「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「丑(ウシ)」、音読みは「チュウ」。七月三十日は、土用の丑の日。精のつく料理を食べて、猛暑をのりきる夏の盛りです。今回は「丑」に込められた物語を紹介します。



「丑」という字が示しているのは、手の指先に力を入れて曲げ、ものを固く握る形。

「ひねる」という意味も表しています。

力を入れてものをくくり、固く束ねる際に用いるのが「紐」。

この字は糸へんに「丑」と書きます。

「丑」という字の身近な使い方といえば、暦や方位、時刻など。

十二支の二番目・丑年の「丑」、方位は北北東。

丑の刻といえば午前一時から三時頃のことを示します。

「土用の丑」という文字が運んでくる、鰻のかば焼きの香ばしい香り。

江戸っ子が愛した夏の味は、今もなお、人々を誘惑し続けます。

土用の丑に鰻を食べるようになったのは、江戸中期以降のこと。

平賀源内の広告説や文人・大田南畝の発案説などが有名な起源ですが、実のところ、それを裏付ける文献や記録は残されていないとか。

それでも、縄文時代の貝塚から鰻の骨が発掘されていますし、万葉集には大伴家持が、「夏痩せによしというもの」として鰻を歌に詠んでいます。

どうやらいにしえの人たちは、鰻が滋養になることを経験的にわかっていたようです。

ではここで、もう一度「丑」という字を感じてみてください。

立春、立夏、立秋、立冬。これらの直前の十八日間のことをさす「土用」。

季節と季節のつなぎ目となるこの時期は、乱れがちな心身の調子に、よりいっそうの気遣いが必要です。

「土潤いて溽(む)し暑し」は、一年で最も暑いこの時期の七十二候。

まとわりつくような湿度の高さで、体力も落ちてしまいます。

それを防ぐために、夏の土用の「丑」の日は、「う」のつくものを食べるとよいとされてきました。

「うなぎ」や「うし」を奮発するか、「うめ」や「うり」をさっぱり楽しむか。

乱獲や気候変動の影響で、鰻は数年前から不漁が続いているといいます。

日本の夏の風物詩を絶やさないために、今、何ができるのか。

今年の土用・丑の日は、自分自身と地球の健康に、思いをはせてみましょうか。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『ウナギの博物誌 謎多き生物の生態から文化まで』(黒木真理/編著 化学同人)

『ウナギと日本人 “白いダイヤ”のむかしと今』(筒井功/著 河出書房新社)

7月30日の放送では「競」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

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<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/