独自のデザインや機能で、かつて一世を風靡したパソコンブランド「VAIO(バイオ)」。

そのバイオが、ソニーに切り捨てられ、新会社となってから初のオリジナル商品を発売! そこで、気になる評判を専門家の皆さんに聞いた。

間もなく発売予定のスマホとともに、VAIOブランドの再ブレイクは近い?

■手間と人をかけた高スペックマシン

昨年、ソニーから切り離されたパソコン(PC)事業の人材や施設を引き継いだ新会社「VAIO」(長野県安[あづみの]曇野市)が、初の自社開発モデル「VAIO Z」(以下、Z)を2月16日に発売した。

13・3型液晶を搭載し、タブレットとしても使える「2in1スタイル」のモバイルノート。設計から製造まですべてを日本で行なう純国産マシンで、ユーザー自身がスペックを選んでカスタマイズする。ソニー時代の最高級モデル名「Z」を冠していることからわかる通り、最少構成でも市場想定価格19万円からと、なかなかのお値段だ。販売はウェブを中心にソニーストアや一部家電量販店など実店舗でも行なう。

新生VAIOの自信作だという、そのZの出来栄えをIT関連の著述も多いビジネス書作家の戸田覚(さとる)氏に評価していただこう。戸田氏はデジタルグッズに精通し、Zの実機もテスト使用済みだ。

「高性能CPUを積んでいるので、処理スピードはモバイルノートの中でも群を抜いています。にもかかわらず、同程度の重さの他社機に比べてバッテリー駆動時間が長く、液晶も最高クラス。ディスプレーが反転してタブレットになる機構も、とても使いやすくできています」

また、小回りの利く国内メーカーが国内で生産しているだけに作り込みや信頼性でも抜かりがない。

「パーツとパーツを隙間なく完璧に合わせるために様々な工夫を凝らしていたり、徹底した検品を行なったりと、ぱっと見ではわからないところにまで手間と人をかけています」(前出・戸田氏)

ただ、他社にないちょっとひねった機能だったり、人目を引くユニークなデザインといった、かつてのVAIOらしさに欠けてはいないだろうか? デジタル&家電ライターのコヤマタカヒロ氏が語る。

「“らしさ”をどう定義するかですよね。一風変わったモデルというのは、実はVAIOのラインアップ全体のごく一部にすぎませんでした。しかも、ソニー時代からZは仕事向け高スペックマシンの代名詞。だから、今度のZも十分にVAIOらしいといえると思います」

では、どういったユーザーがターゲットなのだろう?

「決して、万人向けのモデルではありません。PCへの投資を惜しまず、それに見合うだけのパフォーマンスを求め、長くガンガン使いたいというハイエンドユーザー向けですね」(コヤマ氏)

とすると、パナソニックの「Lets note」あたりがライバルになりそう?

「ハイエンドユーザーの層は、一般企業の営業現場などで使うビジネス系と、動画の編集やウェブ制作などに用いるクリエーティブ系の2種類に分かれています。ビジネス系のユーザーは処理速度より、壊れにくいとか、有線LAN端子がついているといったことを重視し、その条件を満たしてくれるLets noteを長年愛用している人が多いんです。ここを切り崩していくのは相当に難しいですね」(戸田氏)

つまり、Zが狙っているのはクリエーティブ系。

「こちらの層には、ZのようなPCの登場を待ち望んでいた人が一定数いるし、マシンのキャラクター的にも彼らの琴線に響くものに仕上がっています」(戸田氏)

だが、クリエーティブ系のユーザーが購入を検討するPCとしては、すでに強力な先客がいる。

「製品特性を考えれば、Zのライバルはアップルの『Mac Book Pro』(以下、Pro)なんですよ。そのProにはブランド力があり固定ファンもついています」(コヤマ氏)

そんな難敵が立ちはだかるなか、果たしてZは好セールスを記録できるのか?

「VAIOが想定するユーザーの間では確実にある程度の数が売れるでしょうし、Pro派をも切り崩せるだけの製品力があると思います。しかし、そもそもクリエーティブ系ハイエンドユーザー層のマーケット自体は小さいので、大ヒットというレベルにはならないのでは」(戸田氏)

また、現時点では実店舗での販売チャンネルが少ないのも懸念材料だ。

「Zはビギナーが店頭で見かけて衝動買いするような製品ではないので、ネット販売主体であること自体は問題ありません。ただ、ヘビーユーザーがZの実機と触れ合えるショールームという意味で取扱店が少ないことはネックになりそうです」(コヤマ氏)

■今後のVAIOはどんなブランドに?

Zが限られた層にしか売れそうにないのなら期待できる利益は高が知れている。いくらソニー時代より事業がスリム化したとはいえ、それだけではVAIOという新会社を維持していけない。

「だから、Zに続く二の矢として、数を売れるモデルの投入が急務なのです。それはPCである必要はなく、タブレットでもスマホでもなんでもいいのですが」(戸田氏)

スマホといえば、VAIOはMVNO(仮想移動体通信事業者)の日本通信と組み、スマホ市場に参入することをすでに発表している。その新型機はどんなものになりそうなのだろう?

「これまでにスマホを生産してきていないので、自社製の可能性は低いでしょう。そう考えると、デザインにしても性能にしても、あまりとがった製品は期待できないのではないでしょうか」(戸田氏)

PCは純国産のハイエンド志向でありながらスマホは海外から調達するであろう無個性な低、中価格帯品。一貫性のなさも感じるが、今後のVAIOはどんなブランドになろうとしているのか?

「その意味で注目なのが、スマホの次に発表される製品。経営戦略的に収益の柱になってくれそうな売れ筋を投入するのでしょうが、単なる価格勝負を挑んだのでは当然、グローバルメーカーに太刀打ちできません。競合他社との差別化を図りながら、幅広い人々の心をとらえる意欲作を出せるか否かがVAIOという会社の運命と方向性を決めるでしょうね」(コヤマ氏)

■週刊プレイボーイ11号(3月2日発売)「純国産&高性能で新生『VAIO』の逆襲なるか!?」より