ガチャ感覚で出会い楽しむ自販機、文具・生理用品・お守りなど商品多様化…ネット販売や節約志向と差別化
街中にある自動販売機の形態や取扱商品が多様化している。
いつでも気軽に必要なものを買えるだけでなく、限定品や偶発的な出会いを楽しむ場としても、消費者の関心を集めている。(岩浅憲史)
東京都大田区にある羽田空港直結複合施設「羽田エアポートガーデン」のコクヨ(大阪)直営店で人気を集めているのが、文房具が買える「IoT自販機」だ。2023年、「文具との出会いを楽しんでもらおう」と設置した。
タッチパネル式で商品画像に触れると、商品の詳細な説明などを確認できる。国内外の人気商品を詰め込んだ「スペシャルボックス」(3000円)、中身が分からない「シークレットセット」(2000円〜)などを扱い、購入するとオリジナルの紙袋や箱に入って出てくる。
同社は「購買体験そのものを楽しんでもらっている。外国人観光客も含めて、お土産用として好評」としている。
東京都品川区の商業施設「阪急大井町ガーデン」には、自販機「ガチャCAN」が4月に設置され、ここではプロ野球・阪神タイガースの関連グッズを扱う。ハンドルを回すと玩具入りのカプセルが出てくる「ガチャガチャ」の要素を取り入れたもので、購入ボタンを押しても、どんな商品が出てくるか分からない。
ガチャCANを企画・販売するアイナス(兵庫)によると、設置台数は全国で100以上。鉄道の駅の看板や道路標識のキーホルダーなど様々な商品を扱っており、特定の場所でしか買えないものもある。同社は「偶然性と発見がガチャCANの楽しみ」という。
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都市部を中心に自販機の機能や取扱商品が多様化している。自販機の文化や動向に詳しく、「自動販売機マニア」としてメディア出演も多い石田健三郎さんによると、背景には、インターネット購入やセルフレジの広がりなどがある。「いつでも、どこでも、人手を介さず商品を手に入れられるという自販機の優位性が失われ、商品や売り方によって差別化を図る必要性が生じている」と指摘。物価高で節約志向が高まる中、自販機の飲料や食品が小売店に比べて割高に感じられるため、別の商品に置き換えられている側面もある。
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利用者の困りごとを解決する自販機として広がっているのが、飲料メーカーのダイドードリンコ(大阪)の紙おむつや生理用ナプキンも買える自販機だ。「女性の社会進出や子育て世代の外出機会の拡大を支援するために自販機を役立てたいと考えた」と同社。4月末までに、大学や女性の多い企業、行政施設などに約1000台設置された。
千葉県野田市にあるアイス工場見学施設「グリコピアCHIBA」は昨年、1台導入。同施設の館長、吉村貴宏さんは「来館者が不安やストレスを感じずに見学できるようになった」と歓迎する。
青森市の廣田神社は、自販機を使ってお守りなどを24時間授与している。社務所が開いていない夜間や休務日でも参拝者が入手でき、祭事などでの混雑緩和に役立っている。
ニッセイ基礎研究所生活研究部研究員、廣瀬涼さん(現代消費文化論)は「商品の購入手段は増えているが、自販機は利便性という本来の役割の幅を広げ、さらに面白さや特別感も加えるなどして、存在感を示し続けるだろう」と話している。
