三笘薫(撮影:岸本勉/PICSPORT)

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25日、日本代表の三笘薫がドイツ戦でなぜ強引に突破しなかったかという理由を語った。

ドイツ戦の57分、長友佑都に代わって投入された三笘はそのままウイングバックの位置に入った。2021-22シーズンに所属したベルギーのユニオン・サン=ジロワーズで務めていたポジションに三笘はすんなりと収まり、攻撃だけではなく守備でも存在感を見せる。

だが三笘の持ち味はもちろん攻撃のときのドリブル。そしてその切れ味の鋭さはドイツも分析済みで、三笘がボールを持つとすかさずダブルマークで突破口を塞ぎにいった。

いつもの三笘ならそれでも強引に仕掛け、そして網を破ってゴールを生み出す動きを見せる。イングランドのブライトンでも左サイドで相手にとって鎖を付けられないプレーを見せてきたのだ。

ドイツ戦の75分、三笘はいつものように2人を引き連れてやや中央に入り込もうとする動きを見せた。いつもならここから強引に突破したりシュートという場面だっただろう。だが三笘は待ち構えるDFをあざ笑うかのように走り込んだ南野拓実にパス。南野のシュートをマヌエル・ノイアーが弾くと、そのボールを堂安律が押し込んで日本が同点に追いついた。

そのプレーの前後でも三笘は伝家の宝刀であるドリブル突破を見せなかった。それはなぜだったのか。

三笘は自分が投入されたとき、ドイツの選手が「僕に指を差して何か指示を出してる」のを見たという。そして「途中からアクセントを加えられる選手がいるのは理解されてた」と感じ、相手を「メンタル的にも追い込んでいたんじゃないか」と分析した。

その警戒心を見事逆手にとって先制点を演出した。だが憧れてきた世界の舞台、しかも相手がドイツという強豪国なら、一度は自分の力を見せつけたり試すようなプレーをしてもよかったのではないか。

「自分本位になってるときほどいいプレーが出せない、チームがうまく回らないのは自分の経験上ありました。(その気持ちを)うまく抑えながら、チームとしてどうやって攻めていくかを考えた上での判断だった」と三笘は言う。

そして自分に与えられたウイングバックというポジションは攻撃だけではなく守備も重視される。「ウイングバックがどんどんドリブルして、ボールロストしても危険ですし、そういう普通の判断はできたんじゃないかと思ってます」と雰囲気に呑まれなかったことも語る。

その冷静な判断のおかげで、三笘の本当の武器がその威力をまだ世界に知られずにすんだとも言えるだろう。だがコスタリカ戦では、ついにベールを脱ぐときが来るかもしれない。


【文:森雅史@ドーハ/日本蹴球合同会社 撮影:岸本勉/PICSPORT】