佐野晶哉『風、薫る』シマケン役「初の“朝ドラ”で<ばあば孝行>ができた。グループにとって大事な時期。チャンスをつかみたい」
アイドルグループ『Aぇ! group』のメンバーとして活動する傍ら、俳優としても話題作に出演する、佐野晶哉さん(24)。クールな容貌ながら、人懐っこい気さくなキャラクターでバラエティでも人気を集める。放送中の『風、薫る』(NHK総合、毎週月曜〜土曜午前8時ほか)で、連続テレビ小説初出演を果たした。田中ひかるさんの『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社刊)を原案に、看護師という職業の確立に貢献した大関和と鈴木雅をモチーフにしたバディドラマ。主役の一人、一ノ瀬りん(見上愛)の相談相手、島田健次郎を演じる。「チャンスをつかめるように」と話す佐野さんに”朝ドラ”への思いや役作りについて聞いた。(取材・文:婦人公論.jp編集部)
* * * * * * *
ばあば孝行できた
祖母が連続テレビ小説が大好きで、毎朝見ていました。子どもの頃、僕は放送が始まってちょっとしたら学校に行くために家を出る。祖母はドラマの途中でも玄関まで来てお見送りしてくれて。僕が出て行ったら、また戻って続きを見る、ということが多かったですね。出演が決まって、祖母の日常に自分が入り込めるということがすごくうれしかったです。
家族仲がめっちゃよくて、これまで仕事が決まる度に家族に報告してきました。ジュニア時代にCDデビューが決まって以来の、家族がすごく喜んでくれそうな仕事です。ファンの方にお知らせするのと同じ情報解禁のタイミングで、家族は僕の“朝ドラ”出演を知りました。僕が報告する前に、祖母からテレビ電話がかかってきて、泣きながら「嬉しいわ」って伝えてくれたんです。“ばあば孝行”ができてよかった。
『Aぇ! group』のメンバーも喜んでくれました。昨年、メンバー4人で取材を受けた時に、マネージャーが急にほかのスタッフさんを外に出して「こんな仕事が決まりました」と個人の仕事をほかのメンバーに共有したんです。その時に、僕が『風、薫る』に出演することが報告されて。(末澤)誠也くんとトイレで一緒になった時には、「来年はよろしくな」と応援してくれました。それを聞いて、「がんばらな」と思った記憶があります。
メンバーでは正門(良規)君が、2019年に連続テレビ小説の『スカーレット』に出演しました。まだ、僕達グループが関西でもなかなかテレビに出ていないようなタイミングだったのに、オーディションを受けて役をつかみ取ったんです。僕はほかのメンバーの個人の仕事はあまりチェックしないのですが、『スカーレット』は観ましたね。正門君演じる鮫島正幸は印象的なキャラクターで、今でも覚えているシーンもあります。メンバーの中でいちばん連続テレビ小説の話をするのが正門くん。リハーサルや本読みの時の空気感について世間話みたいな感じで話しています。心強かったですね。
いろいろな作品に出演してきましたが、連続テレビ小説ほど役づくりに時間がかけられる作品はありません。髪型も整えられましたし、下駄を履くことに慣れていなかったので、昨夏は自分で買った下駄を履いて過ごしたんです。
魅力的な「謎の青年」
<演じる島田健次郎は、りんが東京で働く瑞穂屋の常連客。「シマケン」と呼ばれ、読書が好きで、語学に造詣が深い青年だ。りんのよき相談相手になっていくが、その正体は謎に包まれている>
『風、薫る』の公式Xの投稿では衣装を着た状態の写真に説明がついていて、「謎の青年」と紹介されていました。「謎の青年」という入り方がすごく魅力的。シマケンの初登場シーンの第11回は、すごく朝ドラっぽい場面です。瑞穂屋で店番をしているりんが、客の言葉がわからず困っているところに、シマケンがフランス語をしゃべりながら登場する。その後も、シマケンが何を目指しているどんな人物なのかわからないまま作品に絡んでいく。正体が謎のまま進む登場人物というのは、朝ドラっぽいと思いました。
