NHKだけ見えないテレビが開発 それでも「受信料払う義務あり」らしい
NHKの放送だけテレビに映らなくする「装置」が2014年7月から発売されている。15年4月26日、27日に幕張メッセで開催されるニコニコ動画のイベントで、その「進化型」が発表される予定だ。
「装置」はアンテナとテレビの間に付ける「関東広域圏向け地上波カットフィルタ―」といい、筑波大学の研究チームが開発した。このフィルターを使うことによって受信料の支払いを拒否できるようにするのが狙いだが、本当に可能なのか。
NHK訪問員が徴収せず「納得して」帰った例も
フィルターを考案したのは筑波大システム情報工学研究科の学生で、同研究室の掛谷英紀准教授が指導した。学生は14年3月に卒業し、ベンチャー企業を起こして同年7月に販売を開始した。設置した人の中には、NHKの訪問員に受信できないことを確認してもらい、納得させた例もあるという。今回の「ニコニコ動画超会議2015」でその進化形を発表する予定だ。
掛谷准教授によると、フィルター考案のきっかけは、2013年3月8日の国会で中山成彬議員が質問に立った場面の動画をNHKが「ユーチューブ」から削除した事。従軍慰安婦問題について辻元清美議員と中山成彬議員が正反対の立場から質問したが、辻元議員の動画は残っていた。そのため、公共放送としてのNHKに疑問を持ち、見るか見ないかの選択の自由があるべきであり、見たくない人が受信料を払わなくてもいい方法を探った。NHK総合の27chとEテレの26chの周波数の信号にフィルターを掛けることによってモニターに映らないようにすることに成功した。
「公共性が担保されない以上、国民にNHKと契約しない自由は保障されてしかるべきです」
掛谷准教授はこういう。また、受信料不払い問題に関わっている弁護団に「受信料の支払い」問題を委ね、「技術的な事はいくらでも協力する」という姿勢でNHKと契約しない自由に向けて動いていくと話している。
「払わなくていいとの解釈は難しい」と弁護士
さて、こうした装置を使えば、受信料を払う必要が無くなるのだろうか。NHK広報に問い合わせたところ、
「慎重な回答が求められる一件です」
ということで返答にはしばらく時間がかかるとのことだった。
放送法やNHK問題に詳しい松浦亮介弁護士に話を聞いてみた。現在発売されている「関東広域圏向け地上波カットフィルタ―」を見る限りでは、
「受信料を支払わなくていいという解釈はなかなか難しいでしょう」
と分析した。NHKを受信できる装置を設置した場合に受信料を支払うことになっていて、テレビ自体はもともとNHKが受信できる上、フィルターも着脱可能なため、いつでもNHKを見ることができる状態にある、という理由からだ。
また、フィルターを付けていない人でもNHKを見ない人もいる。受信料は公共放送のコストを皆で負担しようという趣旨で徴収していることもあり、フィルターを掛けている人たちも受信料を払うのが自然な解釈なのではないか、と松浦弁護士は話している。
NHKは「受信契約が必要」との見解明らかに
NHKは2015年4月14日夕、NHKの電波だけカットするフィルターの存在についてJ-CASTに対し以下のように回答した。
――放送法は、「NHKの放送を受信できる受信機を設置した者は、NHKと受信契約を結ばなければならない」と定めていますが、この規定は、公共放送としてのNHKの運営を支える財源は、テレビを設置しているすべての方に負担していただく受信料によるところが、最も適切であるとの考え方に基づくものです。そして、受信料はすべての視聴者の方に公平に負担していただくものであることは、言うまでもありません。
NHKの放送が映らないように改造等したテレビについては、放送法を所管する官庁(総務省)が、過去(旧郵政省当時)に「復元可能な程度にNHKの放送を受信できないよう改造された受信機については、受信契約の対象とする」との考え方を示しています。アンテナが外される等により一時的にNHKの放送が映らない受信機についても、アンテナを接続すれば視聴可能になることから、受信契約が必要です。
したがって、NHKとしては、「NHKの電波だけカットするフィルター」を取り付けた受信機についても、受信契約が必要になると考えています。受信料の公平負担に、ぜひ、ご理解をお願いします。