Image: Christopher Farwell / USGS
USGSのTRIGA原子炉

目の前の問題の解決策としては、ずいぶん気の長い話のような…。

アメリカの電力網はすでに過負荷状態だというのに、膨大なエネルギー需要を伴うAIデータセンターがさらに電力網を逼迫(ひっぱく)させそうな今日この頃。

この状況を打破するために、ユタ大学の研究者たちは、より小型で、多くの場合に持ち運び可能な核分裂反応炉であるマイクロリアクターの実現可能性を検討しています。エネルギーを爆食いするAIデータセンター対策の切り札にできないか、ということみたいです。

電力網を直撃中のAIブーム対策としての超小型原子炉

いまのところ、このプロジェクトは概念実証段階にあります。今年の夏に、ユタ大学はエネルギー企業のElemental Nuclearと共同で、同大学のTRIGA原子炉を改造し、小規模AIデータセンターの電源として活用する計画とのこと。

大学の声明によると、原子炉に新たに設置される独自の発電装置が熱エネルギーを回収し、約2〜3キロワットの電力を生成して稼働中のAIワークロードに供給するといいます。

正直なところ、本格的なデータセンターが必要とする数百メガワットという電力には遠く及びません。それでも、研究チームはこの実証試験を通じて、学術研究用の小型原子炉がAI運用の電力源になり得るのかが明らかになると期待しています。

原子炉管理責任者であるTed Goodell氏は、声明で次のように述べています。

私たちの知る限り、当校の原子炉に限らず、大学所有の原子炉が発電を行なうのはこれが初めてです。学生たちにとって画期的であると同時に、小型で安全な原子炉を、研究室ではなくデータセンターに設置できる可能性を示すものでもあります。

小規模ながらも重要な原子炉

TRIGA原子炉は、学術研究のために建設された核分裂反応炉で、General Atomicsによって設計・開発されました。

国際原子力機関(IAEA)によると、研究用原子炉は科学的調査、開発、教育、訓練を目的としています。世界原子力協会(WNA)は、こうした設備は「本質的に中性子の製造工場」であり、はるかに小型化されているとしています。

そうは言っても、研究用原子炉とマイクロリアクターは似て非なるもの。マイクロリアクターはより小型ですが、発電に関しては完全に機能します。

もちろん、マイクロリアクターの発電量は本格的な発電所よりも少ないですが、遠隔地や軍事基地向けの運搬可能で信頼性が高い電源を目指しているので、比較する必要もないと思われます。とはいえ、商業規模の導入までには、関係者がクリアすべき課題がまだ多く残されているそうです。

橋渡しとなる技術

今後行なわれる概念実証としての実験では、研究用原子炉の特性を活かし、AI向け原子力発電をどのように簡素化できるかを検証します。

Elemental Nuclearが開発した発電装置は、TRIGA原子炉から発生する熱エネルギーを回収します。通常、この熱は冷却システムによって放散されますが、新しいシステムではこの熱を電気エネルギーに変換するといいます。

Image: University of Utah
ユタ大学にあるTRIGA原子炉を囲む研究者

この過程で生成された電力は、同大学の計算分野の専門家による管理のもとで、稼働中のAIワークロードを実行する高性能GPUノードの電源として供給されます。

実際の原子炉とデータセンターの規模を比較すると、このプロジェクトは控えめなものです。それでも、ここでいい結果を出せれば、将来的にデータセンター用のマイクロリアクターを設計・導入するプロジェクトを進めるにあたって、大きな自信を得られるでしょう。

Elemental Nuclearの創業者であるMike Luther氏は、声明でこう述べています。

このプロジェクトは、強力な原理を実証することを目的としています。分裂によって生成されるエネルギーは、最終的に人工知能を動かす計算システムに電力を供給できるのです。

繰り返しになりますが、マイクロリアクターが電力網に導入されるまでには、まだまだ時間がかかります。その間も、関係者たちはマイクロリアクターの利点と欠点について議論を続けるでしょう。AI業界が多くの課題を抱えているのは言うまでもありません。

このプロジェクトがどちらにとっても完璧な答えを見いだすとは限りませんが、差し迫った問題を緩和できる有意義なチャレンジになるかもしれません。

マイクロリアクターが実用化される頃までに、電力と水を大量消費して、電気代高騰や環境汚染を引き起こすデータセンター問題が解決していることを願います。