万博メシになった「グルテンフリーラーメン」 日本が誇るラーメンの進化系だ

「大阪・関西万博」が2025年4月13日(日)開幕する。会期は10月13日(月・祝)まで。各国のパビリオンなど見所は多いが、「食」も魅力だ。会場内の『EARTH TABLE〜未来食堂』では、創業75周年を迎えた『ケンミン食品』(本社・神戸市)が「すべての人々に美味しいラーメン」をコンセプトにしたラーメン店『GF RAMEN LAB 大阪・関西万博店』を出店する。グルテンフリーラーメンの共同開発者で、アメリカ・ボストンで行列のできるラーメン店『Tsurumen Davis』の店主・大西益央(ますお)さんの来日に合わせ、2024年12月に出店発表会&試食会が行われた。これまでの報道などでも話題になったラーメンは、どんなものかを報告する。
グルテンフリーラーメンが食の選択肢として当たり前の未来となることが願い
提供されるラーメンは計5種類ある。数量限定のプレミアムメニューは、「TSURUMEN×GF RAMEN LAB 黄金の鶏油しょうゆラーメン」、「TSURUMEN×GF RAMEN LAB 鶏清湯のすっきり柚子塩ラーメン」、「TSURUMEN×GF RAMEN LAB 鶏白湯しょうゆラーメン」(いずれも2600円)の3種類。レギュラーメニューは「GFしょうゆラーメン」(1600円)と「GFプラントベースとんこつ風ラーメン」(1800円)の2種類だ。

ケンミン食品(以下、ケンミン)の高村祐輝代表取締役社長は、今回の万博出店について、次のように話す。
「万博には、進歩や将来の展望を示すものという定義があります。今回の万博では、『未来食堂』というテーマを持ち、グルテンフリーラーメンが食の選択肢として当たり前の未来となっていくことを願って出店いたします。世界にはグルテンフリーを実践される方がたくさんおいでです。万博で食べるものがなかったという思いをされないように、私たちが受け皿となって世界中の方に安全で美味しいラーメンを召し上がっていただきたいです」
そもそもビーフンが日本で初めて紹介されたのは、1895年の台湾統治後の1903年、大阪で行われた第5回内国勧業博覧会の台湾館での食堂なのだそう。
「およそ120年の時を超えて、ビーフンを進化させたこのグルテンフリーラーメンを、同じ大阪で開催される大阪・関西万博で、日本を代表する文化であるラーメンとして提供できること、世界に羽ばたいていくことを本当にうれしく思っております」(高村社長)

アメリカ人が1時間並ぶラーメン店『Tsurumen Davis』店主とは
大西益央さんは、2007年に地元・大阪市鶴見区でラーメン店『鶴麺』を、2010年には2号店『らぁ麺Cliff』をオープン。2店舗を大阪屈指の人気店に育てた後、2014年に渡米し、ハワイ、ニューヨーク、ノースカロライナでラーメン店を開店。2018年にはボストンに拠点を移して『Tsurumen Davis』をオープン、アメリカを代表する行列店の店主だ。「GF RAMEN LAB」の初代所長も務めている。

「大阪出身者として、大阪・関西万博に出店できることは本当に喜びです。これは僕の力ではなく、ケンミンのスタッフの方々や高村社長、そして周りの方たちや初回から来てくださっている記者さんなど皆さんのおかげです」(大西さん)
50年ぶりに大阪で開かれる万博だが、親や祖父母から前回のことを聞いて育ったという大西さん。
「自分の子どもや孫に伝えられるような万博にしていきたいですね。遠い未来に、あの時はグルテンフリーラーメンって珍しいと思って食べていたけれど、今では当たり前やな、という未来を作りたいと思っています。『GF RAMEN LAB』プロジェクトを始めるとき、絶対に譲れなかった思いが、グルテンフリー対応だからと仕方なしに食べるのではなく、美味しいから食べたくなる商品を作りたいということでした。僕は料理人19年目なのですが、人ってやっぱり美味しくないといくら健康的でも食べてもらえないということを痛いほど感じています。このグルテンフリーラーメンは麺を作るだけでも2年くらい、そのあとスープが完成するまで、商品開発に4年もの時間がかかっていたことに自分でも驚きました。ただ、本当に納得できる美味しいものができた、良いタイミングでこの大阪・関西万博の出店が決まったと思っています」(大西さん)

