〈北九州ヤンチャ成人式ルポ〉市長もド派手袴で参上!「誰かの価値観を否定しない街に」コロナ5類移行後、初の式典開催にキメキメ衣装で集う新成人たち【写真多数】

毎年ド派手な衣装が話題になる北九州の成人式〈北九州市二十歳の記念式典〉。今年も、1月7日に小倉北区のメディアドームで行われた式典後、ドーム前の芝生広場に北九州市長の武内和久氏が登場するなど大いに盛り上がりを見せた。ニッポンの元気な成人たちの姿をリポートする。

テレビで見ていた袴の集団に会えてうれしい(笑)

コロナ5類移行後の初の再開催となった北九州市の成人式。昨年はマスク姿の参加者が多かったが、今年はほとんど見当たらなかった。式典が始まる1時間半前の朝10時には多くの新成人たちが会場前に集い始めた。

銀の袴で決めた、北九州市立・曽根中学校の卒業生たち。

「成人サイコー! アリガトー!」

強面だが、こちらが話しかけると快く取材に応じてくれた八幡出身の新成人たち。「一番大切なものは友達です。これからどんなことがあっても今日一緒に参加した友達のことを大切にしていきます。あと直方サイコーっす!」

2003~2004年生まれの新成人たちはちょうど高校生のころ、新型コロナウィルスの第一波を経験した世代だ。看護学校に通っているという女性二人は、

「高校2年生までは友達の顔をちゃんとみたことがありませんでした。3年の途中でマスクなしが解禁になったときはうれしかったですね。こんなにマスクなしで人が集まっているイベントも新鮮です。あと、毎年テレビで見てたような袴の集団を間近で見ることができたのもうれしい。私たちには真似できませんが(笑)」

2023年の10月に行われた、極真空手第13回全世界空手道選手権大会で世界2位に輝いたという網川来夢(らむ)さん。年明けすぐに東京へ出稽古にいき、式典に参加するために帰ってきたという。「夢はもちろん世界1位になることです! 応援してください」(空手家・網川来夢さん)。

旗まで完璧にコーディネートされた北九州市立・永犬丸中学校出身の新成人たち。「深夜から着付けしてもらっていて、もう10時間くらい着てるので、正直きちぃっす(笑)」

白の袴で揃えた新成人たちは中学校のころから仲良しだったそう。今日参加できなかった友達も一緒にと、中学生時代の写真をラベルに貼り付けたドンペリを片手に。

渡している本人たちもいつから始まった慣習なのか把握していなかったが、贈り物として花束を持参する新成人の関係者(友人・後輩など)が近年増えているという。昨年成人したという21歳の男性が取材に応じてくれた。

「去年彼女からお花をもらったので今年は自分が渡しに来ました」(大学生)

混雑する会場の中、彼女を探し出し、花束を渡す瞬間をカメラに抑えさせてもらった。

今年もお幸せに!

誰かの価値観を否定しない街に

そもそも北九州市の新成人たちが身にまとうド派手な袴は、すべて「貸衣装みやび」という衣装屋がまかなっている。みやびは昨年、このド派手な衣装はひっさげて、招かれたNYコレクションでショーを行い、喝采を浴びたことは記憶に新しい。そのニュースを北九州市議会で話題にした武内和久市長が式典後にみやびの袴を羽織って報道陣の前に現れた。

「北九州市の若い人たちがコツコツ積み上げてきた、ド派手な袴という文化が世界に認められたのは素晴らしいことだと思います。誰かの価値観を否定しない街にしていきたいと考えており、この成人式はまさにその象徴だと思っています。もちろん袴だけが素晴らしいと言っている訳ではありませんが、ひとつの表現として、否定するのではなく応援していきたい。北九州市の若者たちの、多様性やエネルギーを大切にしていきたいです」(北九州市長・武内和久氏)

この日はとにかく人気ものだった市長、会場に散らばっていたマスコミが一気に集結するほど盛り上がりのみせていた。成人した娘を見守りにきていた母親も「市長は顔もイケメンだし、こうやって出てきてくれるのはとてもいいことですよね。若者が政治に関心を持つきっかけにもなるのでは」と好反応だった。

新成人として式典に参加した2022年度のボクシング全日本フェザー級新人王の岡本恭佑選手(九州国際大学)と2ショットも。

「世界にいきます。マスコミの皆さん、俺のこと撮っておいて損はないですよ。必ず世界にいきますので市長も応援よろしくです!」(プロボクサー・岡本恭佑)

2014年から成人式の警備にあたっているというガーディアン・エンジェルスの池田代表にも話を聞いた。

「コロナ禍になる前は、お酒を飲んで喧嘩してそのまま警察に連れていかれるという事案もあったのですが、近年はほとんどありませんね。目立ったトラブルといえば、去年墨汁の事件(新成人の振り袖に墨汁がかけられた事件、犯人は逮捕されている)があったくらいです。若者の自己表現の場がSNSに移っているからじゃないかなと思います。人と喧嘩して目立つことより映える写真で目立つみたいな。おめでたい場ですし、みんな元々いい子ばかりですし、今年もトラブルなく終わることを願っています」(ガーディアン・エンジェルス・池田氏)

例年より目立ったのが女性のド派手な袴姿だ。式典の終わりがけに、付き合って半年のカップルにも話を聞くことができた。

「付き合って半年です、チューは恥ずかしかった(笑)」(カップル)

100万円かかったという龍の振袖をまとった女性のように、ド派手な袴姿の新成人ももちろん参加していたが、華麗な振袖やスーツの新成人もランウェイに登場し、会場を盛り上げた。イベントのコンセプト、「令和の北九州成人式はアートである」の言葉のとおり、ここまで多様な新成人が集う式典は世界でも珍しいだろう。

今年はコロナ禍のあとということもあり、例年よりも取材に詰めかけた報道陣が多かった。そして2024年はパリコレからも招待されているという、貸衣装みやび。海外で評価されていけばいくほど、さらなる多くのメディアが注目する式典になっていくに違いない。

よくあるヤンチャな成人式のひとつではなく、市長が話したように「多様性を認め合う成人式」の象徴になることを願うばかりだ。

改めて二十歳の皆さま、おめでとうございます。皆様のご活躍を心よりお祈りしております。

取材・文/集英社オンライン特集班

撮影/篠原祐介