シマケンは最初、根暗なキャラクターだと思って演じていました。とっつきにくいようで、とっつきやすいところは、僕と似ているかもしれない。思ったことをずばっと言うけれど、なかなか相手に一歩踏み込めない一面もある。不器用なところがすごく素敵です。明治時代、シマケンはすでに外国に目を向けていて好奇心があって言語に明るい。
役作りのため、フランス語のレッスンを受けました。2回くらいレッスンの時間を取ってもらってからの撮影だったのでやりやすかったです。僕が初めてシマケンを演じたのがフランス語を話す場面。セリフのフランス語が完全に覚えられていたので、緊張しませんでした。シマケンはフランス語を話している時間が楽しいんです。自分の言語能力や知識をひけらかす時間はシマケンがかっこつけている瞬間。今の言葉で言うと、「いきりながら」やっていると思うので、僕自身も「これだけ喋れるんだぞ」と思いながら演じました。りんは看護の勉強の過程で英語に悩むこともあるので、シマケンはりんの救いになる存在だと思っています。
りんの母親の美津や妹の安も、りんを追って上京してきます。シマケンは、一ノ瀬家の家族と仲が良いんです。一ノ瀬家が揃っているところにシマケンが混ざっているときにはテンポ感が良くお芝居が進むのですが、りんと2人きりになると、ちょっと居心地が悪いような、気持ち悪い間で進んでいくような感覚があって。お芝居として、あえてそう演じているわけではないのに、無意識だけれどお互い意識しているような微妙な男女の空気感になっているんです。
りんはシマケンにいろいろな相談をしますが、シマケンは真剣に相談に乗ってあげる気がない。だからこそ言えるシマケンの言葉があるし、そこがシマケンの魅力だと思いました。
りんが一番「普通」に接することができるのがシマケン。これから、りんとの関係がどう発展していくか楽しみです。
林裕太との芝居が楽しい
<シマケンの親友が、林裕太演じる槇村太一だ。陽気な性格で、会話に時々英語を挟む>
槇村役の林裕太くんとは、初日で仲良くなって、もう3回ぐらい食事に行きました。すごくやりやすいですね。裕太くんとは共通の友人がいます。
友人の言葉を借りると、「裕太の芝居は、いい意味で、こちらが用意してきた芝居のテンポをぶち壊してくれる」んです。「このセリフならこう言うよね」というのが全くない。めちゃめちゃ不器用で、裕太の芝居を受け止めるだけでこちらの演技も引き立つような感覚があります。裕太と2人でお芝居をするシーンはめちゃくちゃ楽しい。カメラのアングルが変わるたびにいろんなお芝居を見せてくれる。

(『風、薫る』/(c)NHK)
撮影が終わった後に、2人で帰りながら「この芝居良かったよね」とか無駄に褒め合います(笑)。「もっとこうできたらいい」とか「このセリフはこう言ったらいい」とかプライベートでお芝居の打ち合わせをしてから、撮影に臨める相手はこれまでいませんでした。いい関係を築けています。
人間関係で人生は変わる
明治という激動の時代を強く生きるシマケンは、時代を象徴するようなキャラクターです。

(『風、薫る』/(c)NHK)
シマケン役での出演が決まってから、過去の連続テレビ小説をいくつも観ました。その上で、自分の出演シーンを観ると、編集された映像の色味やつなぎ方やアングル、どこを切り取っても“朝ドラ”だと実感します。
僕自身、グループとしても大事なタイミングで、連続テレビ小説出演という大きなチャンスをいただけたので、「チャンスをモノにしたい」と思っています。
『風、薫る』の台本を中盤まで読んで、人生は人間関係でおおいに変わるし、努力は一人ではできないと感じました。僕も素敵な人たちに支えてもらいながら、アイドル活動や役者のお仕事をさせてもらっています。素敵な人がいる環境に身を置いていこうと思わせてくれる作品。
少しの希望もこぼさないように、皆さんの朝に温もりの風が吹くように、一瞬一瞬を大切に作品と向かい合いたいです。
