秀吉が大層満足したご利益を授かる 「コン吉・ツネ松」の狐も人気の満足稲荷神社

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京都観光の名所といえば、清水寺、金閣寺、下鴨神社、伏見稲荷大社などが人気ですが、あまりの人の多さに気忙しいのが少し残念。ところが京都には、オーバーツーリズムであふれかえる外国人観光客の姿もほとんどなく、地元民に愛されている神社仏閣がたくさんあります。今回は、ゆったりと落ち着いて参拝できる満足稲荷神社を紹介します。

秀吉が”満足”した、開運・出世のご利益

平安神宮と八坂神社の真ん中あたりに位置する「満足稲荷神社」。京都市内の繁華街にあり、神社に面した東大路通は、行き交うクルマや人の往来も多いのですが、境内に入ると街の喧騒が嘘のように気にならなくなり、厳かな雰囲気の中でお詣りできます。

満足稲荷神社の本殿

豊臣秀吉が、「文禄の役(1592年)」の戦勝を祈願して、伏見城(現在の京都市伏見区)の城鎮守として稲荷大神を勧請したことが、創建の由来。秀吉はそのご加護に大層満足されたそうで、それ以来、満足稲荷神社と呼ばれるようになりました。

本殿横に由緒が記されている

時は流れ、元禄6(1693)年、徳川綱吉が伏見城から現在の地に満足稲荷神社を遷座し、法皇寺の鎮守社になります。その後、明治の廃仏毀釈で法皇寺が南禅寺に併合されますが、満足稲荷神社はそのまま残されることになり、商売繁昌・五穀豊穣のご利益のある地域の氏神として、氏子や崇敬者によって大切に護られ、現在も「満足さん」と呼ばれるほど、親しまれています。

霊験あらたかな「岩神さん」を撫でて、知恵と健康を

南門の鳥居をくぐるのが正式な参拝

境内の入口は2ヵ所あり、市バスのバス停前にある西門から入る方が多いですが、南門の鳥居をくぐるのが正式な参拝になります。手水舎でお清めすると、境内の奥にあるご本殿の前へ。主祭神の倉稲魂大神(うかのみたまのおおかみ)にご祈願すれば、商売繁昌はもちろん、秀吉にあやかって開運・出世のご利益があるそうです。

神様が降臨される磐座。ここが移動前の本殿の中心だった

参拝後は境内を時計回りに回って、磐座のある「岩神さん」をお詣りしましょう。東大路通が拡幅したときに、本殿が移されており、この磐座は以前の本殿の中心だった場所にあたるそうです。神様が降りる磐座は霊験あらたかで、岩神さんを撫でた手で頭をさすると聡明になり、体の痛みがあるところをさすると快方に向かうと言い伝えられていて、熱心にお詣りする地元の方の姿も見られます。

「岩神さん」を撫でた手で頭をさすると賢くなるそうだ

磐座をお護りするように、見事な枝振を天に広げている御神木があります。一本の幹から八本の幹が枝分かれし、末広がりで縁起が良いとされる、樹齢400年のクロガネモチの木です。神職のあげる祝詞に「子孫の八十続五十橿八桑枝の如く立ち榮しめ給へ」という一説があり、何百年もかけて宿った神様の力を物語っているそうです。昨年、本殿の鎮守の森の枝を剪定したところ、日差しと風通しが良くなったことで、赤い実をたわわに実らせるようになったとか。クロガネモチは、長寿や金運の縁起が良いとされており、参拝の際はこちらのご利益も授かりましょう。

樹齢400年の御神木は京都市指定保存樹

樹齢400年の御神木は京都市指定保存樹

愛らしい2代目「コン吉・ツネ松」に会いに行こう

境内には眷属の狐が、数多くお祀りされています。愛らしい表情で人気なのが、磐座をお護りする「コン吉」と「ツネ松」。初代の損傷が激しかったことから、2019年11月9日に御霊移しの儀が行われ、2代目になりました。そのかわいい姿から一緒に写真に収まる参拝者も多いとか。

コン吉

ツネ松

初代のコン吉、ツネ松は、神の使いとしてお狐さんが出入りする、本殿裏の穴の前にお祀りされています。神様にもっとも近づくことができる裏参りもおすすめです。

初代コン吉

初代ツネ松

本殿の裏にお狐さんが出入りする穴がある

格式を守りながら、参拝者とつながる新しい試みも

満足稲荷神社の年中行事で賑わうのが、2月2・3日の節分祭と、5月5日の神幸祭です。神幸祭では、大神さまが神様の乗り物の鳳輦(ほうれん)で、氏子が暮らす地域を巡幸されます。狐面を被った巫女とお供が京都の街中を練り歩く様子は、まるで異世界に迷い込んだかのよう。狐の巫女とお供は、一般参加できるため、抽選になるほどの人気とか。募集はすでに締め切られていますが、巡幸を見ることはできるので、足を運ばれてみてはいかがでしょう。

行列巡幸に帯同する狐面を被った巫女(提供:満足稲荷神社)

狐面を被ったお供は裃の凛々しい姿で帯同する(提供:満足稲荷神社)

狐巫女、狐のお供の一般参加の募集をはじめ、境内で掲げられる朱色と白色ののぼり旗を表紙に使った御朱印帳や、本殿をお護りする狐をデザインした交通安全ステッカーの制作など、宮司の柴田晃さんは、格式と伝統を守りながら、新しい取り組みも積極的に行われています。

交通安全シール(左)、のぼり旗を使った御朱印帳(右)

「これからの神社のあり方について、氏子さんや崇敬者の方々に、何かできないかと相談すると、皆様がお力を貸してくださり、色々なことが実現していくんです。すべては皆様のお陰と、いただいたご縁に感謝しています」と柴田宮司。

宮司の柴田晃さん

ご利益を授けてくださるだけでなく、さまざまな体験ができる稲荷神社で、満足のいく参拝をされてみては。

[名称]満足稲荷神社

[住所]京都市左京区東大路仁王門下ル東門前町527-1

[電話番号]075-771-3035

[参拝]自由・休みなし

[交通]市バス・東山仁王門バス停すぐ。市バス・東山三条バス停から徒歩2分

[HP]https://www.manzokuinari.com/

文・写真/寺田鳥五郎

テラダ・トリゴロウ。京都精華大学美術学部卒業。ココロ株式会社代表取締役。1968年、京都生まれ。タウン誌編集者、地方新聞記者、フリー編集ライターを経て、編集デザイン会社を設立。「人に歴史あり」を信条に取材を重ね、その人の魅力を伝えることを心がけている。

【画像】愛らしい狐は「コン吉」と「ツネ松」。狐面の巫女が京都の街を練り歩く異世界のような光景も(15枚)