アメリカ政府の発表によると、イランへの軍事作戦をめぐり、アメリカ側の死者が2人増え、6人になったという。

【映像】イランへの“爆撃”の瞬間(実際の映像)

 ニュース番組『わたしとニュース』では、国際政治学者の三牧聖子氏と弁護士の三輪記子氏が出演し、アメリカ国内の反応や日本政府の対応について考えた。

■見えない攻撃の目的と「核の脅威」への疑念

 アメリカ側の死者が増えたことで、アメリカ国内の反応はどうなっているのか。三牧氏は次のように語った。

「そもそも軍事行動の前から賛成は2割程度で、反対が大きく上回る状況になっていた。初日にハメネイ師殺害という大きな軍事的な成功を受けて賛成は微増、しかし3割以下。そして、この米兵の犠牲を受けて反発は強まっている」

「そもそも、なぜ攻撃したのかが見えないことが最大の理由。イスラエルはイランを弱体化させたい。イスラエルにある意味引き込まれて、アメリカの明確な目的が分からない戦争に駆り出されて、さらには米兵が死んでいることにアメリカ国民もかなり衝撃を受けている状況だ」

 トランプ大統領は、イランを攻撃した理由について「イランの現政権がもたらすアメリカ国民への差し迫った脅威を除去するため。このテロ政権に核兵器を持たせないため」と主張している。この根拠について、三牧氏は疑問を呈する。

「イランの核開発計画が懸念であったことは事実。ただ、トランプ大統領やトランプ政権の閣僚が言っているように、早晩核兵器を保有するような状況にあったかどうかは、アメリカメディアでも『そうではなかった』という検証等が主流。昨年6月に1度、アメリカとイスラエルはイランの核施設を攻撃している。壊滅させられなかったにしても相当な打撃を受けていた。イランはその打撃もあったので、核開発計画をものすごく進めたということはないのに、ある意味核の脅威を強調する形で今回の軍事行動に踏み切ったのではないか」

「これに対しては、アメリカ国内からも批判が強い。この核の脅威にしても軍事行使ではなく交渉で解決すべきだった。実際に今回のアメリカとイスラエルの軍事行動は、まさにイランとアメリカが交渉を進めていて、さらに仲介国のオマーンの外務大臣が入って、イランがかなり譲歩して、交渉がまとまるかもしれないという状況の直後に起きた。このまま交渉でうまく解決できたものをなぜ軍事行動に踏み切ったのかという批判がアメリカ国民からすら出ているような状況だ」

■イラク戦争の過ちを繰り返す?岩盤支持層「MAGA」からも反発

 攻撃が始まった中、トランプ大統領はさらなる大規模攻撃も示唆している。どうすれば終わりが来るのか。三牧氏は過去の歴史を引き合いに出した。

「今回、アメリカ国民は、トランプ大統領からイランの体制転換を示唆するような言葉が出たことにも衝撃を受けている。2000年代にアメリカは、イラクに対して軍事行動に出た。大量破壊兵器を持っているとしてイラクを攻撃したところ、実際には大量破壊兵器はなかった。そこで体制転換に重点が移され、アメリカはイラク、中東にかかずらうことになったわけだ」

「今回のような斬首作戦、アメリカは圧倒的な軍事力を持っているのでトップを打倒することは比較的簡単だが、トップを取り除いた後、新しい政治体制、新しい国を作ることは本当に大変だということを2000年代の中東への介入でアメリカは学んだはずが、また同じ過ちを繰り返そうとしているのではないか。こういう懸念が、アメリカ国民の軍事作戦への不支持の1つの大きな要因になっている」

 トランプ政権を強硬に支持する層の心も離れつつあるのだろうか。

「いわゆる岩盤支持層のMAGA(Make America Great Again)は、やはり軍事行動を無党派や民主党支持者よりは強く支持しているが、その中でむしろMAGAだからこそ、この軍事行動に反対する人も出てきている。というのも、トランプ大統領はアメリカを偉大にしてくれるということで支持してきたのに、今回の軍事行動はアメリカ軍、アメリカの資源を使って、一体アメリカが何を得られるのかも分からない。結局のところ、トランプ大統領はMAGAではなく“MIGA”ではないか、つまり、イスラエルを偉大にしているのではないかとも言われている」

「イスラエルにとってはこの軍事行動はアメリカが加勢してくれて、宿敵であるイランを弱体化できて大きな利益があるが、アメリカはいつどのように終わるか分からない戦争に足を踏み込んでしまったのではないか。トランプ大統領はイスラエルにかかずらってアメリカの国益を見失っているとして、岩盤支持層のMAGAからも強烈な反発が出ている状況だ」

■高市総理の「法的評価は差し控える」発言への懸念

 こうした中、日本の立場はどうなるのか。高市早苗総理はアメリカの攻撃に関して「法的評価は差し控える」と発言している。この姿勢について、三輪氏は厳しい見方を示した。

「ある時には法的評価をするけれども、ある時には法的評価をしない。もし日本政府がそういう立場を取るのであれば、それは国内的にも国際的にも、この政府は場当たり的で信頼が得られないのではないかと懸念している。『評価を差し控える』という弁解が通用するのであれば、そもそも法の価値すら毀損するような発言なのではないかと思っている」

 三牧氏は、日本の立場についてこう分析する。「高市総理は3月に訪米を控えているので、やはりトランプ政権を刺激するようなことは言いたくないという心情は分かるところがある。しかし、アメリカが相手であれば『法的な判断は差し控える』、中国、ロシアに関しては、アメリカG7とともに法的な判断をどんどん踏み込んでいくとなると、総体として日本、アメリカG7の正当性、諸国家からの信頼が揺らぐ」。

「すでに日本だけではなく、イギリス、フランス、ドイツも同じような立場で、『イランは核開発をしていたらとんでもない』と、そしてイランの報復は批判するけれども、その報復の端緒になったアメリカとイスラエルの軍事行動は批判しない姿勢をとっている。G7はあたかもアメリカ、イスラエルの攻撃がなかったかのような態度をとっていることで、国際的な正統性がどんどん揺らいでいて、諸国家に信頼されないグループになりつつある。結局、トランプ大統領が怖いからそうした同盟国やG7は何も言えないのだと。今まで法の支配や国際秩序などいろいろ言ってきた分、信頼を失っている状況だ」

 最後に、三輪氏は「日本だけで考えても、日本みたいに圧倒的なパワーがあるわけではない国は法の支配という考え方によって守られている部分はあると思うので、そこはしっかりとしていただきたい」と締めくくった。

(『わたしとニュース』より)