歌が好き。この想いをメロディーに乗せて――矢田悠祐インタビュー
雑誌の読者モデルを経て、2012年に俳優デビュー。この3月にミュージカル『アルジャーノンに花束を』で舞台初主演を果たす。プレッシャーのかかる大役を前に、しかし矢田悠祐は淡々とインタビューに答える。「緊張しないタイプですか?」と尋ねると、「緊張している感を出さないようにしてるだけ」と笑ってみせた。「怖いなとか言ってても仕方がないですから」――覚悟はとうに決まっているのだ。

撮影/後藤倫人 取材・文/江尻亜由子 ヘアメイク/胡桃澤和久

読モとして活躍 ファッションに夢中だった学生時代



――矢田さんは、雑誌の読者モデルとして活躍されている頃に、今の事務所に声をかけられて俳優を目指すことになったと伺いました。当初から、俳優に興味はあったんですか?

はじめは、全然なかったです。僕、高校生のときにファッションに興味が出て、美容師さんかアパレル系の仕事をしたいなと思って、原宿によく行ってたんです。

――そもそも、ファッションに興味を持ったキッカケは?

高校時代の、今もずっと仲がいい友だちなんですけど、みんなすごく服に気を使ってて。それまで僕自身はそうでもなかったんですけど、彼らと一緒に買いものとか行くようになって、意識するようになったっていう感じですね。でも一時期、よくわかんなくなってました(笑)。

――よくわかんない?

当時はバイト代をほぼ全部、服に使ってたんですけど、途中でオシャレが何なのかわからなくなり……すごく奇抜な格好をするようになって。



――当時を振り返ってもらって、一番スゴかったスタイリングというと?

前後両面が破れてるジーンズとかはいてました。ももから下が、前も後ろもダメージ入りまくりで透けてるような。で、穴が空いたトップスを着て。

――今の矢田さんのファッションからは想像がつかない……。

あと、20歳くらいの頃は、モードな服しか着てないときがあって。ロングコートで全身真っ黒、みたいな。金髪で、しかも肩につくくらいの長さだったんですけど、それを結んで。

――ものすごく目立ちますよね。地元では有名だったんじゃないですか?

いえ…そんなことはなかったと思います。ただ、高校生の頃から原宿の服屋でバイトしてたり、カットモデルもやってたので、その界隈では知られていたかもしれないですね。

――そうやって目立つのは好きでした?

……わりと(笑)。

――学校ではどうでした?

普通でしたよ。ただ、校則がすごく厳しい学校で。僕は髪を伸ばしたかったから、先生の言うこととかあんまり聞いてなくて、今思うと生意気だったと思います(笑)。先生たちは扱いづらかっただろうなぁ…。

――そんな高校生活を経て、文化服装学院に在学中から、雑誌『CHOKi CHOKi』の読者モデルとして活躍されて。

その雑誌で年に1回、ライブハウスみたいなところでショーをやるんです。それでお客さんの前に出させてもらう機会があって、人前に出るのって楽しいなって思うようになって。そのタイミングで今の事務所を紹介してもらえたんですよね。



「歌いたいメロディーがある」作詞作曲への挑戦



――事務所に所属される際、オーディションの一環で歌を披露されたとか。

そういったことがキッカケで、初舞台も『合唱ブラボー!』という歌に関係する舞台でしたし、その後は『テニスの王子様』から始まって、ミュージカルにも出させていただくようになって。

――今では歌のお仕事が一番好きだとおっしゃっていますよね。

得意かどうかは別として、もともと好きではあったんですけど、やっていくうちに、さらに好きになっていきましたね。

――幼稚園から小6くらいまで、ピアノ教室にも通っていらしたとか。それはご家族の勧めで?

幼稚園のときに「やってみたい」って自分から言ったらしいです。小さすぎて覚えてないんですけど。

――ご兄弟が教室に通っていたとか?

いや、僕が長男なので。どうしてやりたいと思ったんでしょうね。そういえば最近知ったのですが、僕が通っていたピアノ教室って、ドレミファソラシドの音階を歌うレッスンもあったみたいで。それをやっていたおかげで、音感がちょっと良くなったのかもしれないって思いました。

――歌手になりたいと考えていた時期はありますか?

それはなかったです。ただカラオケは好きで、友だちとしょっちゅう行ってました。高校生のときはX JAPANさんにハマってて、よく歌ってましたね。

――最近はどういう曲を聴くんですか?

邦楽は清水翔太さんとか三浦大知さんを聴きますね。もっともよく聴くのはK-POPと洋楽。Jay Parkっていうアーティストが好きで、洋楽だとThe Weekendとか。基本、ヒップホップかR&Bです。

――今、ミュージカルに出演したり、自分の歌をリリースしたりしてる状況って、ご自身ではどう捉えてますか?

うれしいですよね。好きなことを仕事にできるって、なかなかないじゃないですか。好きでやってみたら意外に違った…なんてこともあるし。今のところ、それはないから。環境にも恵まれているし、ラッキーだなと思います。

――2016年5月にTVアニメ『SUPER LOVERS』のオープニング曲『おかえり。』でアーティストデビューされましたが、ミュージカルの中で歌うのと、ご自身の名前で歌うのとでは、やはり違いがありました?

ミュージカルでは役として歌うので、ある意味、制限がかけられるというか。でもアーティストとして自分自身で歌うと、自分がこういうふうに歌いたいって思うものを作れたりもします。



――ご自身の歌がテレビから流れてくるのは、どういう感覚でした?

