Oasis(写真=ⒸBig Brother Recordings)

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 Oasisの再結成が発表されたのが2024年8月27日で、日本公演がアナウンスされたのが11月22日。同日からチケットの先行受付が始まり、「取れた!」「取れない!」「何とかしてくれ!」「頼むよマジで!」といった声が渦巻きまくる。それからチケットの一般発売があってまたしても阿鼻叫喚となり、その後もリハが始まったとか、こんなグッズがあるとか、「ツアーが始まるまで安心できない。始まってもすぐ兄弟が揉めるんじゃないか」とか、様々な憶測や希望が飛び交うなか、今年の7月4日にUKウェールズのカーディフにあるプリンシパリティ・スタジアムから本当にツアー『Oasis Live '25』がスタート。瞬く間にライブの映像が世界中でシェアされ、観客がアップした動画をつなげて丸々1本のライブ映像にしてしまうツワモノまで現れたので、ツアーが始まった数日後には「なるほど、こんなライブなのか」とわかったつもりになってみたが、実際に観るまではもちろん何とも言えなくて、そのうちに現地UKで早々にライブを体験した人たちも続々と現れたりして、羨ましいやら悔しいやら。筆者は音楽ライターなので日々いろんなミュージシャンに取材しているのだが、彼ら・彼女らの多くも我々と同じで、「やっぱり観たいですよね」「行くんですか?」「チケット取れたんですか!?」「演奏すごいらしいですね」「というか、その日は自分のライブだから行けない」みたいな会話が、「それにしても暑いですよね」と同じくらいの頻度で交わされた2025年の日々を経て、10月25日・26日の2日間、ついに東京ドームのステージにOasisが現れたのだった。

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ボーカル&演奏ともに抜群のコンディションで迎えた再結成ツアー

 両日ともあいにくの天気だったのだが、開演の1時間半ほど前に東京ドームに到着すると、すでにビールを片手にしたオーディエンスたちが盛り上がっている。年齢層はビックリするほど幅広く、Oasisのデビュー時を知っているであろう我々世代の方々から、2009年の解散後にOasisを知ったであろう若者たちまでが揃いも揃って、バンドのロゴが入ったTシャツやadidasのジャージをまとったファッションで“その時”を待っている。

 1stアルバム『Definitely Maybe』(1994年)、2ndアルバム『(What's the Story) Morning Glory?』(1995年)という2作のアルバムでロック界の頂点に立ったOasis。今回の再結成ツアーのセットリストのほとんどはこの2作の楽曲で占められていて、当時をリアルタイムで経験している古参ファンも、一度も生のOasisを体験したことがない世代も「これが聴きたかった!」をほぼすべて網羅する内容となっている。1990年代~現在において、これほど幅広い層に愛されているロックバンドはOasisだけであり、2009年の解散時と比べてもむしろ現在のほうが強烈に支持されている印象だ。とはいえ、本当にリアム・ギャラガー(Vo)とノエル・ギャラガー(Gt/Vo)をこの目で見るまで安心できないというのがオールドファンの筆者であり、「Fuckin’ in the Bushes」が響き渡り、再結成時に発表されたメッセージ「The guns have fallen silent. The stars have aligned. The great wait is over.」がスクリーンに映し出され、リアムとノエルがつないだ手を高々と掲げて登場したときは、さすがに胸が熱くなった。

 そして1曲目の「Hello」、リアムが平歌、ノエルがサビを歌う唯一の楽曲「Acquiesce」が演奏された時点で、「本当だ。このバンド、凄まじいぞ」と確信した。ポイントはいくつもあるが、まずはOasis初参加となるジョーイ・ワロンカー(Dr)。ベック、Atoms For Peace、R.E.M.をはじめ、ポール・マッカートニー、ロジャー・ウォーターズといったレジェンドとも仕事を重ねてきたジョーイは、どんなジャンルにも対応できる当代きってのスキルフルなプレイヤーとして知られているが、Oasisにおいてはシンプルなリズムに徹し、手数で隙間を埋めないことで楽曲の良さを引き立てるプレイを貫いていた。抜きん出た技巧派によるエイトビートほど頼りになるものはない。

 シンプルかつタイトなビートの上で奏でられるトリプルギターもまた、現在のOasisの肝だ。ノエル、ゲム・アーチャー、そして、ポール・“ボーンヘッド”・アーサーズに代わって参加したマイク・ムーア(リアムのソロアルバムにも参加していたギタリスト)によるアンサンブルは、ヘビィなロックチューン「Bring It On Down」、サイケデリックな風合いの「Supersonic」などで威力を発揮し、原曲の良さを忠実に再現しつつ、2025年のスタジアムロックとしても完全に機能していた。ずっと爆音でありながらアンサンブルの妙もしっかりと感じ取れる音の良さも最高だ。ボーンヘッドが病気の治療のために来日できなかったのはとても残念だが(今回の再結成のキーパーソンの一人がボーンヘッドであったことはギャラガー兄弟も認めている)、彼の等身大パネルがステージに置かれていて、ノエルの後ろにいるボーンヘッドが映るたびにホッコリした気持ちになりつつ、さながら「『Mr. ビーン』のコントか」と密かに心のなかでツッコんでいた筆者であった。

