『ガメラ3 邪神覚醒』が孕んだ『エヴァ』と共鳴する世紀末の空気【日曜アニメ劇場】
怪獣特撮映画のリアルを追求した〈平成ガメラ〉の到達点とも言うべき本作には、20世紀末の日本の ”空気” も濃厚に記録されている。
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第1作『ガメラ 大怪獣空中決戦』、第2作『ガメラ2 レギオン襲来』同様に、監督・金子修介+脚本・伊藤和典+特技監督・樋口真嗣のメインスタッフ陣が手がけた本作は、前2作で描かれた出来事と深く関連したストーリーが描かれ、これまでに登場した主要人物たちも再登場するシリーズ完結編である。
ハードなSFタッチで迫った前作から一転、さらなる怪獣映画の革新を目指した本作はさらなるリアリティを追求、遂には ”怪獣の襲撃で犠牲になる大量な一般市民” の描写にまで踏み込み、前2作以上にシビアでシリアスな作品に仕上がっている。
かつてギャオスを発見した鳥類学者・長峰真弓(中山忍)は、災禍を食い止めるためその生態研究を進めていたが、謎は深まるばかりだった。
一方、ガメラとギャオスの戦いで両親を失った中学生・比良坂綾奈(前田愛)は、その心の傷を癒やすことができないままガメラに激しい憎悪を抱き、周囲の人々にも心を閉ざしていた。
ある日、綾奈は人々から忌避される〈杜の沢〉の祠で奇妙な卵状の物体を発見する。そこから誕生した不思議な生物を綾奈は ”イリス” と名付け、密かに育て始める。いつかイリスが、両親の仇・ガメラを倒してくれることを願いながら――。
一方、東京・渋谷で発生したガメラとギャオスの大激闘が引き起こしたを惨事をきっかけに、政府や世論はギャオス以上にガメラを危険視するようになる。かつてガメラと心を通わせた少女・草薙浅黄(藤谷文子)は、政府の「巨大生物被害対策審議会」に招集された長峰の元を訪れ、ギャオスの大量発生はガメラとレギオンの戦いで自然界のバランスが崩れた結果かもしれない、と語る。
長峰、浅黄、そして元刑事の大迫(蛍雪次郎)は、共にギャオスの変異体らしき怪生物が現れた奈良の小さな村に向かう。しかし、一行が到着すると村はほぼ全滅状態、体液を吸い出された不気味な死骸が散乱していた。
そこは、親戚に引き取られた綾奈が暮らしていた村だった……。

(C)KADOKAWA 徳間書店 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ 日販/1999
まず大きな衝撃を受けるのは、映画序盤で描かれる渋谷のカタストロフィ場面だ。
ガメラとギャオスの戦いに巻き込まれ、逃げ惑い、焼かれ、押しつぶされる多数の人々。その描写は情け容赦なく、目を背けたくなるほど凄惨だ。巨大な怪獣が街中で暴れたらどうなるのか? まさしく災害としてのリアルを徹底的に突き詰めた、究極の映像がここにある。
さらに映画の終盤を飾る、京都駅を舞台にガメラとイリスが激闘を繰り広げるクライマックスも必見だ。
緻密なミニチュアワークで作り上げられた京都駅、しかも1997年に完成したばかりの新駅舎(京都駅ビル)が二大怪獣に無惨にも破壊されていく様子には、特撮映画ならではの圧倒的なカタルシスとともに身近な恐怖をも感じられるはずだ。
怪獣映画としての見どころが強化される一方、本作ではシリーズのSF・疑似歴史的な物語の背景もさらに深められている。ガメラとギャオスの密接な関係、イリスと綾奈の間で結ばれた精神世界的な描写、人類の文明からさらに遡る超歴史な視点も導入されたことで、本作は全体を通してミステリアスな雰囲気をまとっている。
徹底的にこだわりぬいた映像演出、神話的な語り口――そうした特徴から本作が公開時に『新世紀エヴァンゲリオン』の ”兄弟作” 的な受け取り方をされていたことを覚えている方も多いのではないだろうか。
生物と人工物の中間的質感を持つイリスの存在感は『エヴァンゲリオン』の使徒のようでもあり、綾奈のキャラクターもどことなく綾波レイを彷彿させる。樋口真嗣特技監督が『エヴァンゲリオン』にスタッフとして参加していること、また特撮現場サイドから見た本作のメイキングドキュメンタリー『GAMERA1999』で庵野秀明が総監督を務めているなど、裏側から見た〈平成ガメラ〉と〈エヴァ〉の関係が密接であることを理解できるかもしれない。
だが、そうした側面を差し引いても、『ガメラ3』と『エヴァンゲリオン』には共通するものを感じさせる部分が確かにある。謎に満ちた世界観、圧倒的な映像、日常と非日常の混在、どこか厭世的な視点、そしてナイーブな心理描写――両作品には20世紀末の日本に漂っていた、何か不安定で不穏な空気がそのまま満たされているように感じられるのだ。
今回の放送を観る際には、作品全体に漂うそんなムードにもぜひ注目してほしい。
怪獣映画というジャンルに新風を送り、特撮ファンに永遠に愛され続ける〈平成ガメラ〉三部作。そのラストを締めくくる衝撃の問題作をお見逃しなく。

(C)KADOKAWA 徳間書店 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ 日販/1999
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