ただ、英国のロンドンは住宅需要が強いですし、ドイツやオランダは学生寮を含む賃貸住宅需要が強いですね。こうした欧州の需要に対しては、オランダに欧州現地法人を置いて、各国でのプロジェクト単位で進めています。

 今後は事業領域を広げたり、M&A(企業の合併・買収)した会社をどう成長させるかを考えています。

 アジアは難しいと感じています。法律はもう少し整って欲しいと思いますし、なかなか許認可が下りてこないという現実の問題があります。

 そして最大のマーケットである中国がどう動くかも鍵です。現状について、いろいろな人に話を聞いていますが、例えば上海にしても、昔の上海ではなく厳しい状況だと言われます。その中で我々がどういう役割を果たし、中国の人達に受け入れてもらえるか。

 今マンションを2棟販売していますが、その次の物件が見えていません。この2棟の売れ行きを見て、チャンスがあれば上海周辺で手掛けていきたい。中国市場を慎重に見ていますが、お客様は我々が手掛けた建物を選んで下さっています。この流れを止めたくはないですね。

 ─ 物流施設やデータセンターの需要は引き続き旺盛ですか。

 芳井 まだまだ伸びるだろうと思っていますし、需要が強いですね。一方で、建設費が上がり、働き方改革もあってなかなか仕事が請けられない、工期が長期化しているというのが業界全体の状況です。

 その中にあって、我々が自社開発ができるという強さを、改めて実感しています。自分自身で土地を仕入れて、物流施設やデータセンターを開発していくというモデルを進めていきたいと考えています。

 また、これまでデータセンターは物流施設のチームに属していましたが、組織を分けることを考えています。自社施工ができるようになったことで、さらに強みを生かすことができると考えています。

 ─ データセンターは非常に電力を使用する施設ですね。国全体としてエネルギーをどう確保していくか、そして脱炭素をどうしていくは非常に重要な課題です。

 芳井 我々も再生可能エネルギーを手掛けていますが、データセンターで活用するとなるとなかなか難しい。その意味では再生可能エネルギーを追求するのと同時に、原子力発電の活用も必要になるのではないかと考えています。

 国として、電力需要をどうしていくかをしっかり考えていただく必要があります。このエネルギー問題は、日本の実力が試されます。オールジャパンで、いろいろな人の頭脳を結集して考えていただけるものと期待をもしています。

 ─ 戸建て住宅の木造化にも力を入れているそうですね。

 芳井 木造は基本的には分譲住宅を中心に使用しており、「Comfort Wood(コンフォートウッド)」というブランドで展開しています。

 27年度には国内の注文住宅と建売住宅を合わせて1万棟の販売を目指していますが、そのうち5割以上を木造にしたいと考えています。


同じ方向を向いていれば登り方は自由でいい

 ─ 芳井さんが社長に就任して7年が経ちましたが、嬉しかったことは何ですか。

 芳井 嬉しかったことはたくさんあります。その中でも21年12月、国土交通省近畿地方整備局から、社員が工事監督の国家資格「施工管理技士」を不正に取得していた問題で営業停止処分を受けたことがありましたが、1カ月間、営業を止めたにもかかわらず、22年3月期の決算が過去最高益でした。

 この時に、いろいろな社員から「Our Boss」というメッセージをもらったんです。「どんなことがあろうと、あなたについていく」と言ってもらえた。これには感動しました。

 ─ 芳井さんから見て、どういう社員が伸びていますか。

 芳井 努力していることが第一です。そして問題意識を持っている。現状に対して不満を抱いていない。不満から物事を見ていると、そこに理由をつくってしまうんです。質問を聞いていても、それは伝わってきます。

 ただ、みんなが同じ色に染まったら面白くありません。大和ハウス工業という石橋オーナーがつくってきた風土は、1つの方向に向いていれば、山の登り方は自由でいいというものです。

 直線的に登る人がいれば、少し回り道をする人もいる。でも、目指している方向は同じというのが、会社にとって一番いいと思っています。

 ─ 25年で70周年を迎えますね。

 芳井 節目として大阪で「大阪マルビル」を建て替えますが、記念事業でもあります。発表したところ、大阪中が驚いてくれましたが、皆さんがマルビルを支持して下さっていたんだなということが実感できて嬉しかったですね。

 大阪商工会議所さんや各自治体さんが様々なことを検討していますが、今後、マルビルから南にどんどん発展していくことを期待しています。