華麗な慶應女子の正体を知る! 馬場馬術・ 髙田茉莉亜 馬と通じ合うための「無の集中力」 そこに必要なこととは?
秋近し!ちょっと“文化的なスポーツ”の紹介を。東京五輪時には世田谷区馬事公苑で競技が開催される「馬場馬術」。ロンドン五輪では日本代表に当時71歳の選手が選出され、話題になった。男女年齢関係なしの奥深い競技だ。髙田茉莉亜選手は小学校時代から慶大系列校に在籍しつつ、全日本ヤングライダー選手権4連覇を果たした“プリンセス”。この競技の魅力とは?そして馬と心を通じ合う方法とは?五輪の予習の意味も込め、話を聞いた。
撮影 岸本勉 中村博之(PICSPORT)/競技時写真 Ryosuke KAJI/動画編集 田坂友暁(SpoDit)/テキスト構成 編集部
ーー「馬術」というと馬がぴょんと障害物を越える「障害馬術」のイメージがありますが、いっぽうで髙田さんが取り組まれている「馬場馬術」は、地味な印象があります。決められた馬場の中を馬が走ったり、後進したり、その場でステップしたり。その演技の正確さや美しさを競っている。
馬場馬術は、観ている方に「馬に乗っている選手は何もしてないのに、馬はちゃんと動いてる」って思われるのが美しいとされる競技なんです。選手としてはオーバーなリアクション、オーバーな動作というのは絶対しないようにし、できるだけ小さな動作で馬にこれをやってほしい、あれをやってほしいと伝えるようにしていて、それができるだけ観客の方や審判の方に分からないように「馬が自然に動いていてダンスしているみたい」に見えるように心がけています。
ーー馬にはどうやって指示を伝えている?
指示自体は馬の口についてるハミ(馬の口に含ませる金属製の棒状の道具)から手綱が伸びていて、両手で持ったその手綱の握り方や、少し引っ張る動作などで伝えます。また、馬の背中に鞍(くら)をつけてその上に乗ってお尻の感覚、座り方とかあとは太ももで挟む感覚とか。さらにはブーツのかかとに拍車というものをつけて、もうちょっとこうして欲しいと伝えたりします。
ーー馬に乗ったことがない、という人も多いと思います。馬にはどんな魅力がありますか?
馬の魅力ですか。たくさんあるんですけど。例えば、犬みたいに「おすわり」って言ったらおすわりするような生き物ではないんですけれど、すごく人間の気持ちを汲み取る動物で、その能力は犬ほど優れてると思っていて。私がこれをやって欲しいなって心から思ってるときはしっかり伝わるし、でも私がすごく落ち込んでたりとかしているときには何かを伝えようとしても伝わらないこともあります。そういう気持ちを汲み取る能力の高さは魅力でもあり、難しさでもありますね。
ーー警戒心が強い、とも聞きますが。
馬は草食動物で、野生の馬だったら常に肉食動物に襲われる心配があるんです。なんで、いくら始めから人間の手にかけられて育った馬とはいえ、本能では怖がりな動物なんですね。さらに馬それぞれに性格があります。物音とか周りの環境の変化とかに全く怖がらないすごいハートが強い馬がいる一方で……ふだん乗っている練習場から試合会場に移ったら「ここどこ?」ってナーバスになってしまう馬もいます。物音や観客の声援で、試合直前に怖がってしまう馬もいます。私がそういうときに心がけてるのは、人間がとにかく焦らないこと。試合前に『大丈夫、大丈夫だよ』って声をかけてあげて、撫でてあげる愛撫って言う動作をしてあげたりとか。人間が落ち着いてそれを馬に伝えることを心がけています
ーー実際の大会ではどんな風に馬に乗るのでしょう?
大きい試合では、だいたい初日は予選です。初日は馬がフレッシュだからすごく元気なんですね。私もやる気があって。気持ちがぴったりと一致することが多くって、調子が良いことが多いです。でも2日目になり決勝になると馬は疲れてきて、そのうえ天候が悪かったりすると、馬があまりやる気が出ないときがあります。そんなときは馬の気持ちが高ぶるように声をかけたりとか、あまりストレスをかけずに少しご機嫌にさせてあげるように乗るんです。このやりかたが奏功して全日本ジュニアで優勝させていただいたこともありました。
ーー髙田選手ご自身はどんな馬に乗ってきましたか?