こだわりが詰まった万博店舗
今回の万博の店舗の内装は、かまどを意味する“おくどさん”が模され、こだわりが詰まっている。もう一つ、大西さんのこだわりが丼だ。
「実は僕はラーメン屋さんでは働いたことがなく、いろいろな先輩方に教えていただいたのです。その中でもとても影響を受けたのが、『支那そばや』創業者の佐野実さんです。佐野さんからは、ラーメンは丼も本当に大切だということを教わりました。今回は、亡くなられた佐野さんの奥様・佐野しおりさんにご協力をいただき、佐野さんが開発された醤油ラーメン用、塩ラーメン用、白湯ラーメン用それぞれが一番美味しい形状の丼でご提供し、世界に発信していきたいという思いがあります。大阪万博では、ラーメンは日本を代表する、世界に誇る食文化だという気持ちで作りますが、丼も楽しんでいただけたらうれしいです」
レンゲで食べるよりも、丼に直接口をつけてスープを飲むとより広がる香りを楽しめるように考えられた器だ。

万博店の店長は『しののめヌードル』の女性店主
今回、万博店の店長に就任したのは、2022年5月に『しののめヌードル』(東京都江東区)を独立開業した梅崎梨夏(うめざき・りな)さん。学生時代のラーメン店でのアルバイト経験を通して、ラーメンが生み出す人と人との繋がりや店内の活気あふれる空間に魅了され、飲食の道へ進み、ラーメン店やフランス料理店、割烹などでの5年間のキャリアを積んだ。大西さんからのオファーを受けて10日間のみ期間限定で営業したラーメン店『Tsurumen Tokyo』の店長を務めた人物だ。
「GF RAMEN LAB」の商品化にあたり、大西さんはボストンにいたため、実際の味づくりを担った。
「このラーメンを初めて食べた時に、グルテンフリーなのにすごく美味しいというところにまず驚きました。ラーメン店をやっていると、毎日の味見や勉強で外の店に食べに行くことがあるのですが、正直なところ、私自身も少し小麦アレルギーのような部分があり、取りすぎてしまうとちょっと体に不調が現れることを感じていました」
さらに梅崎さんはこんなことを話してくれた。
「今、自分でお店を運営していても、小麦アレルギーとはまた別に、宗教上の理由や動物系の食材を召し上がれない方に動物系を抜いてご提供すると、ラーメンを食べられた喜びなのか、非常にうれしそうにしてくださるんです。そういう笑顔を目の当たりにしているので、小麦アレルギーの方やグルテンを控えたいと考えている方にとって、こんなすごいラーメンを召し上がっていただく喜びを伝えられると思っています。今回も万博で、そんな笑顔をたくさん見られたらと、本当に楽しみです」

創業200年超の酒蔵7代目が海外で感じたギャップ
ラーメン以外の楽しみも提供される予定だ。
「酒どころ・兵庫県のお酒をぜひ万博で披露していきたいと探している中で、兵庫県を代表するこだわりの、かつ貴重なお酒を揃えられている『すみの酒店』(神戸市)さんに今回の思いを伝えたところ紹介されたのが『三宅酒造』さんです」(高村さん)

1819(文政2)年創業の三宅酒造株式会社(兵庫県加西市)の7代目・三宅文佳(みやけ・あやか)さん。それまで思ってもみなかったという酒造りに取り組むようになった理由を話してくれた。
「私は家業を継ぐまで2年間、ドイツで暮らしていました。語学学校でできた友達などに実家が酒屋であることを話した時に、ベルリンの人たちから『日本酒って美味しくないよね』と率直に言われることがしばしばありました。確かにドイツで一般的に流通しているお酒を飲んでみたら、保管状況が悪く美味しくなくて悔しかったんです。実家から、日本人が日常的に楽しんでいるお酒を空輸してもらい、それを飲んでもらったら美味しいと言われたのですが、私はその時お酒にあまり詳しくなかったこともあり、そもそもワインの文化があるドイツと日本酒が持つ背景にギャップを感じました」
ブドウを育てる土壌を含めた環境を大切にするワインの文化を理解し、日本酒の説明を工夫したという三宅さん。
「自分とは異なる文化や背景を持つ人たちにも、自分たちの酒造りを説明できたら、他の日本酒も飲んでみたいというポジティブな反応が返ってくるようになりました。その時に、実家の酒蔵の価値を再認識したといいますか、私たちは200年にわたって、その地で採れた地の米と水でお酒造りをし続けてきたことに、ちょっと感動をし、ここを大事にしたいなと思い、日本に帰ってきて酒造りを始めました」
三宅酒造のお酒は、地元の水と山田錦で造られ、万博で提供されるのはまさに地元の地名・九会を冠した「クエ」(110ml、1600円)。同時に酒や日本の農業を取り巻く環境にも危機感を覚え、兵庫県立有馬農業高校の生徒たちとの米作りなどにも挑戦している三宅さん。

