この記事をまとめると

■ひと昔前までは道路に軍手がよく落ちていた

■トラックの燃料キャップから漏れた燃料を吸わせていた軍手がその正体だ

■給油キャップが「密閉式」に変わってきているので落ちている軍手が減っている

道端に落ちている軍手は誰が落としているのか

 今回のテーマである「軍手落とし」についてだが、ひとつネタを書いておこうと思う。「軍手を落とすだけの仕事」というのを聞いたことはないだろうか?

 これはハローワークなどでたまに求人が出され、その内容が、「軍手を落とすだけでかなりの高給をもらえる」というものだ。なぜかいつの時代も、この軍手落としバイトについては、まことしやかにささやかれる都市伝説的なネタである。その証拠にネットで「軍手落とし バイト」で検索してみて欲しい。大量にこの話題が見つかるはずだ。

 さて、こうした都市伝説的な話は終わりにして本題に入ろう。

 筆者がいつも感じていたのは「最近は道端に軍手が落ちていないな」ということだ。ひと昔前なら、探さなくても道路には新しいものから黒ずんだもの、破れているものまで無数の軍手を見つけることができた。しかし最近ではほとんどその姿を見かけることがなくなったのだ。「なぜ道端に落ちている軍手が減ったのか?」その真相を筆者なりにリサーチしてみたので報告しよう。

 まず「軍手は誰が何のために落とすのか?」という疑問から解決していこう。いろいろな方面から調べたところどうやら軍手の落とし主はトラックらしいということがわかった。これは現役トラックドライバーや物流業界関係者からの証言なので、信ぴょう性は高いだろう。

 次になぜトラックが軍手を落とすのかという核心部分だが、じつはトラックの燃料タンクキャップにかぶせた軍手が何らかの原因で脱落するというのが理由らしい。ではなぜ燃料キャップに軍手をかぶせるのかという話だが、これには諸説あるためあとで説明しよう。まずは最近見かけなくなった道端の軍手を探すために大きな街道沿いを行きかうトラックの燃料タンクキャップを観察してみた。

 目の前を通り過ぎる何十台ものトラック。しかし燃料キャップに軍手をはめているトラックは1台も通らなかった。この時点で落ちている軍手を見かけなくなった原因がはっきりした。要するに燃料キャップに軍手という組み合わせ自体が減ったのだ。

 しばらくトラックを観察していたがなかなかお目当てのブツは見つかりそうもないので、場所を変えてみた。普段はあまり気にしない道の端っこを凝視しながら歩くこと30分。まったく軍手は見つからない。それらしき物体に近づくとそのほとんどはマスク。コロナ禍以来、軍手よりも大量に落ちている。これはなかなか見つからないかも……と思ったとき、ついに軍手を発見したのだ。

 落ちていた場所はメインの通りから1本裏に入ったところ。さらに近隣に陸運事務局があってトラックの往来が多いことも関係していたかもしれない。近づいてみると黒い軍手だった。目的を達成した感じはするが、やはりここは布製の白い軍手であってほしかったところだ。

そもそもなぜ給油口に軍手をはめる必要があるのか

 ここで落ちている軍手の流れと原因について振り返ってみよう。そもそも給油口に軍手をはめるのは、キャップからガソリンが滲み出ることを嫌ってのことだ。ガソリンがにじむと外観も汚いし、洗うのも手間がかかる。そのため布製の軍手をかぶせることで滲み出るガソリンを吸わせてしまおうというわけだ。

 ガソリンのにじみ出る原因はいくつかあり、満タン近くまで給油したあと、キャップのエア抜き用の穴から滲み出るケースと、給油キャップのゴムパッキンの劣化で滲み出る場合があるようだ。

 さらに、鍵付きの給油キャップの場合、滲み出たガソリンを放置しておくと、鍵穴にゴミや汚れがたまり鍵が刺さらない、鍵がまわらないという事態にもつながるのだ。そこで、給油口に軍手をかぶせることになるのだが、じつはすべてのトラックの給油キャップが同じではないことがポイントだ。

 トラックの燃料タンクは車両火災防止協定規則により、燃料漏れ防止基準(UN-R34)という基準改正が施行されており、対象車両には改正前の燃料タンクやキャップの取り付けができないのだ。また、給油キャップの基準を従来の「通気式」から「密閉式」にするという項目がある。

 そして、この適用範囲は「認可年月日が2018年9月1日以降の新型車」であり、新しいトラックが増えるごとに燃料が漏れやすい「通気式」キャップの装着率が下がった結果、軍手をかぶせる必要ないので道に落ちる数が激減したわけだ。

 とはいえ、軍手を愛用しているトラックもまだたくさんあるはずだと、高速道路の大型PAに出向いて観察してみると、予想通り何台も軍手トラックを見ることができた。

 さらにトラックパーツのなかにも「給油口カバー」なるものが存在しているくらいだから、やはりそれなりの需要はあることがわかる。このリサーチからしばらくして、ある地方の街道で完全体の落ちている軍手を発見。ダンプが行きかう道の脇に落ちていた白い軍手は、まさしく探していた光景だった。