 そして何よりも最強だったのはリアムのボーカルだ。冒頭の「Hello」から「Morning Glory」「Some Might Say」とアンセムだらけのセットリストだが、オープニングの第一声から状態の良さがはっきりとわかり、「やはりOasisはノエルの曲とリアムの歌なのだ」と当たり前のことを改めて実感させられた。

Oasis、怒涛の名曲ラッシュが生んだ名シーンの数々

 ノエルのボーカルによる「Talk Tonight」「Half the World Away」「Little by Little」を挟んだライブ後半の始まりは、3rdアルバム『Be Here Now』(1997年)収録曲「D’You Know What I Mean?」だったのだが、ハーフタイムを取ったせいかさらに声が出ていて、ロックボーカリストとしての圧倒的な存在感を誇示していた。ツアーが始まった頃の映像を観ると必死の形相で歌うシーンあり、“Oasisの名曲に食らいつく”という印象もあったのだが、約4カ月に渡ってUK、アイルランド、北米、韓国などを回っていくなかでフィジカルも技術も確実に上昇。全盛期と比べても見劣りしない最高のコンディションを見せつけた。ライブ序盤から「アリガトッ!」と感謝をストレートに伝え、投げキッスを振り撒き、「Stand by Me」では「Let’s sing, Tokyo!」と呼びかけていたが、ここまで積極的にコミュニケーションを取るリアムは初めて観たような気がする。

 本編ラストの「Whatever」「Live Forever」「Rock 'N' Roll Star」では、曲の良さ、演奏のすごさ、リアムのパフォーマンスを含め、Oasis史上最高峰のステージングが出現。解散前、筆者はOasisのライブに6度参加したが、今回の『Oasis Live '25』は間違いなくこれまでのキャリアハイを更新するツアーだと言っていい。特に2009年の『フジロック』(『FUJI ROCK FESTIVAL』)はバンドのテンションが明らかに低く、その直後に解散が発表されたときも「ですよね」以外の感想がなかったのだが、その16年後にこんなにも素晴らしいOasisを体験できるとは(「今回、初めてOasisのライブを観た」という皆さん、安心してください。「昔のほうがよかった」などということはまったくなく、あなたたちは史上最高のOasisを目撃したのです)。

 その最大の要因は「とにかくOasisの名曲をダイレクトに伝えるんだ」という強い意思だったのではないか。ファッキングレイトな楽曲を最高の状態で伝えれば、最高のギグになるに決まってるだろうーーというのはもちろん筆者の妄想だが、それくらい“Oasisの曲のすごさ”がダイレクトに伝わるライブだったことは名言しておきたいと思う。そして、ギャラガー兄弟の互いを称え合うハグの尊さよ!

 さて、Oasisのライブといえば観客の大合唱である。もちろん本国UKに比べれば音量は小さめだったと思うが、やはり「Don’t Look Back in Anger」では渾身のシンガロングが発生したし、十分に一体感を楽しむことができた。UK公演を観た人たちからは「観客の合唱が大きすぎて演奏が聴こえなかった」みたいな話も聴いていたが、そんなことはまったくなく、リアムの歌、バンドの演奏も全身で味わい尽くすことができた。ライブの環境としては世界一では? とさえ思ったし、日本のオーディエンスは誇っていいと思う。

 ノエルが日本語で「一緒に歌おう」と呼びかけたり、リアムがポズナン(UKのサッカーファンの定番、ピッチに背を受けて客が肩を組んで飛び跳ねるアレ)を促したり、ファンのシンガロングを兄弟が満足そうに聴き入ったり、演奏ミスに苦笑いしてノエルが「Sorry」と言ったり、見どころだらけの東京公演を終えたOasisはこの後、オーストラリア、南米へと向かい、11月23日のブラジル・サンパウロ公演で『Oasis Live '25』はエンディングを迎える。9月末のウェンブリー・スタジアム公演でリアムが「来年会おう」と発言したことも報道されているが、ぜひともまたツアーを実現させてほしい。ボーンヘッドの雄姿も観たいし、何より今回の東京公演のチケットを確保できなかったファンの方々にも今のOasisを体験してほしい。新作も出して、ツアーも当たり前にやって、「え、Oasisまた来るの?」となるくらいまでやってほしい。世界中のロックファンがそれを願っている。

(文=森朋之)