『モー娘』『SPEED』のココがすごい! 専門家が徹底討論「’90 年代アイドルソング」を語ろう
アイドル″グループ″という概念
松田聖子(64)や中森明菜(60)などキラ星の如く国民的アイドルが登場した’80年代に対し、’90年代は「アイドル冬の時代」と呼ばれた。『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)や『ザ・ベストテン』(TBS系)といった人気音楽番組が次々と終了し、アイドルたちの活躍の場が奪われてしまったのだ。だが、そんな時代にも、老若男女を魅了するスーパースターは誕生。’80年代をしのぐミリオンセラーを連発している。
今回、FRIDAYはアイドル評論家の中森明夫氏と高倉文紀氏、アイドルソングに造詣の深いフリーアナウンサーの吉田尚記氏を招き、「’90年代アイドルソング」をテーマにした座談会を実施。激論の末に、珠玉の名曲ベスト10を選出してもらった。
中森 まずは、’90年代アイドルの全体像をおさらいしておきましょう。’90年代の初頭にはまだ、’80年代の″残り香″があった。’85年にデビューした『おニャン子クラブ』のようなアイドルグループがまだ残っていたんです。
高倉 ’89年にデビューした『ribbon』や『CoCo』、’90年デビューの『東京パフォーマンスドール』が活躍しましたね。
中森 ’90年代の初頭を象徴するのが、まさにその『東京パフォーマンスドール』です。後に女優・歌手として飛躍する篠原涼子(52)もこのグループ出身。口パクなし、筋トレ必須の体育会系で、彼女たちの登場によって、今も続く「歌って踊れる女性アイドルグループ」というスタイルが確立されました。
吉田 ’93年リリースの『キスは少年を浪費する』が代表曲ですね。作詞が売野雅勇、作曲が小室哲哉という豪華な組み合わせ。
高倉 「キスはキスは」から始まるキャッチーなサビが印象的でしたね。
中森 『CATCH!!』や『ダイヤモンドは傷つかない』などほかにも曲をリリースしていますが、セールスや反響はイマイチ。『東京パフォーマンスドール』と言えば、『キスは少年を浪費する』が一番でしょう。
高倉 ’90年代を象徴するアイドルグループとなると、私は『モーニング娘。』を推したい。’99年にリリースされた『LOVEマシーン』はミリオンセラーを記録し、社会現象になりました。
中森 プロデューサーのつんく♂さん(57)に直接聞いた話ですが、デビュー曲の『モーニングコーヒー』をリリースした際、イベントに来たのは男性ファンばかりだった。そこで「もっと幅広い層のファンを獲得したい」と、2枚目のシングル『サマーナイトタウン』からディスコ調に曲をアレンジしたそうです。それが『LOVEマシーン』の大ヒットにつながる。男性ではなく、女性にも届く音楽を作ろうとしたのがつんく♂さんのすごいところ。
吉田 ’90年代は、今みたいに女性のアイドルファンは多くなかったですからね。とはいえ、女性ウケを意識しすぎると、男性ファンが離れてしまう。この難しい塩梅(あんばい)を見事に見極め、男女両方を魅了したのが『LOVEマシーン』でした。
『SPEED』4人の特別な曲
高倉 もう一組、’90年代を語るうえで外せないグループが『SPEED』です。リアルタイムで彼女たちを知らない世代からすれば、アイドルと定義するのに違和感があるかもしれませんが。
中森 『SPEED』は間違いなくアイドルだったと思います。曲だけではなく、ルックスやファッションに惹かれるファンも多かったですから。僕は、アイドルというのは自ら名乗るものじゃなくて、ファンに名付けられるものだと思っている。『SPEED』をアイドルとして推しているファンが大勢いるのだから、彼女たちはアイドルなんです。
若い女性の淡い恋心を歌った『STEADY』や卒業ソングの定番である『my graduation』など、ミリオンヒットを連発しました。
高倉 代表曲は’97年にリリースされた『White Love』でしょう。『SPEED』最大のヒット(184万枚)を記録し、彼女たちはこの曲で『NHK紅白歌合戦』にも初出場を果たしましたから。グループが一度解散し、完全復活を遂げた’08年の『紅白歌合戦』でも『White Love』が披露されています。ファンだけでなく、グループにとっても特別な曲だったのでしょう。
中森 ’90年代のアイドルを語るうえで避けて通れないのが、広末涼子(45)です。ソロで活躍するアイドルが少なくなった「冬の時代」において、彼女は救世主のような存在でした。’97年の主演映画『20世紀ノスタルジア』の舞台挨拶を行ったとき、テアトル新宿に2000人のファンが殺到し、警察が出動する騒ぎになった。それほど、ヒロスエの人気は凄まじかった。
吉田 間違いなくアイドルでしたね。宮沢りえ(53)のような、女優として売れた後に楽曲を出す″女優系アイドル″とは一線を画していた。
高倉 デビュー曲の『MajiでKoiする5秒前』や『大スキ!』が代表曲ですが、私は原由子が作詞・作曲した3枚目のシングル『風のプリズム』が好きですね。爽やかな歌詞が当時のヒロスエにピッタリ。
中森 渋い! たしかに『MajiでKoiする5秒前』より、清純派だったヒロスエの世界観を体現する一曲ですね。
吉田 当時は、清純派のヒロスエと、ギャル系の安室奈美恵(48)がライバルのようになっていましたよね。私の感覚では、ヒロスエの次のアイドルが、’98年にデビューした鈴木亜美(44)ですね。
貴重なソロアイドル達
高倉 あみ〜ゴは、『モーニング娘。』や『CHEMISTRY』らを輩出したオーディション番組『ASAYAN』(テレビ東京系)からデビュー。ファーストシングルの『love the island』でいきなり30万枚近い売り上げを叩き出している。
吉田 続く『alone in my room』は35万枚、3枚目の『all night long』は39万枚と、瞬(またた)く間にスターになっていった。
中森 私は’99年に80万枚売った『BE TOGETHER』が印象に残っています。『TM NETWORK』のカバー曲で、元阪神タイガースの赤星憲広が、若手時代に登場曲に使用していました。
高倉 あみ〜ゴの曲でランキングに入れたいのは、『love the island』ですね。当時の彼女からすればギリギリ歌えるかどうかの高さでキーが設定されていますが、切なさと強がりがテーマの曲と上手くマッチしています。
あとは森高千里(57)も’90年代アイドルの一人に入れておくべきでしょう。
中森 ’87年のデビュー当初、森高のマネージャーが「彼女は″なんちゃって小泉今日子″ですから」と言っていたのをよく覚えています。要は美人でスタイルもいいけど個性がない、と見られていたのだと思いますが、とんでもなかった。今となっては唯一無二の存在です。
吉田 ’93年の『渡良瀬橋』や『風に吹かれて』などヒット曲は多くありますが、’92年リリースの『私がオバさんになっても』のインパクトは絶大です。
中森 同感ですね。売り上げ枚数でいえば『渡良瀬橋』『風に吹かれて』の2曲のほうが上ですが、森高の代名詞は『私がオバさんになっても』です。辻希美(38)や後藤真希(40)など、多くのアイドルやアーティストにもカバーされている名曲ですから。
『FRIDAY』2026年5月15・22日合併号より
