(写真:アフロ)

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東京都は尖閣諸島を買います。買うことにしました。日本人が日本の国土を守るために島を取得するのは何か文句ありますか。ないでしょう」

2月1日に亡くなった石原慎太郎さん(享年89)。冒頭の発言は’12年4月、東京都知事時代に語ったものだ。

「日本は1895年1月に尖閣諸島を自国の領土とする閣議決定をし、同地を沖縄県に編入しました。第二次世界大戦後に沖縄県は米国の施政下となったものの、1971年の沖縄返還と同じタイミングで尖閣諸島も返還されました。

いっぽう中国は、“尖閣諸島は1895年4月の下関条約で日本に割譲されたもの”という認識。明・清の時代から中国か゛台湾の付属島嶼として支配していたとし、1971年に領有権を主張しました」(全国紙記者)

そこで、石原さんは都として“尖閣諸島を購入する”との方針を示すことに。さらに都が公式サイトで寄付を呼び掛けたところ、全国から14億8,000万円もの大金が集まったのだ。

「しかし石原さんの発言の後、’12年9月に国が買い取ったことで尖閣諸島は国有化されました。その翌月には石原さんが『国会議員になって拠金を監督していきたい』などの理由で知事を辞職。そのため寄付金だけが残りました」(前出・全国紙記者)

集まった14億8,000万円のうち8,000万円は、’12年9月に行われた現地調査などに充てられている。そして’13年3月、東京都は残りの14億円を基金にする条例案を都議会で成立させた。しかし以降、具体的な使い道は伝えられていない。そして’17年9月には寄付金について「活用実績なく返還要求160件」と『毎日新聞』が報じている。

また’18年8月には小池百合子都知事(69)が「人工衛星による監視システムを作ることなどに使うことが、心を寄せた方々に応えることになる。政府と相談しなければならないが、せっかくの思いに応えるという方向性を持たせていくことも必要だ」と語っている。しかし、人工衛星についてその後の進捗は伝えられていない。

■基金の使い道は、あくまでも国が決めること

寄付の呼びかけから早10年。“塩漬け”との指摘もある基金だが、その使途について進展はあるのだろうか? そこで東京都に取材すると、担当者はこう語った。

「基金は条例で“国による活用のために”と定められています。そこで毎年、都は基金の使い道について国に提案要求をし、協議を行なっているんです。直近では昨年11月に行われています」

確かに『東京都尖閣諸島寄附金による尖閣諸島活用基金条例』第一条には「東京都尖閣諸島寄附金として寄せられた都民等の意思を受け、国による尖閣諸島の活用に関する取組のための資金とするため」とある。

そして提案要求については、東京都の公式サイトで確認することができる。しかし、その内容は毎年大きな変化が見られない。協議はこう着状態なのだろうか。

「国から具体的に何か提示されているわけではありませんが……。世界情勢も関係しているのでしょう。ただ尖閣諸島には、船だまりや灯台の設置が必要といわれています。都の役割は“集めた目的に沿って活用するよう、引き続き国に要求すること”だと考えています」

基金の使い道は、あくまでも国が決めること。しかし国から具体策は提示されておらず、都は提案要求を続けるしかない。そのため基金は、長らく“塩漬け状態”となっているようだ。

では、小池都知事のいう人工衛星はどうなるのだろうか?

「人工衛星に関する発言があったことも承知しています。ただ条例で“基金は国による活用”と定められています」

石原さんが呼びかけた寄付金は一体何に使われるのか、今後も注視していきたい。