阪神との強化試合の前に声出しを行った北山亘基(中央)と大谷翔平(中央右)【写真:Getty Images】

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2026 ワールドベースボールクラシック 東京プール presented by ディップ 強化試合

 今月開幕のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で連覇を目指す野球日本代表「侍ジャパン」は3日、阪神との強化試合(京セラドーム)を行った。初回に鈴木誠也外野手(カブス)が豪快な先制ソロ。ここで前日のオリックス戦から話題の“お茶ポーズ”リニューアル版がお披露目された。大谷翔平投手を交えた2日深夜の話し合いは、どんな内容だったのか。ポーズを考案した北山亘基投手(日本ハム)がその内幕を明かした。

 2日、京セラドームを離れるバスの中でも、北山の頭の中はセレブレーションをどう改良するかでいっぱいだった。1日の希望者練習の際に、本塁打や得点時にチームを盛り上げる方法を考えるよう大谷から命じられた。大先輩の指令に、スマホを駆使してスポーツ界のポーズを調べ上げた。

「漫画のポーズ、アニメのポーズだったり色々調べたんですけど、大体ありきたりだったりとか、すでに他のアスリートがやっていたりしたので、それも含めていっぱい考えて、お茶やってる人いないなと……」。世界を相手に戦う上で日本の固有文化を取り入れたかった。そのうえで出身地の京都とも縁が深い。

 最初に考えたのは、お茶の正式な作法にちなんで茶碗を2度回すポーズ。ただこれには時間がかかりすぎるという致命的な弱点があった。2日のオリックス戦では、本塁打を放った吉田正尚外野手が忘れてしまうなど、浸透したとも言い難かった。

 試合後のロッカーでは大谷から「やっぱりダメだ!」「もう一度考えてこい!」との言葉も。試合を終えてホテルに帰ると、お茶を点てるポーズではどうだろうとピンと来た。茶せんを回すポーズだけなら、時間は大幅短縮できる。アイデアを頭にホテルの食事会場へ向かうと、大谷から「ちょっと来い」とお呼びがかかった。深夜の“作戦会議”だった。

北山のテーブルにいた大谷、鈴木、村上の大リーガー軍団

 テーブルにいたのは大谷と鈴木誠也外野手(カブス)、村上宗隆内野手(ホワイトソックス)という3人の大リーガー。お茶を点てることが点を奪うこと、回すことがダイヤモンドを回ることにもつながると必死に説明した。大谷からは「せっかく考えてくれたし、これいいね!」とついにゴーサインが出た。

 一夜明けた3日の阪神戦。北山は2日続けて円陣の声出しに指名され、新たなお茶パフォーマンスの説明に追われた。試合では初回、鈴木が左翼5階席へ先制ソロ。二塁から三塁を回る際に考え抜いたポーズを披露しながら生還した。北山が重責から解放された瞬間だった。

「もうこの2、3日間寝られていないですからね。本当に、試合より緊張しました」

 ちなみに「忍者とか侍とか相撲とかめっちゃ考えたんですけど」と別案もあった。開幕前の滑り込みでチームを一つにするポーズが決まり、メンバーも全員がそろった。侍は一体感を増して、連続世界一に挑む。そして北山も一つ、心に決めていることがある。

「前に立ってセレブレーションを決めた以上は、ピッチングでも先頭に立てるくらいにしないといけないという自覚はあります。楽しいことをしに来たわけじゃないので。しっかり試合で活躍できるようにという意味でも、気が引き締まったかも」

 北山は、先発が球数制限で降板してからの第2先発の役割を期待されている。ただブルペンが手薄な現状、日本ハムでクローザーを務めた経験を生かし、勝ちパターンのリリーフで起用される可能性も否めない。期待の右腕が、大きな責任感を感じながらWBCに突入する。大谷“指令”の真の狙いは、ひょっとしたらこちらにあるのかもしれない。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)