私の場合、今まで乗ってきた馬がどちらかといえばどっぷり構えてくれるタイプが多かったですね。すごく。中学時代も高校時代も「馬に任せる」って言ったら変なんですけど、馬が先生で私は生徒で、馬に教えてもらいながら試合に出ていくっていうのがスタンダードでした。いっぽう大学になって出会った馬が、すごく感情の浮き沈みが激しい馬で。物音とかで驚いてしまうまではなかったんですが、すごくイライラしたり、暑かったら動きたがらないとか。まあ言ってしまえば単純なんですけど。コントロールが難しくて、お互い譲り合いながら乗る感じがしていました。馬がちょっとイライラしてるなと思ったらできるだけ極力ストレスをかけない乗り方をしてあげたりして。
ーー髙田選手ご自身はどんな馬に乗ってきましたか?
私は実は小さい頃からすごい動物好きとかそういうタイプではなくって、ゲームとかが好きなタイプだったし、幼稚園の頃も男の子とチャンバラ遊びするみたいなやんちゃな子どもでした。こんなに馬術にハマったのは予想外で。きっかけは母に連れられて乗馬を始めたことでした。馬が好きになったと言うか、どちらかといえば乗馬クラブに行くのが楽しくて。「乗馬」から「馬術」を続けていくにつれて馬の可愛さに気づいた。まるでペットみたいに可愛がってしまうこともあって。
ーー過去にはジュニアライダー選手権2連覇、ヤングライダー選手権4連覇を果たしています。勉学との両立はどのように?
「どんどん課外活動やってください」ってタイプの学校ではなかったんで、学校に行かなきゃいけないけど、でも馬術もちゃんとやりたいっていう葛藤はありました。国体の時期は平日も含めて長期間学校を休むこともありましたね。中学校のときは3学期制でそれぞれに中間、期末があって。高校は期末だけでしたが、試験期間中と大会が被ることはよくありました。なかでも中学校時代、夏にあるジュニアの一番大きい大会「全日本ジュニア馬場馬術大会」と、夏休み前の1学期の期末がしょっちゅう被っていたことを憶えています。毎年の恒例イベントだったので、その時期は少し大変でしたね。どうやって解決したかと言うと……事前の準備です。日程は先に分かっていた。だからそこから時間を逆算して予め勉強しました。ちゃんと週末には練習、そして大会に行けるようにと。もちろん、周囲の多くのサポートには本当に感謝しています。
ーーどのようなサポートを?
授業についていけなくなりそうになったとき、小学校から仲の良い友達がみんなノートを貸してくれたりしました。あるいは「ここ、こういう風に先生が言ってたよ」「ここテストに出るって言ってたよ」とか細かく教えてくれたり。 学校では友達の、馬術では家族や先生のサポートをいただけたので学業と馬術の両立がうまく図れました。
馬はすごく人間の気持ちを汲み取る動物
ーー「馬術」というと馬がぴょんと障害物を越える「障害馬術」のイメージがありますが、いっぽうで髙田さんが取り組まれている「馬場馬術」は、地味な印象があります。決められた馬場の中を馬が走ったり、後進したり、その場でステップしたり。その演技の正確さや美しさを競っている。
馬場馬術は、観ている方に「馬に乗っている選手は何もしてないのに、馬はちゃんと動いてる」って思われるのが美しいとされる競技なんです。選手としてはオーバーなリアクション、オーバーな動作というのは絶対しないようにし、できるだけ小さな動作で馬にこれをやってほしい、あれをやってほしいと伝えるようにしていて、それができるだけ観客の方や審判の方に分からないように「馬が自然に動いていてダンスしているみたい」に見えるように心がけています。
ーー馬にはどうやって指示を伝えている?
指示自体は馬の口についてるハミ(馬の口に含ませる金属製の棒状の道具)から手綱が伸びていて、両手で持ったその手綱の握り方や、少し引っ張る動作などで伝えます。また、馬の背中に鞍(くら)をつけてその上に乗ってお尻の感覚、座り方とかあとは太ももで挟む感覚とか。さらにはブーツのかかとに拍車というものをつけて、もうちょっとこうして欲しいと伝えたりします。
ーー馬に乗ったことがない、という人も多いと思います。馬にはどんな魅力がありますか?
