で老舗の飲食店を経営する家へ嫁いだため、結婚式は大阪の某大手外資系ホテルで挙げることとなった。私たちはそれに参加するのだ。

「明日、USJに寄って帰ろうよ。私、あの逆向いて走るジェットコースターが好きなのよ。」

この暑い中、朋子と二人で遊園地など冗談でない。絶対に行かない。しかし朝から朋子に抗議する気も起きず、私は朋子を無視してコーヒーを啜ったが、すき焼き弁当の匂いには胸焼けがした。



ホテルの待合場所は、人で溢れ賑やかだった。

「文香の旦那のレストランは、関西だとそれなりの店舗数があって有名なのよ。きっとかなりお金持ちよ。」

朋子の言う通り、大阪の商売人という新郎一家の迫力は見物だった。

何よりも、新郎の母親の留袖は見たことのない豪華さで、手元の指輪や時計などのアクセサリーは圧倒されるほど光り輝いている。少々キツい顔立ちには派手なヘアメイクが施されており、日頃から手入れを欠かさないであろうことが一目で見て取れた。

父親も大柄な海坊主を思わせる威厳のある男で、袴姿が板につき過ぎている。その他親族も、派手な着物に変わり種のバーキンを合わせていたりと、関西の金持ちは派手で面白い。

関西の結婚式は初めてだったが、東京の厳かではあるがシンと静まり返った空気感とは違い、私にとっては新鮮だった。


関西風の、とにかく明るく派手な結婚式とは...?


関西風?始終笑いに包まれた明るい披露宴


チャペルに入場した新郎は、期待を裏切らないコテコテの関西人の風貌をしていた。オールバックを整髪料でビッシリと固めた髪形に、母親似のつり目のキツイ顔。

「ナニワ金融道に出て来そうな男ね。」

朋子が真面目な声で囁いたので、つい吹き出してしまった。

続いて入場した文香も、派手なデザインのドレスを着ていた。少々奇抜とも言えるあのデザインは、きっとユミカツラのものだろうと予想した。しかし、美人でスタイルも良い文香にはとても似合っている。




披露宴も、引き続き盛大なものだった。ゲストの円卓も高砂も豪華な百合の花で飾られているし、料理も高級食材が使われたグレードの高いものだ。

余興時にカラオケマシーンが出てきて、新郎の親戚の男性が3人で合唱し始めたのには少々驚いたが、ゲスト達は大いに盛り上がった。皆、勢いよく酒を飲むからか、関西風なのか、会場は始終笑いに包まれた賑やかなもので面白かった。

そして文香はお色直しで、またしても真っ赤な奇抜なドレスと、最後は金色の色打掛で登場した。

「ちょっと見て、あの色打掛、七色のツルが飛んでるわよ...!」

文香の色打掛には目を丸くした。金箔で輝く色打掛はかなり迫力があったうえ、虹色の、恐らくツルのような鳥の模様が描かれているのだ。相当な値段がすると思われるが、予想はつかない。

「やっぱり関西は派手なのねぇ...。」

私が感心していると、「この家は特別よ」と、朋子は口を尖らせた。



二次会の受付役。長い一日に疲労は募るが...?


そして披露宴後、私たちは、近くのレストランで開催される二次会の受付も頼まれていた。

ここには200人以上のゲストが招待されており、披露宴以上の盛り上がりを見せた。私たちは早起きだったこともあり、受付がある程度済んだ頃にはグッタリと疲れていた。

大阪は、やはり東京よりもずっとパワフルだ。

「遠くからわざわざ来てもらったのに、色々頼んじゃってごめんね。でも受付は美人二人に頼みたかったのよ!」

そう明るく言い放つ文香は、すっかり大阪の生活に慣れたようで、二次会用のミニのウェディングドレスを着て自慢の美脚を披露していた。

文香はとても幸せそうで、溌剌とした彼女には大阪が似合っていた。少々疲労は溜まったが、おめでたい門出の手伝いができて良かったと思っていた。


帰宅後、突然朋子がキレた理由は...?!


大阪まで足を運び、受付まで頼まれ、「お車代」は5千円...?


