『魔女の宅急便』©1989 Eiko Kadono/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, N

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 5月8日の日本テレビ系『金曜ロードショー』で、スタジオジブリの名作『魔女の宅急便』が放送される。1989年に公開された本作は、13歳の魔女・キキが黒猫のジジとともに見知らぬ街へ旅立ち、自分の力で仕事を見つけていく成長物語。海辺の街・コリコの風景、グーチョキパン店での日々、トンボやウルスラとの出会い……。多くの人の記憶に残る名シーンが詰まった一本だ。

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 ストーリーはすでに知っているという人も多いはず。だからこそ今回の放送では、声優、タイトル、背景、小物、劇中画といった“小ネタ”に目を向けてみたい。何気ない場面や画面の端に隠れたポイントを知っておくと、見慣れた作品も少し違って見えてくる。

 ここでは、『魔女の宅急便』をもう一度観返したくなる“意外と知らない小ネタ”を5つ紹介する。

■キキとトンボは“コナンコンビ” まず注目したいのは声優陣。キキを演じるのは高山みなみ、トンボ役は山口勝平だ。後年、『名探偵コナン』では高山が江戸川コナン、山口が工藤新一と怪盗キッドを担当することになる。同作では同一人物として縁のあるキャラクターを演じる2人が、ここではキキとトンボとして掛け合っていると思うと、声優ファンやコナンファンにとっては少し不思議な楽しさがあるかもしれない。

 さらに高山は、本作でキキだけでなく、森に暮らす画家の少女・ウルスラも演じている。

 金曜ロードシネマクラブの公式トリビアによれば、登場する女性キャラクターたちは“各年代を代表する女性”として描かれており、根本的には1人の人物が成長した姿というイメージがあるのだという。13歳のキキ、18歳のウルスラ、26歳のおソノ、37歳のコキリ、そして70歳の老婦人。高山によるキキとウルスラの一人二役も、そうした発想から生まれたものだそうだ(※1)。

 この事実を知った後に観ると、快活で少し意地っ張りなキキと自由で大らかなウルスラの演じ分けにも自然と耳が向いてしまう。

■山寺宏一は3役で出演 本作にはキキやトンボだけでなく、さまざまな街の人々も登場する。その中で複数の役を兼ねているのが山寺宏一だ。警察官、おソノの夫であるパン屋の亭主、飛行船事故を伝えるアナウンサーと、異なる場面で3役を担当している。

 ちなみに、終盤に登場する飛行船「自由の冒険号」の船長の声を担当しているのは大塚明夫。主要キャラクターだけでなく、街の人々として登場するベテラン声優たちの声にも耳を澄ませると、また違った楽しみ方ができるかもしれない。

■“宅急便”表記に隠れたヤマト運輸との関係 タイトルにも、意外な小ネタがある。実は『魔女の宅急便』の「宅急便」は一般名詞ではなく、ヤマト運輸が提供する宅配便サービスの名称で、ヤマトホールディングスの登録商標にあたる。荷物を届けるサービス全般を指すなら「宅配便」が一般的で、「宅急便」はあくまでヤマト運輸のサービス名なのだ。

 映画化にあたっては、「宅急便」がヤマト運輸の登録商標であることから、同社との調整も行われた。結果として、公開当時のヤマト運輸は徳間書店、日本テレビ放送網と共同提携で本作の製作に参加している。キキの相棒は黒猫のジジで、一方のヤマト運輸といえば「クロネコ」のマーク。こうして「宅急便」と「黒猫」という組み合わせは、作品の外側でも強く印象づけられることになった。(※2)

■背景に走る“ジブリ”の遊び心 画面の中にも、見返したくなる遊び心が潜んでいる。キキがコリコの街に到着した直後、交通量の多さに戸惑い、バスと接触しそうになる場面では、その車体に「STUDIO GHIBLI」の文字が。トンボとの出会いへとつながる印象的なシーンだが、背景に目を凝らすと異国情緒のあるコリコの街をさりげない遊び心が走り抜けていくことがわかる。

 ちなみに、作中のあるシーンには『となりのトトロ』のトトロを思わせるぬいぐるみも登場する。物語を追うだけでなく、背景や小物に込められた遊び心にも目を凝らしてみたい。

■ウルスラのアトリエにある絵は実在する? キキが森で出会う画家の少女・ウルスラ。彼女のアトリエに置かれた印象的な絵にも、実はモデルが存在する。劇中の絵は、八戸市立湊中学校養護学級の共同制作版画「星空をペガサスと牛が飛んでいく」をもとに描かれたものだ(※3)。

 この絵は、キキが森でウルスラと出会い、彼女のアトリエを訪れる場面で印象的に映し出される。さらに、魔法の力が弱まったキキが再びウルスラのもとを訪れる場面では、ウルスラが絵を描くことになぞらえながら、描けなくなる時期があるのだと語る。

 幾度となく観てきた人も多いかもしれない本作だが、背景の片隅や声の演じ分け、小物にまで目を向けると、思わぬ発見があるのがジブリだ。今夜の『魔女の宅急便』もまた、いつもとは少し違う表情で楽しませてくれそうだ。

参照※1. https://kinro.ntv.co.jp/article/detail/202003majyo2※2. https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2203/31/news157.html※3. https://x.com/hachinohe_art_m/status/1243445290209644544?s=20(文=すなくじら)