現場付近を調査する県の職員ら(5日、秋田県由利本荘市で)

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 秋田県由利本荘市東由利法内の田んぼで5日、一人で見回りをしていた農業男性(48)がクマに襲われ、顔や腕にけがを負った。

 けがの程度は不明だが、搬送時、意識はあったという。県内でクマによる人身被害は今年初めてで、駆け込んできた男性の手当てをしたという薬局の店主は「こんなことがあるのか」と驚いた表情で語った。(簗田明、鈴木茉衣)

 由利本荘署の発表によると、男性が襲われたのは5日午前8時15分頃。クマは体長約1メートルで成獣とみられる。男性はドクターヘリで秋田市内の病院に搬送され、手術を受けている。

 現場は東由利小学校から200メートルの田んぼが広がる一帯で、石沢川を渡ると住宅街が広がる。

 襲われた男性はその後、車で住宅街に向かい、薬局に助けを求めた。ベルが鳴り、店頭に出た店主の女性(78)は、額などから出血した男性が店内の椅子にぐったりと座っている姿を目の当たりにした。

 「救急車を呼んでください。クマにやられた」。男性のうめくような声を聞き、119番した。救急車が到着するまでの約15分間、男性の額にタオルを当てて出血を抑えたり、意識が遠のきそうになる男性の体をさすったりしながら、「しっかりして」と呼びかけ続けたという。

 救急隊員は「傷が大きいのでドクターヘリで搬送する」と話していたといい、伊東さんは「店の前の道は近くの小学校の子どもたちが通学で使う。こんなことがあると心配だ」と振り返った。

 被害が発生した後、周辺は赤色灯をつけたパトカーが巡回し、県自然保護課の職員らが現場の状況を確認するなどして物々しい雰囲気に包まれた。

 由利本荘市は同日午後、現場の北側に広がる山林にはちみつと米ぬかを入れた箱わな1基を設置。市農山漁村振興課は「引き続き、生ゴミを放置しないことや果樹を伐採することなど、クマが来ないようにする対策を求める」と話している。

田んぼ 森林近く クマの通り道か

 県自然保護課の資料によると、2021年以降の各年最初の人身被害の発生状況は、登山(25年)や山菜採り(21、23年)などで山の中に入った人がクマと遭遇したケースが目立つ。

 今回、被害が発生した場所は見晴らしのいい田んぼで、近くに小学校もある人里だ。由利本荘市農山漁村振興課は「付近を森林に囲まれており、クマの通り道になっているのではないか」とみる。

 茨城県自然博物館の山崎晃司館長は、「山の中ではない場所では一人一人ができる対策には限界がある。誘引物の除去の他、行政がすみ分けのための許可捕獲を進めるしかない」と指摘。複数人で行動することや、体を隠して移動できる河川沿いがクマの移動経路になりやすいといった生態を知ることも有効だという。

 県自然保護課によると、県内の4月のクマ目撃件数(速報値)は前年同月比4・6倍の389件に上っている。