株価は大暴落していても“独自市場”でどこ吹く風…あのリーマン・ショックにも動じなかった「アンティーク・コイン」の真価【コイン収集歴50年のFPが解説】
世界を震撼させた「リーマン・ショック」。多くの投資家が資産を激減させ、絶望に立ち尽くすなか、ひっそりと価値を維持し、後に10倍以上もの高騰を見せた資産がありました。それが「アンティーク・コイン」です。本記事では、田中徹郎氏の著書『資産運用の視点からみた 決定版 アンティーク・コイン投資のすべて』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集し、アンティーク・コインの過去の値動き事例を紹介します。
リーマン・ショックで株価に激震…その裏で「アンティーク・コイン」はどう動いたか
私は「コインは金融界から半ば遮断されており、それだけに値動きが小さい」という話をしましたが、実際のところはどうなのでしょう。
私は50年以上にわたってコインの収集をしてきました。特に、ファイナンシャルプランナーとして20年ほど前に独立して以来、たとえば株や債券、現物の不動産などと並び、依頼者にコインの投資を勧めてきました。職業としてコイン投資に携わってから、すでに20年以上経ったことになります。振り返ればこの20年だけでもいろんなことが起きました。
特に印象深いのは2008年に起きたリーマン・ショックです。リーマン・ショックはもう過去の話になりつつありますが、それでも多くのみなさんは憶えておられるのではないでしょうか。
あのころ私はすでに資産運用アドバイスに携わっていましたので、鮮明に覚えています。特にひどかったのは株式市場でした。震源地のアメリカ株だけでなく日本株やヨーロッパ株、新興国株に至るまで、あらゆる市場が激震に見舞われました。
その激震のなか、私たちは下げ続ける株価ボードをみながら、ただ立ち尽くすしかありませんでした。
株価大暴落時も耐え抜いた「実物資産」の底力
しかし、多くのアドバイザーと私が違っていたのは、当時から資産の質的分散をお勧めしていた点です。自分自身はもちろん相談者の持ち株も大きく毀損しましたが、私がファイナンシャルプランナーの看板を下ろさずに済んだのは、この分散投資のおかげでした。
株価は大きく下げましたが、貴金属や現物の不動産はほとんど下げることはありませんでした。不動産は今までどおり家賃収入を生んでくれましたし、金や銀などは小幅の下げのあと逆に上昇に転じたほどです。
当時、私はまだコインの組み入れを広くは推奨していませんでしたが、一部の賛同を得られた顧客にはすでに組み入れてもらっていました。
そして、そのような方は実物資産の組み入れ額に応じ、リーマン・ショックの被害を軽減できたのです。
30万円が300万円に…「中国コイン」で見られた異次元の値上がり
当時のコイン相場で印象深いのは中国コインです。
コインの相場は株や債券などのペーパーアセットと違い、刻々商いが成立する取引市場というものがありません。それがかえってコイン相場に幸いしたという面もあったと思います。
コインという閉ざされた市場にも、たとえばPCGS3000(注)のように限定された地域のコイン指数はありますが、それも日々更新されるものではありません。
注)PCGS3000:アメリカの大手コイン鑑定会社PCGS社が発表するコイン指数。アメリカの幅広いレアコイン価格を指数化した値です。
私たち収集家やアドバイザーがウォッチしているのは、世界で開かれるオークションの落札相場です。
たしかにリーマン・ショック直後に多少は落札相場は下げたかもしれませんが、実は私にはその記憶がほとんどないのです。
それより強く記憶に残っているのは翌年以降の中国コインの値上がりです。たとえば有名な「自動車ダラー(注)」の値動きをみますと、以下のように推移しています。
・リーマン・ショック前後で並程度(EF40)の状態のものが30万円程度
・同程度の状態のものが2010年あたりには100万円超え
・その後のピークは2020年あたりで同程度の状態のものが300万円超え
注)自動車ダラー、清朝滅亡後に中国(正確には当時は中華民国)では各省が大型の銀貨を発行しました。
自動車ダラーは貴州省で1917年に発行された7銭2分銀貨、ウラ面に当時のフォード車がデザインされており人気が高いコインです。
わずか5年で119万円が1000万円超え…10倍超の利益を生んだコイン
自動車ダラーに関して、私の体験談を一つ紹介しましょう。
2017年にある方から「オークション代行入札」の依頼を受けて、この銘柄への応札を提案したのですが、結果、ハンマープライスは7,500ドルでの落札となりました。
当時のドル円レートで計算すると、輸入消費税込みで119万円です。5年後の2022年、その依頼者から売却したいと相談を受け、こんどは別の海外オークションに代行出品したのですが、ハンマープライスは8万ドルで落札されました。
オークション会社の出品手数料や当社の代行出品手数料を差し引いて、その方の手取りは1,000万円を超えました。
以上、わずか5年でハンマープライスが10倍以上になった稀有な例です。もちろん、これは特異な事例で、すべてのコインがこのように値上がりすることはありません。
ただし、うまく銘柄を選び、さらにタイミングよく手放すことができれば、このような利益を上げることもあり得るという事例として紹介しました。
自動車ダラーだけではありません。中国コインの主役は金貨ではなく銀貨ですが、清朝末期から戦前の中華民国で発行された銀貨の多くは、同時期に驚くほど値を上げました。
ここまでは中国コインについてのお話ですが、リーマン・ショック前後から数年先までの値動きは、ほかの国や地域でも同様の傾向がみられます。
田中 徹郎
株式会社銀座なみきFP事務所
代表/FP
