トランプ大統領

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 CNNの日本語・電子版は4月2日、「トランプ氏の経済運営支持率は過去最低の31%、ガソリン価格高騰に不満 CNN世論調査」との記事を配信した。CNNと調査会社SSRSが実施したオンラインと電話での調査によれば、ドナルド・トランプ大統領に対する支持率は35%。これは記録的な低水準だと注目を集め、日本でも多くのメディアが「大統領の支持率は危険水域に入った」と報じた。実際、トランプ大統領は4月2日にボンディ司法長官の解任を発表するなど、政権の求心力向上を目指しているように映る。(全2回の第1回)

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 世論調査で知られるギャラップは2023年7月、過去60年間におけるアメリカ大統領の支持率をランキングの形式で発表した。異なる会社が実施した調査を安易に比較することはできないとはいえ、CNNの結果を踏まえてギャラップのランキングを見てみると、思いのほかトランプ大統領がアメリカ国民から支持を得られていないことがよく分かる。

トランプ大統領

 何しろ第1次政権のトランプ大統領は46%で、これがワースト2位。ワースト1位はリチャード・ニクソン大統領で32%。要するに今のトランプ大統領は、ウォーターゲート事件で権威を失墜した大統領の不人気に迫るほど、国民からの支持を失っているのだ。担当記者が言う。

「なぜトランプ大統領の支持率がこれほど低下したのか、CNNは経済政策に対する不満が強いと指摘しています。『トランプ氏の政策によって米国の経済状況が悪化した』と考えている国民は3分の2にも達し、1月の調査と比較すると10ポイント上昇しました。調査期間は3月26日から30日なので、イランでの軍事作戦によりガソリン価格が急騰したこともトランプ大統領の支持率を押し下げました。今年の11月にはアメリカで中間選挙が行われます。トランプ大統領の不人気もあって民主党の勝利が予想されています」

アメリカ国民が望まない政策

 そのため大手メディアからXのユーザーまで、「トランプ政権は中間選挙を経てレームダック化する」という指摘が多い。レームダックとは「死に体」を意味し、政権の行き詰まりを指す。

 改めてトランプ政権の政策を振り返ってみよう。2025年1月20日に就任式が開かれると大統領は「政府の多様性・公平性・包摂性プログラムと優遇措置の終了」、「WHOからの脱退」、「ジェンダー・イデオロギーの過激主義から女性たちを守り、連邦政府に生物学的な真実を取り戻す」といった大統領令に署名を行い、初日から世界的な物議を醸した。

 さらに4月2日、トランプ大統領は、この日を「解放の日」と位置づけ、ほぼ全ての国からの輸入に対して基本は10%、国によってはもっと高率の関税を課すと発表した。この発表も世界を大混乱に陥れたことは間違いない。

「関税の発表から1年が経ちました。今年の2月にアメリカの最高裁はトランプ政権が議会の承認なく発動した関税を『大統領の権限逸脱』として違憲と判決しました。トランプ大統領が関税を課したのは国内産業の保護、育成が狙いとはいえ、どう考えても物価の上昇を招くのは間違いありません。アメリカは深刻なインフレに悩んでいます。多くの有権者は大統領選で『トランプ氏ならインフレを退治してくれるだろう』と期待して投票したにもかかわらず、正反対の政策を採ったことになります」(同・記者)

“民意”を無視するトランプ大統領

 そして2月28日、アメリカとイスラエルはイランを攻撃。たちまち原油価格は上昇し、アメリカの庶民生活を直撃した。その結果、CNNの世論調査で支持率35%という歴史的な数字を記録したのは前に見た通りだ。

 こうして時系列で再確認してみると、トランプ政権が間もなくレームダックを迎えるという指摘には強い説得力を感じる。

 ところが、である。アメリカ現代政治を専門とする上智大学の前嶋和弘教授は「たとえ中間選挙で共和党が大敗北したとしても、トランプ政権は強気の姿勢を崩さない可能性が高いと考えています」と言う。

「まず、今のアメリカでは“未曾有の分断”と“未曾有の拮抗”が共存しています。具体的には共和党の支持者が3割、民主党の支持者が3割、無党派層が4割というのが今のアメリカ社会の見取り図です。ニクソン大統領の時代なら、共和党の支持者も民主党の支持者も現政権に対して共に『NO』を突きつけることはありました。ところが、今は分断が深刻なので、世論調査は支持政党によって極端な結果になります。CNNだけでなく他の世論調査を見ても、トランプ大統領の支持率は民主党支持者だと数%なのに対し、共和党支持者の支持率は80%から90%なのです。3割の85%は25・5%、90%は27%となり、これに無党派層の一部が上乗せされてCNNの数値になったと考えられます」

30%が喜ぶ政策

 未曾有の分断と未曾有の拮抗が併存しているため、トランプ政権は全てのアメリカ人を対象とした政策を実施しない。不支持の70%は無視し、自分を応援してくれる30%の有権者だけを見て政治を行っているという。

 極端な移民排斥、関税政策、イランへの軍事作戦も全て「30%が喜ぶ政策」だと前嶋教授は指摘する。

 となれば、たとえ中間選挙で共和党が敗北しても、トランプ政権は傲慢に無視する可能性も否定できない。第2回【そんな“裏技”があるのか…イラン人を「動物」と呼ぶトランプ大統領が、米憲法の禁じる“3期目”突入という驚愕のシナリオ】では、トランプ大統領は今後もやりたい放題の政治を続けるどころか、驚愕の裏技で第3次トランプ政権の誕生を目論んでも不思議はないという予測について詳しくお伝えする──。

デイリー新潮編集部