『海外売春-女たちの選択- (扶桑社新書)』週刊SPA!編集部 国際犯罪取材班 扶桑社

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 現代における社会問題のひとつとしてたびたび注目を集める、日本人女性の売春行為。特に近年では、高額報酬と引き換えに海外で性接待をおこなう、いわゆる「ドバイ案件」などがネット上で話題になっている。

 そんな海外での"出稼ぎ売春"の実態に迫ったのが、今回紹介する書籍『海外売春 ‐女たちの選択‐』(扶桑社)だ。

 本書は、雑誌『週刊SPA!』(扶桑社)の編集部による一冊。これまで海外犯罪を取材してきた記者たちが世界各地に赴き、現地で売春をおこなう女性たちへインタビューを敢行する様子が綴られている。

 書籍内で紹介されている事例の中でも、特に興味深いのが、隣国・韓国での日本人女性による売春の実態だ。

 そもそも韓国では売春は違法行為だが、なかには摘発を回避しながら売春行為を行う、いわゆる"地下風俗"なる組織が存在するという。

 そして、そうした地下風俗組織の中には、日本人女性を斡旋し、"売り"にしている店もある。そのひとつが、ソウル郊外の街・一山(イルサン)を拠点とする「ドン・キホーテ」だ。

 日本の有名ディスカウントストアを想起させる名前だけでなく、某ペンギンキャラクターを彷彿とさせる広告キャラクターまで使用したこの風俗店。店のサイトには日本人女性の画像が並び、それぞれのプロフィールや利用料金、オプションなどが掲載されている。

「そこには基本料金として40分で17万ウォン(約1万8000円)という料金が書かれていた。
それは韓国人女性の相場より、3割ほど割高な料金設定だった。
ただ、そのサイトにはどうやったら遊べるのかという説明が一切ない。住所も『一山』とは書かれているが、それ以上はどこで営業しているのかも記されていない。携帯の番号が唯一の手がかりで、『予約時に詳細を案内する』といかにも怪しげな表記だ」(本書より)

 潜入取材のため、サイトに記載の電話番号に連絡する記者。厳重な身分確認の末に予約に成功し、指定された住所へ向かう。

 到着したのは17階建ての古いビル。内部は住居兼オフィスのような構造だ。指示された部屋へ向かいインターホンを押すと、ひとりの女性が現れた。

「警戒するように、ゆっくりとドアが開いた。そこにはスリップドレスを着た20歳前後の若い女が立っていた。身長は高く160センチ後半。細身とは言えないまでも太ってはいない。健康的な体格と言っていい。
化粧も薄く、美人というよりは地味」(本書より)

 「ナオ」と名乗る女性は大阪出身で、韓国に来てまだ5日目だという。彼女いわく、海外売春をおこなうことになったのは「風俗は海外のほうが稼げる」という話を聞いたからだった。さまざまな国の候補がある中で、「好きなアイドルがいる国だから」と韓国を選んだ。

「彼女のような『海外出稼ぎ』は同じ国には15日間滞在というのがひとつのセットだという。観光ビザで入国しているので、それ以上長いと出国の際に疑われることがあるのと、滞在の途中で生理がきて『仕事』ができなくなるからだという。
しかし、その15日間で250万円を稼ぐ、というのが韓国での出稼ぎのパッケージだと彼女は言った」(本書より)

 ちなみに、勤務時間は正午から朝4時までの16時間。出稼ぎ期間中は、仕事場の部屋がそのまま住居を兼ねているため、空いた時間には洗濯などの家事をこなしたり、スマホで動画を見たりして過ごしているという。

 記者がさらに話を聞くと、どうやら彼女は日本でもデリヘル嬢として働いていたそうだ。そしてホストの彼氏に入れ込み、やがて借金を抱えるようになってしまった。彼女が困っていると、その彼氏がひとりの男性を紹介してきたという。その人物こそ、海外へ女性を派遣するスカウトマンだった。

「驚かされたのは、ナオがスカウトを紹介されたのは10日前のことだった。
スカウトの斡旋からたった5日で韓国渡航を決めたことになる」(本書より)

 「稼いだ250万円は何に使うのか」という記者の質問に、彼女は笑いながらも「ホスト」と答える。恋愛に対する彼女の切実さが報われる日は、果たして来るのだろうか。

「性産業は"時代の映し鏡"」(本書より)

 かつて19世紀後半から20世紀初頭にかけて、農村部の貧しい日本人女性たちがおこなっていたという海外での"出稼ぎ売春"。そこから時代が移り変わった今、再び日本の女性たちが海を渡っているという現実がある。

 彼女たちが海外売春の道を選んだ背景には、もしかすると"生活苦"などの言葉では簡単に言い表せないほどの深い闇が潜んでいるのかもしれない。本書を通じて、現代社会における売春問題の一端を垣間見てみてはいかがだろうか。