朋子が突然キレたのは、二次会が終わりホテルの部屋に戻ってからだった。

「ちょっと......。二次会の受付まで頼まれて、何でお車代が5千円なの?これ、何かの間違いよね?」

引出物の袋に入っていた「お車代」と書かれた封筒を開け、朋子が叫んだ。ちなみに文香からは「お車代を出すから是非二次会の受付までお願いしたい」と言われていた。

確かに、5千円は少ない。私もすぐに封筒を確認すると、なんと私の方には1万円札が入っていた。朋子は明らかに機嫌が悪くなり、無言でスマホをいじり始めた。

「ちょっと、何してるの?」

「文香本人に聞くのよ、お車代、間違えてるわよって。」

私は背筋が寒くなり、急いで朋子を止めた。

「今日は結婚式当日なんだから、少し落ち着きなさいよ。何なら、私の1万円と合わせて7500円ずつ分けたらいいじゃない。」

そういう問題ではないと、朋子はひとしきり暴れた。

次の日もUSJどころではなく、私たちはやはりお車代が気にかかっていた。

東京からはるばる大阪へやってきて、だいたい新幹線代は3万円、宿泊費で2万円、ご祝儀で3万円、二次会会費1万円と、その他雑費を合わせれば、約10万円の出費だ。

金が惜しいわけではない。しかし、受付まで頼まれたのだから、常識的に考えて5千円のお車代はあり得ないだろう。

だが、花嫁の文香本人にそんなこと言えるわけもない。結局、私たちは後味の悪いまま大阪を後にした。


では、通常のお車代の相場とは...?


「ねぇ、沙織。ちょっと聞きにくいんだけど、文香の結婚式で、お車代もらった...?」

後日、同じように文香の結婚式に出席した違う友人から連絡があった。なんと彼女は、お車代が出なかったらしいのだ。

「私、我慢できなくて文香に連絡しちゃったんだけど、私は大阪出身だし、二次会欠席したからってお車代は出さなかったらしいの...。それって普通なのかしら?」

ちなみに彼女は、大学から東京に上京している。朋子のお車代が5千円であったのも、神戸出身という理由なのだろうか。

しかしやはり、お車代に対しての抗議など出来ないという結論に至った。私たちは、まぁ仕方がないと、事は荒立てなかった。



ちなみに、通常お車代とは、交通費の全額を招待者が負担するのが一般的なマナーらしい。東京から大阪までなら、3万円が妥当な金額だ。もしくは宿泊が必要な場合は、ホテルを手配するという選択もアリだ。交通費と宿泊費、どちらも手配する招待者もいるらしい。

「あんな高そうな金ピカの色打掛を着るくらいなら、お車代に回すべきよ。」

朋子が目くじらを立てて言ったが、恐らく常識的にはその通りだ。遠方からゲストを呼ぶなら、お車代は一番削ってはいけない出費であろう。

一生に一度とせっかく大金を叩き結婚式を挙げるのに、ゲストから「お車代をケチる夫婦」なんて印象を持たれたら、元も子もない。そこをケチるくらいなら、ドレスでも装花でも、削るべき出費はいくらでもあったはずだ。

しかし、あの豪華な結婚式具合を見る限り、少なくとも金に困っていたわけではあるまい。きっと十分なお車代を渡す意志がなかっただけであろうとは思う。

本当に、結婚式とは人柄が出る。

面倒ではあるが、やはり結婚式では、何よりゲストへの心遣いが重視されるものなのだと、改めて実感した。

【今日の推定結婚式明細】(最高5つ星)
総額:¥7,010,000

ドレス:¥950,000 (★★★)
飲食代単価:¥3,000,000=単価¥25,000×120人 (★★★★)
ウェディングケーキ:¥180,000 (★★★★)
装花:¥600,000 (★★★★)
引出物:¥600,000=¥5,000×120人 (★★★★)
司会:¥100,000 (★★★★)
会場(挙式料、室料、会場装飾・演出、音響照明、ペーパーアイテム、介添え料、お色直し美容費、メイク・ヘアリハーサル含む):¥1,580,000 (★★★★)
余興:(★★★)
センス:(★★★)

【指輪】
婚約指輪:¥1,200,000(★★★★)
結婚指輪:¥500,000(★★★★★)