仕事ができてキャリアが強い人に共通する特徴は何か。転職ライターの安斎響市さんは「新卒時代にお世話になった女性上司は、日系老舗企業の男性中心主義の会社の中で、破竹の勢いで出世していった。彼女は年功序列を振りかざす社内のオラオラ系管理職とは明らかに違う行動をとっていた」という――。

※本稿は、安斎響市『1%の気くばり』(大和書房)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/davidf

■人は、「自分にメリットがあること」にしか興味を示さない

気くばりできる人は「相手視点」で考え、

できない人は「自分視点」で考える

長期的な信頼を築く人間関係の基本

気くばりには、周りから評価される人になるためのエッセンスが詰まっています。

仕事には常にエンドユーザー、取引先、社内関係者などの「相手」がいます。

あらゆるビジネスは「相手」ありきだからこそ、その「相手」から求められることをやるのが基本です。

人は、本質的に「自分にとってメリットがあること」にしか興味を示しません。自分のことが最優先です。自分が聞きたい内容しか耳に入りませんし、自分が見たいものしか目に映りません。

それ以外の「求めていないもの」をいくら押し売りされても、その人の琴線(きんせん)に触れることは決してありません。

だからこそ、「相手にとってのメリット」「相手が求めているもの」をスッと提示できれば、長期的に信用され、重要視される存在になることができます。

仕事という漢字は、「仕える事」と書きます。つまり、誰かに仕えること、誰かの役に立つことをやるのが仕事の神髄だと言えます。

仕える相手は、お客様だったり、上司だったり、社長だったり、その時々によって変わるでしょう。

大事なのは、すべての仕事は「仕える相手」ありきだということです。

■ビジネスの基礎は「相手の課題を解消すること」

「働く」という言葉の語源についても、「傍(はた)をラクにする」が転じて「はた・らく」になったとする説があります。

隣にいる誰かにラクをさせてあげること、傍にいる人をラクにしてあげることこそ、「働く」という行為なのです。

言い換えれば、すべてのビジネスの基礎は「他人の課題を解消すること」だと言えます。

相手の課題を察知し、最短距離で解決へ導く。その思考と行動の結果として表れるのが気くばりです。

だからこそ、仕事上の相手に対する気くばりができているかどうかは「仕事ができるかどうか」の象徴的な指標になるのです。

■「面接50社落ち」で悟った自己アピールより大切な視点

私が、「気くばりの重要性」を認識し始めたのは、20代の頃でした。

スキルや能力があるだけではダメなのだと、痛烈に思い知らされたエピソードがあります。

当時は転職活動中でしたが、50社以上の採用試験に落ち続け、どこからも内定をもらえず絶望の日々を送っていました。

早く会社を辞めたいと思っているのに、受け入れてくれる転職先がまったく見つからず、辛くて辛くて仕方がなかったです。

学生時代に一生懸命英語を身につけ、海外留学や海外勤務の経験もあり、大手有名企業出身という強みもちゃんとあるはずなのに、転職活動ではどんなにそれをアピールしても無駄でした。

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何度面接を受けても、ただ残酷に「不採用通知」が届くだけでした。

20代で2回目の転職、しかも転職直後の短期離職という状況だったので、企業から見るとスペック面での評価よりも「勤続年数」「転職回数」というマイナス要素の方が強かったのでしょう。

自分はこの社会から必要とされていないのではないか、と感じました。

誰も私の能力を認めてはくれないんだと、悲観的になっていきました。

転職活動の過程で悩み苦しむ中で、どうしたら企業から評価してもらえるのかを必死に考えました。

■面接での高評価を得る“転職活動の極意”

その結果、面接で

「私の特技はこれです」
「これだけの実績があります」
「今後はこういう仕事をしたいです」

と自分が話したいことを中心に話すのをやめました。

その代わりに、

「御社のこういうところに惹かれました」
「御社のこの仕事に対して貢献できます」
「御社のビジネスを今後こういう風に変えていきたいです」

と、相手が聞きたいことを中心に話すようにしました。

その瞬間、面接官の私を見る目がガラッと変わりました。面接に落ちる回数は減り、徐々に選考を通過できるようになっていったのです。

転職活動では、一生懸命に自己PRをして、自分の強みや実績を認めてもらうことが重要だと、多くの人は考えます。

そうではなく、面接官に対しては「企業側が求めているもの、知りたいこと」を中心に、アピールポイントを組み立てなければならないのです。

「自分」を強引に売り込んで何とか興味を持ってもらおうと誘導するのではなく、もとから「相手」が欲しているものに着目して、それにピッタリ合わせる形で自分自身の言動や態度を変えていく。

それこそが転職活動の極意なのだと、そのとき気がつきました。言い換えれば、「ありのままの自分」をストレートに売り込むのではなく、「企業が採用したい人材」を分析してその人物になり切ることで、面接での高評価を得ることに成功したのです。

■必要とされる人材は、「相手」に意識のベクトルを向けている

やっとのことで転職は成功し、何とか新しい仕事に就くことができました。

安斎響市『1%の気くばり』(大和書房)

その後の会社員生活でも、たびたび気がつかされたことがあります。

それは、仕事ができてキャリアが強い人はみんな、自分よりも相手に意識のベクトルを向けているのだ、ということです。

たとえば、転職先の中小企業で私に仕事を教えてくれた先輩。

彼は、コアなハードロック好きで反骨精神にあふれた性格の人物でしたが、普段はそんな素振りを一切見せず、柔らかい笑顔と落ち着いた振る舞いで周りに接していました。

同僚の中には、性格に難があって付き合いづらい人もいましたが、先輩はそんな「面倒くさい人」とも丁寧に上手く付き合う術を持っていました。

その秘訣は、彼が自己主張よりも、他人の気持ちを優先して働いていたからだと思います。

振り返ってみると、新卒時代にお世話になった「仕事ができる上司」も同じ傾向があったのを思い出しました。

日系老舗企業の男性中心主義の会社の中で、破竹の勢いで出世していった女性上司。彼女は頭の回転が速く、弁が立って頼りになる人物でしたが、それ以上に、周りに対する気くばりを欠かさない人でした。

年功序列を振りかざす社内のオラオラ系管理職とは明らかに違い、常に部下のため、チームのため、会社のためを思って行動していたように思います。

彼女は最終的に、会社の歴史上初となる女性執行役員のポジションまで登り詰めました。

よく考えてみると、「仕事ができる人」たちは、みんな「相手視点」で考えてさまざまな行動を取り、常に周囲への気くばりをしていました。

チェックポイント

□「相手にとってのメリット」を提示していますか?

□「相手の課題」を察知して動いていますか?

□「相手が聞きたいこと」を中心に話していますか?

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安斎 響市(あんざい・きょういち)
転職ライター
1987年生まれ。日系大手メーカー海外営業部、外資系メーカーなどを経て、2020年より外資系大手IT企業のシニアマネージャー。「転職とキャリア」をテーマに、ブログ、Twitterなどで情報発信を続け、日経BP『日経トレンディ』、東洋経済新報社「東洋経済オンライン」、マネーフォワード「MONEY PLUS」など、多くのメディアで取り上げられている。著書に『私にも転職って、できますか?〜はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話〜』(ソーテック社)、『転職の最終兵器 未来を変える転職のための21のヒント』(かんき出版)などがある。
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(転職ライター 安斎 響市)