また今回、「GF RAMEN LAB 大阪・関西万博店」で同時にいただけるのは、兵庫県丹波篠山市で育成された「丹波黒枝豆」(600円)。毎年10月に収穫が解禁され、わずか2週間しか味わえないため希少性が高く、幻とも称されるプレミアムな黒枝豆だ。

ケンミンでは、江戸中期の1734(享保19)年創業の老舗豆類卸小売業「小田垣商店」の丹波黒枝豆を冷凍加工し、2018年から両社にて販売。枝豆の最高級ブランドとして、国内外での販売を展開している。
もちろん、ケンミンのシグニチャーメニュー(看板商品)である「GF焼ビーフン」(1200円)、「ほぼカニGF焼ビーフン」(1500円)も提供される。この2つはテイクアウトも可能だ。

グルテンフリーラーメンのお味
このグルテンフリーラーメンは、静岡県にあるケンミンの完全グルテンフリーの工場で製造。麺だけでなく、スープやチャーシューなどすべてをグルテンフリーで提供している。

プレミアムラーメンのスープは、宮崎県産の地鶏「みやざき地頭鶏(じとっこ)」の丸鷄とガラやモミジなどを贅沢に使って5時間ほど煮込んでいる。ケンミンの開発担当マーケティング部の開発課長の新田優貴さんは、
「原料の丸鷄から炊くのは初めての経験で、火加減のコントロールが難しかったです。美味しい鶏をたくさん使うので、鶏のパンチを感じていただけると思いますが、作れる杯数も限りがあります。味を作る上で、麺がつるりとしているスープとの絡みがあまり良くないので、そこは鶏油を入れて調整するなどの工夫をしています」と話す。
「TSURUMEN×GF RAMEN LAB 黄金の鶏油しょうゆラーメン」は、醤油は鶏の存在が前面に押し出されていて驚くほどの旨みだ。醤油の丼は開いていることで、醤油のカドが滑らかに感じられ、口に沿うようにできている。

「TSURUMEN×GF RAMEN LAB 鶏清湯のすっきり柚子塩ラーメン」は、力強い出汁や塩の旨みの中にゆずがふわりと香る。塩用の丼は、淵を少し丸くすることで、香りを閉じ込め、ゆずの香りが堪能できる。
「TSURUMEN×GF RAMEN LAB 鶏白湯しょうゆラーメン」は、一番だしだけでなく、余すことなく煮炊きして仕上げている。白湯は直径を狭くして深さがある丼を使うことで、その濃厚さがより楽しめるだろう。
「GFしょうゆラーメン」のスープは、利尻昆布を丁寧にひいた出汁を贅沢に使用し、奥深い味わい。「GFプラントベースとんこつ風ラーメン」は、昆布や香味野菜の旨みと豆乳のまろやかなコクを合わせ、プラントベースで深みのあるスープに仕上げている。
国産豚肉を使った煮豚のチャーシューは柔らかなロースで食べ応えがあり、旨みが楽しめるウデを使用。「GFプラントベースとんこつ風ラーメン」は、プラントベースでできた鶏肉らしい繊維感が楽しめる、食感のよい代替ミート「ライクチキン(チキン風大豆ミート)」を使用している。
ラボ(研究室)として、日々美味しいラーメンを作るべく研究を続けているケンミン。「万博会期中もどんどん麺を進化させながら、万博を盛り上げていきたいと思います!」(広報室・吉原りょうさん)と意気込む。
贅を極めた「未来のラーメン」。世界の人々のほっぺを落としまくるに違いない。
「GF RAMEN LAB」は通販で購入も可能だ。万博に行けない方もぜひ体験してみてほしい。

◎大阪・関西万博
4月13日〜10月13日に大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で開かれる国際博覧会。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。外務省によると、約160カ国・地域が参加を表明している。日本の観測隊が南極で発見した「火星の石」を一般公開する。会期中に購入できる1日入場券は大人7500円。
文・写真/市村幸妙
いちむら・ゆきえ。フリーランスのライター・編集者。地元・東京の農家さんとコミュニケーションを取ったり、手前味噌作りを友人たちと毎年共に行ったり、野菜類と発酵食品をこよなく愛する。中学受験業界にも強い雑食系。バンドの推し活も熱心にしている。落語家の夫と二人暮らし。


