危険運転罪に数値導入、一般道50キロ超過 飲酒はビール大瓶2本分
政府は31日、危険運転致死傷罪の構成要件を明確化するため、超過速度や飲酒量に関する数値基準を導入する自動車運転処罰法改正案を閣議決定した。危険運転致死傷罪は、「進行を制御することが困難な高速度」と曖昧な表現だったため、成立のハードルが高く、過失運転致死傷罪にとどまることが多かった。
改正案では、最高速度が60キロ以下の一般道で50キロ超過、高速道路では60キロ超過を一律として規定。飲酒については、およそビール大瓶2本分にあたる呼気1リットル当たりアルコール0.5ミリグラム以上、または血液1ミリリットル当たりアルコール1ミリグラム以上を対象とした。
数値を下回る場合でも、重大な交通の危機を回避することが著しく困難な高速度やアルコールの影響で正常な運転が困難な状態で死傷事故を起こした場合も、同罪を適用できる包括規定。公道での「ドリフト走行」や「ウィリー走行」も処罰対象となる。
刑罰内容は拘禁刑のみで、相手を死亡させた場合は1年以上20年以下の有期懲役。負傷の場合は15年以下の懲役と過失運転致死傷罪より重くなっている。初犯でも実刑判決となることが多い。
通常国会で法案が通過した場合は、7月ごろから施行される。
制定は2021年、飲酒トラック事故がきっかけ
危険運転致死傷罪は、2001年に制定された。きっかけは、1999年に東名高速道路で飲酒運転のトラックが女児2人を死亡させた事故だ。
構成要件は、速度、アルコールの影響、赤信号の無視、あおり運転、被告本人の危険性の認識(故意)があることなどだ。被害者や遺族のための立法でありながら、構成要件が曖昧で明確性の原則に反しており、法自体に問題があるとたびたび指摘されていた。
当初は四輪以上の自動車に限定されていたが、2007年5月17日成立の改正刑法で、「四輪以上」の文言が削除され、原動機付自転車や自動二輪車で人を死傷させた場合でも適用されることとなった。
2021年2月、大分市の一般道で時速194キロで走行した車が起こした死亡事故で、福岡高等裁判所は「危険運転致死罪」を認めた大分地方裁判所の一審判決を破棄し、過失運転致死罪を適用した。同裁判は、危険運転致死傷罪の表記が曖昧なことから適用を避けたという見方がある。
判決後、遺族は危険運転罪への訴因変更を求める署名を集めている。署名はオンラインを含め7万筆を超えた。同事件では、最高裁に上告している。
数値基準が導入されることで、これまで問題とされていた曖昧さがクリアされた。いつ交通事故に巻き込まれるか分からない昨今、国民からの関心は高い。
文/並河悟志 内外タイムス編集部