いやぁ、不思議でしたよね(笑)。うれしい気持ちはもちろんありますけど、最初は「自分の曲だ……!?」って。ヘンな感じでした(笑)。

――最新シングルとなる『晴レ色メロディー』を最初に聴いたときは、どう思いましたか?

『おかえり。』もポップでかわいらしい曲だったんですけど、今回の曲は、タイトルどおり晴れやかで爽やかな曲だなぁって。僕が想像するアニメソングというより、普通のポップスに近いかなと思ったので、わりと素直に歌えました。



――アニメソングは歌うのが難しい?

アニメソングは普段聴いている音楽とも違うし、ミュージカルでも歌わないジャンルの曲なので、はじめは難しかったですね。「どうやって歌えばいいのかな」って。でも2回目で慣れてきたのもあるのか、今回はすごく歌いやすかったです。

――カップリング曲『Baby don't cry』は、矢田さんの作詞作曲ですね。作曲は、ピアノでされるんですか?

はい、ピアノは今もまだちょっと弾けるので。ホントに仮曲ですけど、自分で作ってみて、「アレンジをお願いします」って。自分でアレンジするわけじゃないから、そこを詰めていくのが大変でしたけど。

――アレンジャーさんと打ち合わせを重ねて?

「自分はこういうふうにしたい」っていうのを、何回も何回も意見を出させてもらいました。きっとアレンジャーさんはすごく大変だったと思います(笑)。でも最後は納得のいくものができあがったので、「本当にありがとうございました!!」っていう感じでした。

――もともと歌手志望ではなかったとおっしゃっていましたよね。それがいざ歌手になって、自分で作詞作曲って……すんなりできるものじゃないような。

やっぱり歌が好きだったので、こういうのを歌ってみたいなと思うメロディーはあって。せっかくCDを出せるんだったら、自分の曲を入れたいと思って、一生懸命作りました。本当にまだ、全然なんですけどね。



芝居の原点は『テニスの王子様』の不二周助にある



――お芝居については、『合唱ブラボー!』でデビュー後、『テニスの王子様』2ndシーズンの不二周助役を2年にわたって演じられました。

『テニスの王子様』(以下『テニス』)はエンターテインメント性が強い舞台なので、舞台上での見せ方が、すごく勉強になりました。ダンスレッスンにも通うようになって。僕の役は、キレイな動きをしないといけないから難しかったです。今、当時の映像を見ると全然できてなくてヤバいんですけど(笑)、そのときは、そのときできる最大限の力で臨みました。

――役者を続けていくうえで、テニミュが、そして不二周助がすべての原点になると、ブログに書かれていましたが、今でも『テニス』での経験が活かされていると感じますか?

そうですね。2年間同じ役を演じることってなかなかないので、自分の中の基準になってるかな。グラフみたいなものがあったとして、縦横の中心に不二周助がいるんです。新しい役を演じるときは、そこから上げるのか下げるのか、とか考えますね。

――『テニス』で共演されたメンバーとは、今でも連絡を取り合っていますか?

たまに会います。2年間、ほぼ毎日顔を合わせていたので、兄弟がそれぞれ自立した、みたいな感じで。

――たまに会ってもすぐ元の感覚に戻れるような。

「おぅ!」「久しぶり!」みたいな感じです。この前1年ぶりくらいに、部長(多和田秀弥さん)が声をかけて、全員じゃないんですけど、12人のうち10人が集まりました。よくこんなに集まったなぁと思って。久しぶりだったけど、みんなほとんど変わってなかった。めっちゃ面白かったですね。



――『テニス』卒業後も、数々の舞台で経験を積まれて、3月上演のミュージカル『アルジャーノンに花束を』(以下『アルジャーノン』)では、いよいよ初主演です。まずは、出演の経緯から伺いたいのですが。

オーディションではなく、直接お話をいただきました。一昨年の舞台『恋するブロードウェイ♪ vol.4』のときに、『アルジャーノン』のプロデューサー・栫ヒロさんが観に来ていらして。僕の歌を聴いて、歌だけで「君のことを選んだ」とおっしゃっていただきました。

――公式サイトに栫さんのコメントが掲載されていますが、矢田さんの歌について「神から授かりし真実の美しさ」というような表現をされてました。

ハードルを、めちゃくちゃ上げられてますよね…(笑)。

――出演のオファーがあって、どう思いました?

本当にうれしかったんですけど……実は僕、作品名は知っていたのですが、本を読んだことも舞台を見たこともなくて。まずは「どういう話なんだろう?」っていろいろ調べるところから始めたんです。そしたらすごく面白かった。「これを自分がやるのか」って、楽しみな部分が大きくなりましたね。やっぱり主演だと、いっぱい歌えるじゃないですか。

――「主演だからプレッシャーが…」ではなく、「主演だからいっぱい歌える!」。

はい(笑)。

――矢田さんは本当に歌が好きなんですね。

『アルジャーノン』は、どの曲もすごくいいんですよ。なので、どういうふうに歌おうかなって、今からすごく楽しみです。ただ、このお話が決まるまでは「主演はいつかやれるときが来るのかな?」くらいに思ってたんですけどね(笑)。今まで出演した舞台でも、「主演ってスゴいことだな」と思ってみなさんを見ていたので。

――そうなんですか?

主演をやる人たちって、僕とタイプが違う方が多くて…。だから自分がその立場になるっていう不安はちょっとありましたけど、怖いなとか言っててもしょうがないですからね(笑)。決まったことは絶対やらないといけないので、そういうふうに思ってやろうかなって。