「野球にもブラジル代表があるの?」日本から加入、22歳が驚いた日 両親のルーツで誓う活躍「いい広告塔に」
連載「ベースボールの現在地」ブラジル代表に加わった沢山優介
「THE ANSWER」では、5日に開幕したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に合わせて参加各国の野球を紹介する連載「ベースボールの現在地」を展開する。昨年春の予選を突破し、2013年以来の本大会出場を果たしたのが野球ブラジル代表。ヤクルトの松元ユウイチ・ヘッドコーチが監督として指揮を執るなど日本の色が濃いチームで、主力として期待されているのが社会人野球・ヤマハの22歳、沢山優介投手だ。「エンゾ・サワヤマ」として加わった代表や、大会への思いを聞いた。
沢山は浜松市生まれだが、両親がブラジルにルーツがある日系人。そのためWBCではブラジル代表資格がある。187センチという長身から、最速151キロのストレートを投げ込む左腕だ。この2年はドラフト候補としても注目されたが、プロからの指名はなかった。
ただブラジル代表では投手陣の中心だ。昨年3月に米アリゾナ州で行われた予選に参加したブラジルは、中国、コロンビア、ドイツと戦い2位で本戦切符をつかんだ。沢山はドイツとの第2戦に先発し、3回2/3を1失点、6奪三振の好投。9-7の勝利に貢献した。この予選を含め、代表入りは今回が4度目になる。
「ブラジル代表はすごく刺激的な場所です。緊張もありますが、国を背負うというのが他ではあり得ないことなので。プレッシャーはありましたよ。先発を任されて、国を背負うというのは……。でもうれしさのほうが強かった」
サッカー王国として知られるブラジルの野球は、日本とともに発展してきた歴史がある。米国から導入された野球の発展に手を貸したのが、戦前、戦後と日本から現地に渡った移民たちだった。さらに90年代以降は、ヤクルトの現地法人がベースボールアカデミーを作り、育成年代の選手の教育と、野球技術の向上に貢献した。1996年には、社会人の三菱自動車川崎でプレーしていた日系3世、玉木重雄投手がドラフト3位で広島入り。これが日系ブラジル人初のプロ野球選手だった。
日本の野球を知る選手が呼ばれる理由「文化が必要」
今大会の代表にも、日系人の名が並ぶ。西武のボー・タカハシ投手や、NPB出身者からもダニエル・ミサキ投手(元巨人)、仲尾次オスカル投手(元広島)、金伏ウーゴ投手(元ヤクルト)らの名前が。社会人の日本生命でプレーし、その後阪神の通訳を務める伊藤ヴィットル内野手は遊撃のレギュラーを張る。
それでも沢山は、ブラジルには独自の野球があると感じている。「やっぱりベースは海外の選手というか、野球だと思うんです。ただその中で野手の連携プレーとか、ピッチングもそうですけど、日本の文化も必要だと思って僕たちが呼ばれているのだと思います」。
WBCブラジル代表はかつて、日本を苦しめたこともある。2013年には予選を突破し初の本大会へ。1次リーグA組を0勝3敗で敗退したものの、日本との初戦では5回を終えて3-2とリード。8回に代打・井端弘和(現日本代表監督)の適時打などで3点を失い3-5で敗れたものの、ファンに驚きを与えた。
ブラジルの血が流れ、育ったのはサッカー王国の静岡。それでも沢山は少年時代から野球一本だった。その目に代表の存在が飛び込んできたのは、そう昔ではない。「高校の時ですかね。何かで試合の映像を見たんです。『野球にもブラジル代表があるの?』と。今回もある意味、僕がいい広告塔になれればいいと思っています」。日本とブラジルの交流には長い歴史がある。代表の成長のために、後に続く選手たちへ道を作るために。沢山は活躍を誓う。
4日(日本時間5日)にはレンジャーズとの練習試合に先発し、2回を2安打1失点。ブランドン・ニモ外野手から三振を奪い、ジェイク・バーガー内野手に本塁打を浴びるなど、一流選手との対戦も経験した。ブラジルが1次リーグで入ったプールBには、米国、メキシコをはじめイタリア、英国と大リーガーを抱える国が揃う。沢山が磨いた技術を駆使し、アッと言わせることはあるか。
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3月5日に第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開幕する。2006年に第1回が行われてから20年、過去3回優勝した日本の強さが世界に認められる一方、国際大会を通じて世界の野球の距離は着実に縮まってきている。「THE ANSWER」では大会期間中「ベースボールの現在地」と題し、選手やスタッフが“国際野球”に挑む思いを伝える。他の種目と競技人口を比較すればマイナーと言われることもある野球。ただ世界中に、このゲームを愛する人がいる。注目される数年に一度の機会だからこそ、世界の野球の今を知り、ともに未来を考えるきっかけを作る。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
