石川県知事・山野之義氏の陣営に公選法違反疑惑が浮上している(HP/YouTubeより)

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 今年2月の衆院選では、自民党がYouTubeの公式チャンネルに掲載した高市早苗首相のメッセージ動画が、公開からわずか10日足らずで1億回再生され、注目を集めた。人気の音楽ユニットYOASOBIのヒット曲「アイドル」でも1億回再生までに35日間あったことから"YOASOBI超え"とも言われ、「相当な額の広告費がかかっているのではないか」と推察する声も多かった。

【写真を見る】今年1月に投稿され、現在は削除されている「疑惑動画」。公選法が禁じる有料ネット広告および事前運動に該当するとしている

 公職選挙法は特定の候補者の当選を目的に投票を呼びかける「選挙運動」のためのネット有料広告を禁じている。そうした中でこの高市動画は特定の候補者への投票を呼びかけたものではなく、広告費が支払われていたとしても公選法には抵触しないとされる。

 しかし──。

 高市動画に注目が集まったおよそ1か月後、3月の石川県知事選をめぐって公開された動画に"疑惑の目"が向けられている。その動画は、チャンネル登録者数が5人ながら、公開から5日間でなんと46万回以上再生されたのだという。

 大手紙政治部記者はこう話す。

「知事選は高市政権が衆院選に大勝した後の初の大型地方選挙で、高市氏本人が応援に入るなど、注目を集めました。選挙の構図は、当時現職だった馳浩氏に前金沢市長の山野之義氏が挑む保守分裂選挙で、激戦の結果わずか6110票差で山野氏が制しました。

 そして選挙前後に山野陣営が公開したのが、複数の"疑惑の動画"でした」

公示前動画のツッコミどころ

 動画の問題点を指摘しているのは、金沢市議会議員の新谷ひろのり氏が4月22日付で石川県警本部長宛に提出、受理された告発状だ。それによると、山野陣営が告示前である今年1月にFacebookやInstagramで公開した複数の動画が、公選法が禁じる事前運動と有料ネット広告に該当すると主張している。

 例えば、1月13日の「石川県知事選出馬表明 山野ゆきよし 奥能登知事室を設置する〜現場の声を聞く〜」と題された動画の中で山野氏は、「県政のリーダーになったら」と知事になることを前提に、「奥能登知事室」または「能登知事室」の設置などを掲げ、「具体的な政策にしていこう」と強調している。また、この動画は有料広告だった。

 動画は選挙名と予定候補者名を明示しており、告発状は〈動画を見た者に対して、知事選で自身への投票を促す、もしくは有利にするものであることは明らか〉〈(告示前の)選挙運動に当たる〉と指摘している。

 また、4月に金沢地検に提出された別の告発状は、山野氏の確認団体(選挙期間中に特定の政治活動が認められる団体)である「まっすぐ県民目線の会」が、選挙期間中にYouTubeに投稿した動画も公選法違反(有料ネット広告)に当たると指摘する。

登録者数5人で〈(最終的に)57万回再生された事実〉

「まっすぐ県民目線の会」は選挙期間中の3月2日、YouTubeに「前金沢市長の石川県知事候補の政策」と題する動画をアップ。「前金沢市長の石川県知事候補は日本一身近な知事になります!」という文章を表示しながら、山野氏の演説を流していたという。

 この動画はすでに削除されているが、3月7日時点で、チャンネル登録者数5人でありながら46万回以上、再生されていたようだ。

 告発状はこの動画についても、〈選挙を特定し、山野氏のためになされていることが明らか〉と指摘。〈政策を訴えかけるにとどまらず、当選を目的に、有権者に対して投票を得るために有利な働きかけをしている〉との見解を示した。

 また、登録数がわずか5人でありながら〈(最終的に)57万回再生された事実〉を取り上げ、〈本件動画は有料広告として展開されたと考えるのが自然〉〈選挙運動のために、候補者の氏名が類推される広告を有料でインターネットに頒布した〉と指摘している。

 公選法に詳しい弁護士の竹内彰志氏(早稲田リーガルコモンズ法律事務所)はこう解説する。

「告発状によると、選挙告示前の動画は、候補予定者名の掲載がなされ、石川県知事選と特定した動画であり、政治活動の範疇を超えて選挙の事前運動性を帯びてしまっている。これを有料広告で行うのは適切でない。

 また告示後の動画にしても、直接候補者名の記載がないものの、『前金沢市長』などと候補者本人を類推させる動画となっており、法が禁止する有料広告の対象に入る可能性が高い。

 広告が増えて選挙費用が青天井にかかることを防ぐための法規制がこのように潜脱される事態に対して、当事者、とりわけ公職者は、自ら説明を果たすべきだ」

 NEWSポストセブン取材班は石川県庁の秘書課を通じて、山野氏にこれらの動画公開の適法性についての認識や動画削除の事実関係、動画の制作経緯などについて書面で質問したが、期限までに回答はなかった。

 ネットやSNSは今日の選挙戦では欠かすことのないツールとなっている。であるが故に、山野氏は説明責任を果たす必要があるだろう。