10歳の男の子。何年か前から頭痛に悩み、ひどい場合には痙攣(けいれん)を起こす。(イメージ写真提供:123RF)

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 10歳の男の子。何年か前から頭痛に悩み、ひどい場合には痙攣(けいれん)を起こす。広東薬学院附属第一医院(病院)で診察を受けたところ、脳内に長さ10センチメートルほどの寄生虫がいることが分かった。別の10歳の男の子の脳内からも、同じ種類の寄生虫が見つかった。いずれも、しっかりと火通しをしていないカエルの肉を食べて感染したとみられている。広州日報が伝えた。

 10歳の男の子2人の脳で見つかったのは、「芽殖孤虫」という寄生虫だった。本来はヒトを終宿主とはしておらず、人体内では成虫になれないため、幼虫のまま体内のあちこちを移動して、「幼虫移行症」と呼ばれる深刻な症状を起こす。

 「幼虫移行症」には、幼虫が眼球に侵入する「目幼虫移行症」、内蔵に侵入する「内蔵移行症」、皮膚下に侵入する「皮膚幼虫移行症」、などがあるが、芽殖孤虫の場合、脳に移動する場合がある。その他の内臓に移動する場合もある。

 結果として臓器や脳が破壊され、喀血、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、胸痛、頭痛、脳障害などのさまざまな症状を起こす。

 芽殖孤虫は、成虫がいまだに発見されていない。最終宿主や中間宿主も分かっていないなど、謎の多い寄生虫だ。

 脳内に芽殖孤虫がいた男の子2人はいずれも過去に、火のよく通っていないカエル肉を食べたとみられている。専門家によると、蛇肉から感染する可能性もあるという。

 芽殖孤虫と近縁で、同じくカエルや蛇に寄生している場合があるマンソン裂頭条虫の場合には、不潔な生水と共にケンミジンコを飲み込んで感染するリスクもあると考えられている。

 芽殖孤虫寄生に伴う症状は、手術で摘出する以外の治療法がない。ただし、芽殖孤虫は幼虫が分裂するために、完治は極めて困難とされる。広州日報によると、2例目の男の子の居住地は広西チワン族自治区で、11月28日に手術を受け、脳内にいた長さ10センチメートル、幅2センチメートルほどの芽殖孤虫を摘出した。

 今のところ、正常に歩けるようになるなど、問題は出ていないという。

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◆解説◆
 日本の場合、刺身などから寄生虫症を起こす場合がある。代表例のひとつがサバ、サケ、ニシンに寄生するアニサキスで、ヒトの体の中では成虫になれないので多くの場合には排出されてしまうが、まれに胃や腸壁に侵入し、激しい腹痛、嘔吐(おうと)、蕁麻疹(じんましん)などの症状を起こす。

 アニサキス症を予防するのは加熱が最も効果的だが、摂氏零下20度で48時間以上冷凍すると死滅するとされる。

 アイヌ料理のルイベは、サケを冷凍保存してから溶かして食べるので、アニサキス症のリスクを減らすのに効果のある食べ方とされる。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)