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2021年4月に高年齢者雇用安定法が改正・施行されてから、定年を65歳や70歳までに引き上げる企業が増加しています。そのようななか「人間には、60歳を超えても成長する機会が、まだまだたくさん残されている。『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』と感じている」と語るのは、外務省主任分析官の経験を持つ作家・佐藤優さんです。そこで今回は、佐藤さんの著書『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』より一部引用・再編集し「定年後が一番楽しい」を手に入れるための方法をご紹介します。

【書影】知の巨人がたどり着いた人生の最終結論とは?佐藤優『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』

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定年後に農業を始めるのは無理

近年、「定年退職したら田舎で農業をしながら自給自足に近い生活を送りたい」、そう考える人が多くなった。移住ブームもある。

都会生活を捨てて田舎暮らしをするのも一つの選択だが、それをつつがなく実践できるのは、おそらく体が丈夫な50代までだろう。定年後の人たちには、断言しよう、無理だ。

まず、60代から田舎暮らしをするとしたら、自分の地元に行くか、あるいは既に知己がいる場所など、何かしらの土地勘や人間関係がないと厳しい。

というのも、都市の生活に慣れ親しんだ人にとって、地方には、思いのほか閉鎖的な雰囲気が感じられるからだ。その結果、住み始めてからのちにコミュニティから弾き出されたりしてしまうと、都会に逆戻りすることになりかねない。

農業についても、既に経験があるなら別だが、定年後にイチからスタートさせるには無理がある。少なくとも30代から準備していく必要があるだろう。

いずれにせよ、60代からの田舎暮らしに関しては慎重にすべき、それが私の確信である。

還暦からの仕事にこそ働く喜びが

還暦からの仕事は、意外にバリエーションがあることが分かる。就職サイトもそうだが、チラシや募集広告など、様々なツールで求人情報を集めることができる。

そこには新しい発見があるはずだ。求人情報を眺めているだけでも、現在の世の中が見えてくる。

そして、これまで社会人として長年仕事をしてきて、それでも見えなかったものが見えてくるかもしれない。自分がこれまで縁がないと思っていた仕事にも意外に適性があった、などということが分かる。

また、単純労働や肉体労働などを下に見ると、評価を誤る。たとえ得られるおカネは少額でも、体を動かしてモノを作り、何かを達成する喜びを、素直に感じることができるからだ。さらに、お客さまや地域の人たちの喜ぶ顔を見て、人と接する幸せを実感できる。定年後の人たちには、むしろ適した仕事かもしれない。

さらに、ホワイトカラーだった人で国際業務の経験者であれば、そのキャリアを利用して海外で働くこともできる。そして、意外に海外で需要があるのが、柔道や野球などの指導員、そして整体師やマッサージ師など。加えて農業指導員もある。

ちなみに、就職サイト「インディード」を使って「60歳以上、海外駐在」で検索してみると、150件を超える求人がヒットしたことがある。内訳は、輸入車買取営業、精密機器営業、人材紹介コンサルタント、自動車部品営業などだった。

海外駐在経験が必要だったり、TOEIC700点以上が求められたりするなど、それなりに条件は厳しいが、チャレンジする価値はある。

定年後の仕事は趣味や嗜好で選べる

しかし定年後のシニアは、これまでのキャリアを活かし、その延長上で働くことすらうまく行かないこともある。2024年発表の総務省の統計でも、65歳以上で仕事をしている人の75%以上が非正規雇用だという結果になっている。

ただし、仕事の内容を選ばなければ、種類も求職も数多くある。少子高齢化で労働人口が減るなか、景気の良し悪しにかかわらず、構造的な人手不足が出来(しゅったい)しているからだ。


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キャリアやスキルが必要とされない単純労働であれば、新聞広告や折り込み広告などで募集の確認ができる。私がある新聞の折り込みの求人情報をチェックしてみると、施設・公園の管理スタッフ、短期事務スタッフ、食器洗浄スタッフ、包装・梱包作業パート、工具検査スタッフまで、バラエティに富んだ仕事があった。

いずれも年齢制限は明記されておらず、高齢者に対しても門戸が開かれているようだ。当然、ネットの求人サイトにも、たくさんの求人広告が載っている。

やはりインディードを使って「アルバイト、パート」で検索すると、東京23区では、約34万件もの求人がヒットしたことがある。ガーデニングスタッフ、在宅コールスタッフ、通信高校の受付事務員、アパレル商品の荷受け・入荷軽作業員、宿泊施設の夜間管理業務、図書館巡回スタッフなどである。

定年後の人たちには、「それほどおカネを稼がなくてもいい」「好きなことや趣味を活かした仕事を楽しく続けたい」と言う人もいるだろう。趣味と実益を兼ねて幾ばくかの収入になれば、まさに一挙両得である。

そうしたことを各求人サイトで検索してみると、なかには少し変わった求人がある。たとえば「高齢者モデル」や「声優」。もし、かつて演劇をやっていたり、声に自信があったりする人ならば、モデルや声優に挑戦してみるのも面白い。

「シニアライフコンシェルジュ」といったものもある。高齢者と話をして、彼らの様々な要望を引き出す仕事だ。人と話すことが好きなら、こうした仕事も楽しいだろう。

また「家事&育児サポート」という仕事は、子を持つ親の母親、つまりおばあちゃんのようになって、依頼者の子どもを保育園に送り迎えしたりする子育てサポートから、はたまた人生相談にまでのるものだ。

こうしてみると、定年後の人たちが働き、活躍できる仕事が想像以上に多種多様であることに驚く。自分の興味のある仕事、趣味の周辺にある仕事、そして楽しみながらできる仕事があれば、もう言うことなしであろう。

このように、定年後の仕事はバラエティに富んでおり、それを趣味や嗜好、あるいは勤務地の近さで選ぶことができる。これも、定年後の人たちのアドバンテージである。

「生きがい」はシルバー人材センターで

さらに「生きがい」という観点からは、各市区町村にある「シルバー人材センター」に当たることも一考だろう。そこでは、年齢や体力に合った仕事を見つけることができるはずだ。

全国の市区町村に置かれている同センターは、高齢者が仕事を通じて生きがいを得ることと、地域社会の活性化を同時に実現しようとするもの。企業や役所、あるいは諸団体や一般家庭から依頼を受けた仕事を会員たちに紹介し、内容によって配分金を受け取るというシステムになっている。

会員は原則60歳以上。そうして会員は、同センターから請負または委託の形で仕事を引き受けて働くことになる。

通訳や翻訳といった専門的な仕事から、店番、販売員、運転手、家屋清掃、内装工事、除草、建物管理、一般事務、庭木の剪定、農業支援、そして家事援助など、多種多様な仕事がある。

配分金は、月に8日から10日働いて月額3万円から5万円……やや少なめかもしれないが、地域社会と結び付きながら、自分の興味のある仕事ができる。

いわば有償ボランティアのようなものだが、趣味と興味の延長で、楽しみながら働く喜びを実感できる。

※本稿は、『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。