ベッドで「やめてほしい」と拒否された妻の孤独:セックスレス・静香さんの場合2
日本では6割の夫婦が陥ると言われるセックスレス。激務の夫がうつ病を発症してしまい、セックスレスに陥った40代主婦を取材しました。不妊治療の土俵に上がることもできず「もう諦め状態ですね」と肩を落とす静香さん(仮名)。夫婦生活がなくなってしまった現在の心境を語ってくださいました。
普通の会話すらできない…。うつ病の夫との夫婦生活
前回は、会社の激しいノルマと24時間の顧客対応に追われて、30代後半で結婚してすぐに夫がうつ病にかかってしまったお話をしました。
私たち夫婦は、結婚早々に完全セックスレス生活に突入。結局、欲しいと願っていた子どもを授かるどころか、不妊治療を始めるための話し合いもできず、年月が過ぎていきました。
●「やめてほしい」と拒否されて、さみしい気持ちがこみ上げる
夫がうつ病になる前までは、休みの日に自然な流れでセックスができたこともあったのですが、うつ病になってしまった後は、触れ合い自体が消失。食事やお風呂などの日常生活すら難しい様子の夫に、甘えることもできませんでした。

たまに夫の布団にもぐりこんでみたりもしたのですが、「やめてほしい」とハッキリと拒否されてしまいました。病気だから仕方ないとわかってはいても、さみしい気持ちがこみ上げてくることがあります。
それでも通院しながらお薬を飲んでいくうちに少しずつよくなって、「そろそろこの病気から卒業できそうかな」なんて言いながら通院の頻度を減らそうとすると、またガツンと悪くなって…そんなことの繰り返し。
出口の見えないトンネルの中にいるような日々に、だんだん私のほうも気持ちが沈んでしまうように。
●つらい気持ちや悩みを分かち合える人がいない
本来なら、自分の気持ちをいちばん理解してくれる人だったはずの夫。しかし夫が病気になってしまってからの苦労や、レスになったつらさや悩みはだれにも話せず。今になって思えば、この孤独な状態がけっこうキツかったです。
夫は休職中で家にいるからといっても、家事をやってくれるわけではありません。私が仕事でへとへとになって帰ってきても、夫はビールを飲んでテレビを見ていたりするわけです。それでも怒ったりしてはいけないのだと頭ではわかっていても、ぶつけようのない感情が爆発してしまいそうなときが何度かありました。

一度だけ、風水に詳しい人と仕事でご一緒したときに、ちらっと世間話のなかで「夫が心の問題があって、会社に行けなくて家で休んでいるんです」と話したら、すぐにアドバイスをくれました。
「今はそういう時期だったんですよ。がむしゃらに働き続けたら、心だけではなく体も壊してしまっていたかもしれない。ここで休まなかったらもっと落ちるところだったから、今は休んで正解でしたよ」と言われて、ホッとしました。
初めて自分が夫のことをよその人に話せたのがこのときでした。ひとりぼっちでずっと背負い続けてきた荷物が、少しだけ軽くなった気がしました。
レスのまま、夫も私も年を取りすぎてしまった‥
夫がうつになってから、7年が過ぎようとしています。現在、夫は会社へ行けるまでに回復しました。違う部署へと異動になり、薬や通院は続いています。
休日は私のことを車で駅まで送迎してくれたり、最近飼い始めた犬の散歩へ出かけたりなど、普通のおだやかな暮らしを取り戻すことができました。
でも私は40代、夫は50代になってしまい、もはや不妊治療はあきらめたというか、今、子どもができても困るよねという年齢に達してしまって。結婚当初、思い描いていた家族像とは少し違う人生を歩いています。
●いつかまた愛し合える日を気長に待つ妻

夫婦生活の中にセックスはないけれど、肩が凝ったといえば夫がマッサージをしてくれたり、逆に夫も腰痛や五十肩であちこち痛いというので、私が湿布薬を貼ってあげたり。日常生活の中の中のスキンシップが年齢とともに増えていきました。
キスやハグもグイグイくるわけじゃないけれど、寝る時間が一緒だった日は、軽く触れ合うことも。私としては、月に1度くらいはそういう日が欲しいなと思うけれど、いまだに夫とレスについての話し合いはできないまま。
それより最近はこの先、夫婦でどう楽しく生きていくかという方へシフト。私は幸い仕事が順調なので、そっちにも力を入れていきたいし、夫とは、またいつか元のような夫婦生活に戻れる日が来るといいなと。あくまでも体調優先で待ち続けるしかないのが実情です。

結婚したばかりの頃は、夢にも思っていなかったレスの問題。「まさか自分が」という気持ちがあるかもしれませんが、これから結婚する予定がある人は、子どもの計画とか不妊治療のこと、話し合えるうちに話し合っておいた方がいいと思います。
パートナーが心の病にかかってしまうと、当たり前のことすら話し合えなくなりますから…。
