21日、鹿島アントラーズ対コンサドーレ札幌の練習試合が行われ、その模様をDAZNが中継した。前半を1-2で折り返した札幌が、後半3点を奪って逆転するというこの試合で、最も目を奪われたのは終了間際、鈴木武蔵が見せたプレーだった。正面やや左からドリブルで相手DFに仕掛けていき、またぎフェイントを入れ、タイミングを探りながら放った豪快なシュートだ。わずかに外れゴールは決まらなかったが、アクションとしては上々で、FWとして一皮剥けたような印象を抱かせた。

 しかし、映像を通して一般に公開された試合は、いまのところこの試合だけだ。スタンドで、お茶の間で、これほど長く、ライブで試合を観戦できない状態が続いたことはあっただろうか。欧州とJリーグはシーズンが異なるので、欧州がシーズンオフの時(6月〜7月)も、Jリーグは開催中で、サッカーは年間を通して観戦可能な状態にあるものとされていた。

 それがいま、世界のサッカーは、2週間近く前から停止した状態が続いている。試合やプレーのニュースは更新されていない。

 無観客試合は少なくともニュースとして報じられる。大相撲、競馬、プロ野球のオープン戦。鹿島対札幌戦しかりだ。鈴木武蔵の進歩について語ることができる。だが、中止や延期となると語るべき材料がなくなる。溢れかえっていたものが、パタッとなくなった状態にいま直面しているわけだ。

 最後の大きなニュースは、アトレティコがリバプールを倒したチャンピオンズリーグ1回戦の戦い(3月11日)になるが、これも実際より、だいぶ時間が経過したように感じる。横浜F・マリノスがガンバ大阪に、鹿島がサンフレッチェ広島に敗れたJリーグ開幕週の戦い(2月21日〜23日)も、印象は薄れつつある。

 今年1月に開催され、日本がグループリーグでまさかの敗退を喫したU-23アジア選手権(タイ)。その前月(2018年12月)、韓国に敗れたE1選手権(韓国・釜山)はどうだろうか。

 日本代表や東京五輪を目指すU-22にまつわる問題、すなわち森保一監督の続投是非論は、論じられていない状態だ。いまのこの世の中を考えれば、言い出しにくい類の話であることは承知するが、起きた問題を忘れてしまうスピードまで速まっていると感じるのは筆者だけだろうか。

 新しいニュースを無意識に欲しがり、進行中の問題を過去のものにしたがる気質が芽生えているように感じる。いい意味でしつこい人、しぶとい人、悪い意味であっさりした人が増えている。そんな気がしてならない。

 しかしサッカー界は、いま全世界的に中断中だ。サッカーファンが新しい試合関連のニュースを得ることはできない。過去の出来事と向き合うしか選択肢はなくなる。

 そこで日本代表の話題に転じれば、その過去を振り返った時、こちらも、しつこさ、しぶとさを大舞台で発揮したことがないことに気付かされる。強豪相手にしぶとく引き分けた試合、劣勢の試合をひっくり返した試合だ。 

 リバプール対アトレティコを見て思ったことだが、第2戦でアトレティコが1-0を1-1とされたとき、あるいは延長戦に入り、1-1を1-2とされたとき、日本なら堪えきれず、ずるずると行っていたに違いない。土俵際でしぶとく残る二枚腰、三枚腰の粘りと言うものを、日本代表が発揮した過去は少ない。

 格下との対戦が多いからだ。アジアの戦いは8割方これになる。親善試合も9割方ホーム戦だ。強豪国がそれなりのメンバーで来日することは滅多にない。下馬評で日本が上回る場合がほとんどを占める。 受けて立つことに慣れているのだ。大本命のリバプールに向かうアトレティコのような立ち位置、設定で戦う機会は少ない。