さまざまなメディアで、精力的にレシピの発信を続ける料理家の長谷川あかりさん。シンプルなのにおしゃれで、しかも滋味深い家庭料理の数々が、同世代の女性読者を中心に支持を集めています。今回は、長谷川さんにSNSで話題になっていることや、ご自身の「偏愛食材」のレシピを通じて伝えたいメッセージについて伺いました。

子役時代の経験が大きな糧になっている

――子役として芸能界で活動した時代を経て、今は料理家として活躍されている長谷川さん。X(旧Twitter)では、「料理家の長谷川あかりさんって、『天才てれびくん』に出演していた、あの長谷川あかりだったの!?」というような投稿もよく目にし、先日はご自身でも「同一人物」ですと投稿されてましたよね。長谷川さんは現在の状況をどのように受け止めていますか?

【写真】長谷川さんのレモンオムライス

長谷川あかりさん(以下、長谷川):もちろん料理家として活動を続けていれば、どこかのタイミングで「あれ? あのときの…?」と思い出していただけることもあるだろうと考えていましたし、実際、それをひとつの目標としていた面もあります。

大人になって、そして料理家になった長谷川あかりとして、子どもの頃に番組を見てくださっていた方と再会できたらうれしいなあという、そんな思いがずっと心のどこかにありました。

とはいえ、実際にSNSなどでそうした反応を目にすると、やはり驚きますし、正直少し照れくささもありますね(笑)。ただそれ以上にありがたい気持ちが大きいです。

子どもの頃にテレビ番組に出演していた経験は、「人からどう見られるか」という意識を早い段階でもつきっかけになりましたし、現在の仕事において、自分の言葉やレシピをどう伝えるか、どのように見せるかを考えるうえで、経験が大きな糧になっていると感じています。

――SNSで発信するうえでなにか気をつけていることはあるのでしょうか?

長谷川:発信する際には、「この料理はだれのために存在するものなのか」を明確にすること、そして「一方的な発信にならないようにすること」の2点をとくに意識しています。

レシピを丸ごと参考にしてくれる方もいれば、「この組み合わせ、家でも試してみたい」という気づきのヒントとしてレシピを活用してくれる方もいる。それでいいというか。

「最近、食生活がおろそかになっていたかもしれない」と振り返るきっかけになるだけでも、レシピの価値があると思うんです。私自身の考え方に共感したり、逆に違和感を覚える方もいたり…そうした多様な受け取り方が生まれる余白を残しておくことを意識していますね。自分らしさや言葉の温度感を保つことも、同じくらい大切にしています。

長谷川あかりさんの「偏愛」食材

――昨年発売された自身初のパーソナルムックは、レシピ以外の内容も盛りだくさんで”長谷川さんらしさ”がつまった内容になってますね。

長谷川:最新刊の『長谷川あかり DAILY RECIPE Vol.3』(扶桑社刊/5月29日発売)では、私の“偏愛食材”である、薬味、レモン、ハーブを使ったレシピを紹介しています。ハーブは脇役になりがちですが、私にとっては主役級の食材たち。香りを添えたり、爽やかな酸味をたしたり、料理の味わいに立体感をもたらしたり…。いつもの料理にプラスするだけで、驚くほどの奥深さが生まれます。

暑すぎて料理をするのがしんどくなりがちな季節だからこそ、これらの夏食材で楽しんでいただけたらなと思い、レシピ考案しました。

――レシピ名も薬味たっぷりの「夏鍋」、「レモンオムライス」、「ディルとキュウリの冷たいワンタン」など、いったいどんな味に仕上がるの!?  とワクワクさせられるものばかりですね。

長谷川:薬味もレモンもハーブも、「レシピのために買ったけど、残りが余ってしまいそう」「全部使いきる自信がない」という方は少なくないと思います。でも私のレシピは、大葉1枚だけとか、ミョウガ1本だけとかじゃなく、とにかくどっさり使うので、絶対に使いきれます! 

さらに、つくりおきできる「3種の薬味ミックス」や、レモンの皮を使う「レモン風呂」など、料理の手前くらいの活用法も紹介しているので、余すところなく活用していただけたらうれしいです。

疲れたときこそ、あえてひと手間をかけた料理をつくる

――SNSでも発信されている「限界丁寧」レシピも今回のムックに掲載されていると伺いました。限界丁寧というワードはすごくインパクトがありますが、この言葉に込めたメッセージを教えてください。

長谷川:「限界丁寧」は、ここ1年ほど私が提唱している概念です。限界なのに丁寧って、いったいどういうこと!? と思われるかもしれません。この特集では、心身ともにクタクタなときこそ、少しだけ手間をかけて丁寧気分を味わえるレシピを「限界丁寧料理」として紹介しています。

たとえば夜帰宅し、疲れきって料理する気力も残っていないというとき、「食べたいわけではないけれど、適当にカップ焼きそばですませる」という選択肢があると思います。

1日ならそれもいいのですが、続いてしまうと、私の場合は余計に疲れたり後悔したりすることが多くて。おなかは満たされても、気持ちが沈み、自己肯定感も低くなります。

一方で、「少しだけ気力を振り絞って、今、本当に食べたいものをさっとつくる」が限界丁寧。「自分のために、丁寧になにかをした」という行為そのものが、気分を前向きにしてくれるような気がします。

疲れてクタクタなときこそ、あえてひと手間をかけ「丁寧に生活をしているような気分」を味わうことが、気持ちを立て直すきっかけになる。料理はその手段のひとつです。

●「一皿で完結する」を心がけてつくった

――なるほど。それが、「限界丁寧 15分でできる一皿完結ごはん!」として紹介されているわけですね。どれも凝ったレシピではないのに、栄養バランスがよく、そしてワクワクするビジュアルなのが印象的です。

長谷川:「ひと皿で完結する」がテーマなので、どの料理も炭水化物、タンパク質、野菜がきちんととれる組み合わせにこだわりました。クタクタなときでもつくれるように、手順は4コマ写真を掲載しています。またレシピの色ごとに「緑:スッキリしたい」「赤:元気になりたい」「白:癒されたい」などラベルづけもしてありますよ。

パッと見てご自身のコンディションと照らし合わせて選びやすい誌面になっているので、活用してもらえたらうれしいです(とはいえ、本当に疲れているときは無理しないでくださいね!)。