ケンドーコバヤシ

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長男も誕生

 1月31日、芸人のケンドーコバヤシが「ケンドーコバヤシの重大発表!」(CSフジテレビONE)にて、昨年8月に一般女性と結婚していたことを発表した。また、このロケが行われた日の約4日前に第一子となる長男が誕生していたことも明かした。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 事務所を通じて発表された結婚報告の文章では「なお、結婚相手の方に関しましては一般女性ということもあり、今後私、ケンドーコバヤシが起こすであろう数多の女性問題、および数々の不貞行為を報道しないでいただけるよう、重ね重ねお願い申し上げます」などと彼らしい表現を用いていた。

ケンドーコバヤシ

 長年にわたって独身を貫いて「独身芸人」として知られていた彼が結婚したことは、今のお笑い界におけるトレンドの変化と、芸人という職業のあり方そのものの変質を象徴している。

 ケンドーコバヤシと言えば、ストレートな下ネタとサブカル的な知識を武器にした「自由人」のイメージを長く維持してきた存在だった。結婚していないこともそのキャラクターの一部になっていた。

 かつてのバラエティ番組において「独身芸人」というのは1つのポジションを確立していた。ある程度の年齢になったら誰でも結婚をするべきだ、という不文律があった時代には、女性関係の失敗談や、結婚への憧れを語る「結婚できない男」にキャラクターとしての価値があった。今田耕司、岡村隆史、ケンドーコバヤシなどはその象徴的な役割を担っていた。

 しかし、近年ではそのキャラクターが成立しにくくなっている。結婚観や家族観が多様化して、「結婚できないこと」を笑いにすること自体が時代遅れになっている感もある。結婚しない人の割合も増えていて、独身であることが特別な状態ではなくなり、笑いとして消費する必然性が薄れている。

呪縛から解放

 また、芸人が活躍する期間が長くなり、テレビに出る芸人の高齢化が進んでいることの影響もある。かつては40〜50代の中年芸人が第一線で活躍し続けるケースはほとんどなかった。しかし、最近ではそれが珍しいことではなくなった。長く仕事を続ける中で、生活や価値観が変化していくのは自然なことであり、むしろ家庭を持つことが安定した活動につながる場合も多い。

 実際、近年では錦鯉長谷川雅紀、バイきんぐの小峠英二、アンガールズの田中卓志など、独身キャラとして知られていた芸人が次々と結婚している。これは芸人という職業が「破天荒な生き方」を前提としなくなったことの表れでもある。

 また、最近のお笑い界や芸能界では、私生活を切り売りすること自体の価値も下がっている。YouTubeや配信メディアの普及によって、パーソナルな部分を積極的に露出していくタレントも存在する一方で、世の中ではプライバシー保護への意識が高まっていて、タレントの日常的な部分をあれこれ詮索すること自体がマナー違反であるという感覚も強くなった。そのため、「独身か、既婚か」という単純な属性だけではキャラクターが成立しづらくなってきた。

 今の時代の芸人たちは「笑いのために独身を貫く」という呪縛から解放された。結婚しても、子供が生まれても、芸人は芸人であり続けられる。ケンドーコバヤシの場合、「父親ケンドーコバヤシ」というキャラクターとして、これから新しい笑いを生み出していくのかもしれない。時代は変わっていくのと同じように、芸人たちの生き方もどんどん変わっているのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部