櫻坂46の“らしさ”の確立、改名に揺れた一期生の10年 欅坂46時代から刻まれる歩み
櫻坂46の小池美波が2月19日にリリースされる11thシングル『UDAGAWA GENERATION』の活動をもって卒業することが発表された。
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小池は公式ブログの中で、「ここ数年で少しずつ櫻坂を少し離れた場所から見守りたいなと感じるようになりました。今はその気持ちがより強くなりました」「加入した時は16歳。今は26歳。10年も活動するなんて自分が一番思っていなかったし、それだけ夢中で、大好きだったんだなと感じます」(※1)と卒業にあたっての思いを綴っていた。この小池の卒業によって、櫻坂46から一期生全員が卒業することになる。
昨年12月に10thシングル『I want tomorrow to come』のBACKSメンバーによる単独ライブ『10th Single BACKS LIVE!!』2日目に「齋藤冬優花 卒業セレモニー」が開催(同日に上村莉菜の卒業セレモニーも行われる予定だったが、上村が怪我で休演を発表し、開催が見送りになっている)。筆者は現地で見届けたが、欅坂46時代の「手を繋いで帰ろうか」を披露し終えたあとに齋藤が「この曲を櫻坂46で、笑顔でできたことに意味があった」という言葉を口にした。この言葉を聞くことができて、少し救われた気がしたのだ。欅坂46から10年。櫻坂46は22人の一期生から物語が始まった。だが、それは自己を見出していく歴史でもあった。
乃木坂46の新プロジェクトの一環として、鳥居坂46改め欅坂46として2015年に結成される。2016年の4月にリリースされたデビュー曲「サイレントマジョリティー」は、リリース前からMVが大きな反響を集め、発売日前日にもかかわらず、再生回数300万回を突破するなど、まだデビューしていないグループとしては異例の盛り上がりを見せた。2010年代に支持を獲得していたAKB48や乃木坂46、ももいろクローバーZ、でんぱ組.incといったアイドルグループとは明確に線を引いた、低音中心のメロディ、統一感のある衣装、深いメッセージを組み込んだ歌詞など、既存のアイドルへのアンチテーゼとも言える欅坂46の存在は当時新鮮に受け取られた。その後続く2ndシングル『世界には愛しかない』、3rdシングル『二人セゾン』にも共通するが、現在も振り付けを担当している振付師のTAKAHIROによる演劇的で自由な表現手法は、櫻坂46へと続いている。
同年12月には有明コロシアムにて初のワンマンライブを開催し、年末には『第67回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)にも出場するなど、デビュー1年目としては順調すぎる滑り出しとなった。翌年も1stアルバム『真っ白なものは汚したくなる』の発売、初の野外ワンマンライブ『欅共和国2017』や『全国ツアー2017「真っ白なものは汚したくなる」』を開催し、地方へもその活動を広げていく。だが、今泉佑唯が体調不良で活動を休止、センターを務めていた平手友梨奈のパフォーマンスにも不調が見られるなど、グループが大きく揺れ動いた時期でもあった。
2018年1月に開催される予定だった日本武道館での単独ライブ3Daysは、平手の右腕の上腕三頭筋損傷により、けやき坂46(現・日向坂46)が代打を急遽任された。続いて4月に開催された『2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』は不動のセンターである平手が不在で行われ、ある意味で挑戦的なライブとなる。この頃から、パフォーマンスの中心を担っていた平手不在のライブが続くようになり、加えて同年8月には今泉も卒業し、大きく揺れた1年となった。
2019年は、デビュー3周年記念公演『3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE』、二期生による『おもてなし会』の開催、長濱ねるの卒業など、大きく潮目が変わった1年に。その中でも『欅坂46 夏の全国アリーナツアー2019』の追加公演として行われた東京ドームでのライブは、欅坂46の集大成として、今でも語り継がれる名演となった。同年末の『第70回NHK紅白歌合戦』では二度目の「不協和音」をパフォーマンス。これが欅坂46として最後の『紅白』となった。
欅坂46は、誤解を恐れずに言えば、あまりにも平手が中心のグループになっていた。これに関しては、欅坂46の確固たる世界観を構築する上では非常に重要なファクターとなっていたが、ひとりのメンバーへの過依存状態はグループとして脆いことも同時に意味している。2020年に公開された映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』には当時のメンバーたちの思いが綴られているが、当時副キャプテンだった守屋茜が「平手だから成立すると思っていて。正直(自分たちは)バックダンサーだなって感じることはあった」と思いを吐露していた場面もあった。とはいえ、『2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』で「不協和音」のセンターに立った菅井友香を始め、今泉と小林由依の“ゆいちゃんず”のWセンターによる「ガラスを割れ!」や土生瑞穂センターの「エキセントリック」など、平手の不在を感じさせるどころか一人ひとりの気概を強く感じるパフォーマンスだったように思う。一期生の営みは、欅坂46とは何なのか、そして自分たちの存在意義はどこにあるのか、そうした問いと向き合いながら、もがき苦しんできた歴史でもある。
だからこそ、小池がブログで語った「大好き」という言葉や齋藤の「この曲を櫻坂46で、笑顔でできたことに意味があった」という言葉は、彼女たちにはもちろん、当時の姿を見守っていたファンにとっても救済のように思えてならないのだ。
その後櫻坂46へ改名し、櫻坂46としては、2ndシングル『BAN』のヒットを筆頭に、2022年には『2nd YEAR ANNIVERSARY ~Buddies感謝祭~』を日本武道館にて開催、2023年からは11月にZOZOマリンスタジアムにて周年ライブを開催し、2023年には初海外公演となった『Japan Expo』を皮切りに、海外進出も顕著になっている。さらには、改名からの流れを知る二期生、2023年には三期生も加入し、今やグループの主力として欠かせない存在へと成長した。
『EX 大衆』2023年7月号(双葉社)の中で、2024年に卒業した小林由依は「櫻坂46になったばかりの頃はまだ動揺もあって。欅坂46のやり方しか知らないので、櫻坂46としての活動に『なんか違うな』と思うこともありました。そんなことを一期生同士で話すと、それぞれが欅坂46としてのアイデンティティや誇りを大切にしながら、櫻坂46としての道を考えていたので、みんなの存在が支えになりました」と同期への信頼を明かしていた。一期生は欅坂46時代から積み上げてきた歴史を肯定し、その上で櫻坂46へと受け継いできた。一期生の思いの継承、櫻坂46の現在地は昨年11月に開催された『4th YEAR ANNIVERSARY LIVE』にも刻まれており、二期生や三期生のたくましいパフォーマンス、そして4周年という節目を迎えられたのも、一期生がいてこそ。彼女たちが長い間かけて植えてきた芽が、こうして花開いた瞬間だった。
自己の模索に揺れた欅坂46時代、そして後輩への継承という重要なタームを遂行した櫻坂46時代。この10年の歴史の中心には必ず櫻坂46の一期生がいた。この先5年、10年と一期生の歩みは刻まれていく。
※1:https://sakurazaka46.com/s/s46/diary/detail/58663
(文=川崎龍也)

