白とグレーのグラデーション衣装にポニーテールで女子SPに臨んだアリサ・リウ【写真:矢口亨】

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フィギュアスケート国別対抗戦

 フィギュアスケートの国別対抗戦が17日、東京体育館で開幕。連覇を狙う米国が合計52点で首位に立った。女子ショートプログラムで75.70点の1位だった世界選手権女王アリサ・リウ(米国)は演技後の取材で、日本で経験した意外なエピソードを天真爛漫に告白。原宿で声をかけられたことをきっかけとした出会いに「彼が私を見つけてくれてよかった」と喜んだ。

 女子5番滑走でリンクに立ったリウは、演技前から笑っていた。白とグレーのグラデーション衣装にポニーテール。冒頭の3回転フリップ―3回転トウループのコンビネーションを軽やかに決めると、2回転アクセル、3回転ルッツにも着氷。スピン、ステップは全てレベル4で、坂本花織とは0.16点差の首位に立った。

「チームに追加点をもたらすのに十分なパフォーマンスができたと感じているので、素晴らしかった。今日はクリーンなプログラムができたことを本当に嬉しく思う。他の選手たちの演技を見て、みんな驚くべき演技だったし、この勢いを維持したいと思っていたので、それが実現できて本当に嬉しい」

 溢れる喜びをこう表現したリウは、ミックスゾーンで思わぬエピソードを明かしてくれた。話は東京開催だった昨年11月のグランプリ(GP)シリーズ・NHK杯までさかのぼる。

 ある日、1人で原宿を歩いていたリウは男性に声をかけられ「ヘアモデルをやってくれない?」「本当にあなたの髪をセットしたい」と提案されたという。

「私は『どういうこと?』って感じだったんだけど、彼が技術を見せてくれて、すごく上手だった。それで『1時間くらい時間ある?』って聞いてきたんだけど、20分しかなくて。ちょうどバンケットの直前で『ああ、20分でUberで戻らなきゃ』ってね」

 割引も提示され、できなかったことは「本当に悲しかった」というが、時間がなかったため断念。今回再来日となり、呼び止められた当時のことを思い出した。「うーん、髪を切って、ブリーチもやり直したい」。そんな思いがちょうど、リウの頭の中にある頃でもあった。

「それで『ねえ、11月に会った時のこと覚えてる?』って彼にメッセージを送ったの。彼も覚えていてくれて、それで昨夜全部やってもらったの。カット、ブリーチ、トリートメントで3時間くらいかかったわ。だから、私の髪はすごく良い感じよ(笑)」

男性はリウがスケーターだとは知らず「見つけてくれてよかった」

 5か月越しに実現した“ヘアモデル”の思い出を回顧し、天真爛漫に笑ったリウ。声をかけてきた男性はリウがフィギュアスケーターであることを知らなかった。もちろん、後に世界女王となるトップ選手ということも。

「普段は声をかけられないんだけど。もしかしたら彼は『ちょっと彼女の髪の毛、酷すぎるなぁ。治療してあげなきゃ』って思ったのかも(笑)。でも、彼が私を見つけてくれて良かったわ。

(髪のデザインは)樹木だと考えるのが好きなの。成長するごとに年輪ができるでしょう? 最初のグリーンは2023年の冬にやったの。2024年の国内選手権の直後に2度目の染めを入れたの。こういう風に、1年ごとに輪状に色を入れていくのよ」

 予期せぬ出会いを幸福感あふれる思い出に繋げてしまったリウは、13歳だった19年に史上最年少で全米選手権優勝。“天才少女”と期待されたが、16歳で電撃引退。名門カリフォルニア大ロサンゼルス校に進学するなど学業と重なるタイミングであったことが理由の一つだったが、今季復帰。いきなり世界選手権Vという離れ業をやってのけた。

 怒涛のシーズンも最終盤。世界選手権からは休養を優先したようで「正直に言うと、その間にフリーを滑ったのは1回ぐらいだったかも。とても疲れていて、たくさん寝たわ」と明かす。

「もしハードにトレーニングしていたら、ここで疲れすぎてしまうだろうと思ったの。だから、ここでもう少し頑張れたらと思って、すごく楽にしてきた気がする。フリーでそれが生きることを祈りましょう」と19日のフリーへ意気込む。

 チームで争うお祭りのような雰囲気もある大会。キス・アンド・クライでは米国国旗のデザインの浮き輪に腰かけるパフォーマンスも見せた。「本当に楽しい。まるでショーのようで、出場者のみんなも同じように感じている。遊び心があって、ウォーミングアップ中やプログラムの前でも、みんながお互いに顔を見合わせて、『なんてふざけたことを』って感じなの」と大いに楽しんでいる。

「みんながここで素晴らしい時間を過ごせるようにしたいわ」。ミックスゾーンに現れてからの約6分間で、女王はその場の記者にも笑顔を広げて爽やかに去って行った。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)