馬の魅力ですか。たくさんあるんですけど。例えば、犬みたいに「おすわり」って言ったらおすわりするような生き物ではないんですけれど、すごく人間の気持ちを汲み取る動物で、その能力は犬ほど優れてると思っていて。私がこれをやって欲しいなって心から思ってるときはしっかり伝わるし、でも私がすごく落ち込んでたりとかしているときには何かを伝えようとしても伝わらないこともあります。そういう気持ちを汲み取る能力の高さは魅力でもあり、難しさでもありますね。
ーー警戒心が強い、とも聞きますが。
馬は草食動物で、野生の馬だったら常に肉食動物に襲われる心配があるんです。なんで、いくら始めから人間の手にかけられて育った馬とはいえ、本能では怖がりな動物なんですね。さらに馬それぞれに性格があります。物音とか周りの環境の変化とかに全く怖がらないすごいハートが強い馬がいる一方で……ふだん乗っている練習場から試合会場に移ったら「ここどこ?」ってナーバスになってしまう馬もいます。物音や観客の声援で、試合直前に怖がってしまう馬もいます。私がそういうときに心がけてるのは、人間がとにかく焦らないこと。試合前に『大丈夫、大丈夫だよ』って声をかけてあげて、撫でてあげる愛撫って言う動作をしてあげたりとか。人間が落ち着いてそれを馬に伝えることを心がけています
ーー実際の大会ではどんな風に馬に乗るのでしょう?
大きい試合では、だいたい初日は予選です。初日は馬がフレッシュだからすごく元気なんですね。私もやる気があって。気持ちがぴったりと一致することが多くって、調子が良いことが多いです。でも2日目になり決勝になると馬は疲れてきて、そのうえ天候が悪かったりすると、馬があまりやる気が出ないときがあります。そんなときは馬の気持ちが高ぶるように声をかけたりとか、あまりストレスをかけずに少しご機嫌にさせてあげるように乗るんです。このやりかたが奏功して全日本ジュニアで優勝させていただいたこともありました。
ーー髙田選手ご自身はどんな馬に乗ってきましたか?
私の場合、今まで乗ってきた馬がどちらかといえばどっぷり構えてくれるタイプが多かったですね。すごく。中学時代も高校時代も「馬に任せる」って言ったら変なんですけど、馬が先生で私は生徒で、馬に教えてもらいながら試合に出ていくっていうのがスタンダードでした。いっぽう大学になって出会った馬が、すごく感情の浮き沈みが激しい馬で。物音とかで驚いてしまうまではなかったんですが、すごくイライラしたり、暑かったら動きたがらないとか。まあ言ってしまえば単純なんですけど。コントロールが難しくて、お互い譲り合いながら乗る感じがしていました。馬がちょっとイライラしてるなと思ったらできるだけ極力ストレスをかけない乗り方をしてあげたりして。
学業との両立は「事前に日程を逆算して準備」
ーー髙田選手ご自身はどんな馬に乗ってきましたか?
私は実は小さい頃からすごい動物好きとかそういうタイプではなくって、ゲームとかが好きなタイプだったし、幼稚園の頃も男の子とチャンバラ遊びするみたいなやんちゃな子どもでした。こんなに馬術にハマったのは予想外で。きっかけは母に連れられて乗馬を始めたことでした。馬が好きになったと言うか、どちらかといえば乗馬クラブに行くのが楽しくて。「乗馬」から「馬術」を続けていくにつれて馬の可愛さに気づいた。まるでペットみたいに可愛がってしまうこともあって。
ーー過去にはジュニアライダー選手権2連覇、ヤングライダー選手権4連覇を果たしています。勉学との両立はどのように?
「どんどん課外活動やってください」ってタイプの学校ではなかったんで、学校に行かなきゃいけないけど、でも馬術もちゃんとやりたいっていう葛藤はありました。国体の時期は平日も含めて長期間学校を休むこともありましたね。中学校のときは3学期制でそれぞれに中間、期末があって。高校は期末だけでしたが、試験期間中と大会が被ることはよくありました。なかでも中学校時代、夏にあるジュニアの一番大きい大会「全日本ジュニア馬場馬術大会」と、夏休み前の1学期の期末がしょっちゅう被っていたことを憶えています。毎年の恒例イベントだったので、その時期は少し大変でしたね。どうやって解決したかと言うと……事前の準備です。日程は先に分かっていた。だからそこから時間を逆算して予め勉強しました。ちゃんと週末には練習、そして大会に行けるようにと。もちろん、周囲の多くのサポートには本当に感謝しています。
ーーどのようなサポートを?
授業についていけなくなりそうになったとき、小学校から仲の良い友達がみんなノートを貸してくれたりしました。あるいは「ここ、こういう風に先生が言ってたよ」「ここテストに出るって言ってたよ」とか細かく教えてくれたり。 学校では友達の、馬術では家族や先生のサポートをいただけたので学業と馬術の両立がうまく図れました。