優勝の最大の壁は阪神!?

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メモリアルイヤーは連敗スタート

 球団創設90周年のメモリアルイヤー……中日ドラゴンズは連敗スタートとなった。しかし、一足先に「90周年」を迎えた2024年度の巨人と25年度の阪神は、共にリーグ優勝で飾っている。井上竜がその期待に応えるには、オープン戦終盤に露呈した「弱点」をどう克服するかがポイントとなりそうだ。

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「近年の課題だった打撃力不足は本拠地・バンテリンドームナゴヤに新設された『ホームランウイング』の恩恵で解消されたと言っていいでしょう。問題はやはり投手陣です」(名古屋在住記者)

 開幕戦は継投策に失敗した。守護神・松山晋也(25)が左脇腹痛で開幕に間に合わなかったため、井上一樹監督(54)が選んだ代理クローザーは、新加入のアブレウ(30)だった。

優勝の最大の壁は阪神!?

「開幕直前、井上監督は地元テレビ局のインタビューで『(クローザーは)アブレウで行く』と明言しました。先発ローテーションや打順などの質問では、名前の出た選手が少なかっただけに、印象的でした。自信があったのだと思います」(前出・同)

 そのアブレウが9回のマウンドに上がったが、4失点で同点に追いつかれた。延長戦に突入してサヨナラ負けとなり、アブレウも降板後にぎっくり腰を訴え、登録抹消となってしまったのだ。井上監督は根尾昂(25)を緊急昇格させたが、「代理クローザーの代理」は明言していない。松山の復帰までは日替わりになるというのが大方の予想だ。

「第2戦はドラフト2位ルーキーの櫻井頼之介(22)が先発し、7回1失点と好投したものの、勝ち星は付きませんでした。前日は先発の柳裕也(31)を含め、ベンチ入りさせた投手9人中6人が登板する事態となりましたが、第2戦に投げたのは櫻井と牧野憲伸(27)の2人。牧野は3月23日に支配下登録されたばかり。ブルペン陣を開幕カードで疲弊させなかったのはせめてもの救いです」(前出・同)

 救援陣に目が行くのにはいくつか理由がある。松山不在も大きいが、昨季、勝ちパターンで投げてきた斎藤綱記(29)、清水達也(26)もコンディション不良で出遅れている。それ以上に問題なのは、ホームランウイングの新設が中日の野球スタイルを変えてしまったことだ。

ホームランウイングの弊害

 オープン戦で興味深いデータが弾き出された。中日がオープン戦18試合で放った本塁打数は16本。総得点は77。両方とも12球団トップの数値である。

「11日のヤクルト戦で、細川成也(27)が右方向へのホームランを放ちました。オープン戦でいちばんベンチが盛り上がったホームランがその一発です。『あれで(ホームランウイングに)入るんだ』とSNSでも話題になりました」(前出・同)

 ライナー性の打球が、そのままホームランウイング席に突き刺さったといった感じだった。ホームランウイングは外野フェンス前に観客席を設けたもの。外野フェンスは従来の4.8メートルの高さから3.6メートルに変わり、右中間、左中間までの距離も116メートルから110メートルまで短くなった。扇形だった球場が菱形になり、オープン戦で対戦したチームのスタッフからは「東京ドームに似てきた」との声も聞かれた。

「ホームランが出やすくなったこと」は12球団トップの数値が証明するように、得点力を大きく高めたが、施工前から懸念されていた「失点も増える」問題も表面化してしまった。

 中日はバンテリンドームナゴヤでオープン戦9試合を行い、総失点は「36」。1試合平均4失点で、うち2試合は2ケタ失点のワンサイドでの敗戦となり、相手チームに献上した総本塁打数は「7」。打線が一度も2ケタ得点の大勝を収めていないのも気になるが、投手陣が踏ん張りきれていないとの印象は否めない。このオープン戦を経て、先発投手が序盤で失点したら、スタンドのファンもシラケてしまうだろう。ライバル球団のスタッフからは、こんな指摘も聞かれた。

「今季の中日は故障者が出ても、代わりの選手の名前がすぐに聞かれるようになりました。選手層が厚くなったのは間違いありませんが、それは井上監督の期待と共に、どれだけ我慢できるかを意味しています」

 一例が昨季、本塁打17、打点52、盗塁27のキャリアハイを記録し、レギュラーの座を掴んだ上林誠知(30)がコンディション不良で開幕メンバーから外れたこと。同時にカリステ(34)、鵜飼航丞(26)、樋口正修(27)、板山祐太郎(32)といった左翼手候補の名前が挙がり、さらに「ブライト健太(26)がファーム戦で2試合連続本塁打を放った。大島洋平(40)の調整も順調」といったニュースも飛び込んできた。

 井上監督が地元テレビ局のインタビューで打順を明言しなかったのは、上林の代役が誰に決まるかでクリーンアップの編成も変わってくるためだった。一見、嬉しい悩みにも見えるが、スンナリ代役が決まらないのは、候補者全員が決め手に欠くからである。ただ、「決め手に欠く」とは、伸びしろを含んでいることでもある。井上監督は選手が結果を出せない状況でも、我慢して起用していかなければならない。

これまでと違う野球

「前任の立浪和義監督(56)の時代は実力不足だった若手が徐々に結果を出し始め、これからは好調の持続とシーズンを乗り切る体力が求められます。あと一歩のところまで来ています」(前出・名古屋在住記者)

 結果の出ない選手をすぐに交代させれば、成長はない。かといって、チャンスは全員に与えてやりたい。今の中日は過渡期にあり、「誰かを差し置いてでも使いたい」と思わせるまでに突出した選手がまだいないのだ。「我慢のシーズンになる」と予想されるのはそのためだが、今季は球団創設90周年のメモリアルイヤーでもある。非情に徹しなければならないときも来るだろう。

 そのためにも投手陣が最少失点に抑え、一人でも多くの野手を打席に立たせてやらなければならない。キャンプ序盤の2月7日、大島宇一郎オーナー自ら足を運び、やはりホームランウイングについて触れ、「これまでとは違う野球が求められることになる」と円陣を組んだ選手たちに言い切った。

 ホームランウイングは、得点と失点の両方を激増させる“魔物”ともなりそうだ。

デイリー新潮編集部