当時の社風は体育会系の上下関係、長時間労働、創業者の強いトップダウンによる求心力というもの。

「それを今に引き継いではブラック企業というイメージで終わってしまう。働くのは社員。社員がいかに働きやすい環境をつくっていくかが、私に課せられた使命だと考えている」

 社長として社員との距離を縮めるべく、社長室の中を見えるようにし、キャンプで使用するテントを設置。そのテントの中で社員と弁当を食べるなどして対話を進めている。

 竹内氏は長く営業の世界で揉まれてきたが、例えば大きな声を出したり、強引にことを進めるような営業手法は取ってこなかった。それは社長になっても変わっていない。

「大きな声を出したりしなくても、人は目的、目標をしっかり示せば働いてくれる。社員のエンゲージメント(満足度)を高めることができれば、ある程度実績はついてくる」という実感を持っている。

 手応えは出ている。例えば大東建託は21年度から「従業員エンゲージメント調査」を実施しているが、竹内氏が社長に就任する前は「BB」評価だったものが23年11月には評点59で「A」評価を獲得。中計では3年間で評点62という目標を掲げていたが、24年5月の調査で63.1と初年度で目標を前倒し達成した。「社員が働きやすさを実感してくれている表れだと思う」

 会社で働くことを他人事ではなく「自分事」として捉えてもらうために、社員に「譲渡制限付株式」(RS)を付与。この取得のための特別奨励金を約68億円支給した。「社員も株主になる。自分のやった仕事が評価され、株式の評価も上がる。これで自分事になってくる」

 これらの「人的資本経営の推進」は、現中計の中の柱の1つ。実は大東建託では創業以来「人はコストでなくキャピタルだ」という思想がある。「この創業者の考えを今、実現する時なのではないかと捉えている」


「逆ピラミッド」の 組織形態に


 会社の「形」も変えてきている。かつてはピラミッド型で頂点に社長が位置し、上から一気に指示が伝わるような組織だった。それを今は「逆ピラミッド」にしようとしている。「それぞれの社員が自分事で考え、意見を言うことができ、その意見が集まって会社の方針が形作られるような組織にしていきたい」

 24年元旦に発生した能登半島地震では、本社が指示を出す前に関東の支店の支店長や社員達が支援物資を集めて、自分達で車を運転して現地に運んだ。「自ら考えて行動してくれた。何も言わずとも今、何をしなければいけないか、現地の方々が何に困っているのかをきちんと捉えて取り組んでくれたことは本当に嬉しかった」

 24年3月には賃貸住宅管理戸数で2位につける大和ハウス工業と連携して、両社グループ会社が管理する約189万戸の賃貸住宅やインフラを活かして、被災した賃貸住宅のオーナーや入居者に無償で貸し出すことなどを打ち出した。これはトップ同士の関係性から生まれた取り組みだが、トップダウンとボトムアップが噛み合ってきていることがわかる。

 社員に、自分達の仕事は社会に役立つものだということを、改めて実感してもらうための仕事にも注力している。大東建託は、事業活動で消費する電力を100%自社発電の再生可能エネルギーにすることを目標とする「RE100」にも加盟しており、達成に向けて「バイオマス発電」にも参入。兵庫県朝来市で24年4月に4000万キロワットアワーの発電所を稼働させたが、これによって西日本の事業所で使用する電力を賄えるようになった。

 前述の居住者専用アプリ「ruum」の新たな役割にも気づいた。能登半島地震発生直後、入居者の中で連絡が取れない人達も多かった。その際、「ruum」が持つ、地域を限定したプッシュ配信の機能を使って発信したところ、翌日7割の入居者の安否が確認できた。

 大東建託は24年6月に50周年を迎えた。これを機に次の100年に向けたパーパス「託すをつなぎ、未来をひらく。」を策定。この策定にあたっては役員、支店長・社員それぞれでグループをつくって議論を進めたが、支店長・社員から出てきたアイデアがベースとなって完成。まさに「現場」の声を反映したものになった。これを今後、グループに浸透させていく。

 竹内氏は今、大東建託グループ全体に向けて「ワンチーム」と訴えている。「グループ一丸でワンチームとなることが大事。そのエネルギーを結集した時に出る力はすごい」

 会社の姿形を変えながら、いい部分はつないでいくー。竹内氏には絶妙なバランス感覚によるカジ取りが求められている。