7月4日、元AKB劇場支配人、現AKBカスタマーセンター長戸賀崎智信氏がTwitterにて、8月をもって契約解除となったことを知らせるツイートを投下した。

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 劇場支配人として、何度かメディアにも登場し、AKBの重大なサプライズ発表のときにはタキシードで発表するスタイルは、そして「とがブロ」(戸賀崎氏のブログ)の愛情あふれる、あるいは生々しい問題指摘での波紋は、オールドファンにとっては懐かしいものだが、現在配置換えによりカスタマーセンター長になってからは、完全に裏へまわり、ときおり思い出したように更新するだけの状態だった。

 先日には会社を退社したことを伝えており、フリーランスでセンター長は続けると思われたが、それもなくなったということらしい。

 まあ、新規のファンにとっては馴染みは薄く、オールドファンの多くがAKBから離れた今、現状大きな変化があるというわけではないだろうが、戸賀崎氏がAKBから離れるというのは、ある意味象徴的な出来事であり、AKBが完全に変質したことを示す事象だと記者は考えている。

 AKBの売りは「素人」であったこと。

 芸能プロダクションに所属していない、ただ芸能界に入りたいという夢を持つ少女たちが、劇場でその成長過程を見せて、個々の夢を掴んでいくというものだった。

 おニャン子クラブでの失敗要因……芸能事務所所属メンバーと素人メンバーを一緒にしたことで生まれたメンバー内の不和、メディアありきでグループとしての体をなさないまま解散してしまったことなど……を反省した結果、メンバーも素人なら、スタッフも素人、その素人が必死に試行錯誤しながら、徐々に支持を広げていくダイナミズムこそAKBの魅力であった。

 戸賀崎氏の前職はショーパブの支配人。

 成人が酒を飲みながら女性を眺める場所から、未成年の少女たちを纏め、ヲタへの対応もしなければならない場所への転身であるだけに、共通点がありそうで全くない状態で、彼もまたメンバー以上に苦労し、進化を迫られていたことだろう。

 そして、そんな支配人や初期には秋元康も、劇場でファンと話をして、批判や厳しい指摘でも、正面から受け止めて、改善できるものは改善していくというところが、「ファンと運営が一体となってメンバーを育て上げていく」という、AKBの醍醐味として認知されていったのである。

 しかし、文字どおり『俺たちのアイドル』であったAKBは、とりまく環境の変化、なかでも人数の増加と、その利権に群がってくる“ハイエナ”の存在によって崩壊しつつある。試行錯誤は許されず、様々なコラボにより身動きがとりにくくなり、何か新しいことをしようとしても許されない。

 一緒にAKBを作ろうとしたファンに変わり、運営のすることをただ批判するだけの「指示待ちヲタ」のような存在が増え、形骸化したイベントをルーティンのようになぞるだけ。

 おそらくは、プロデューサーである秋元氏ですら、自由には動けない状態で、ファンとメンバーと運営のパイプ役だった戸賀崎氏も相当苦しかったと思われる。自身のスキャンダルもあり、支配人を辞めてカスタマーセンター長になっても、戸賀崎氏の進言がスムーズに実行されることは難しかったのではないだろうか?

 メンバーが卒業するとき、あるいは移籍するとき、本気で男泣きをした熱い男がこういう形でAKBを去るということに、なんともいえないやりきれなさを感じてしまうのである。