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映画の中では登場人物がマティーニを飲むと「カッコイイ」印象を与え、シャンパンを飲めば「こじゃれた」印象を与えることができます。一方で、映画に登場する「ミルク」には、ほかのドリンクとは異なる深い意味合いが隠されている、ということを解説したムービーが登場しています。

Milk in Movies: Why Do Characters Drink It? - YouTube

映画で登場人物が何を口にするかによって、登場人物が持つキャラクターを語っていることがあります。例えば以下のようにウイスキーグラスを掲げていれば、その人物は「クール」に見えるでしょう。



一方で、ミルクには少し違った意味合いが生じます。



「ミルク」と聞いたとき、あなたは「若さ」や「純白」を思い浮かべるでしょう。映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」でも、詐欺師役のレオナルド・ディカプリオが「16歳のパイロットらしさ」を出すため、キャビンアテンダントにミルクを頼むシーンがあるように。



映画「時計じかけのオレンジ」のティーンエイジャーたちも同じくミルクを飲むシーンが有名です。暴力的な子どもたちがミルクを飲むことで、すべての狂気が子どもの手によって行なわれていることを思い出させるわけです。



ジェームズ・ディーンがミルク瓶を飲むシーンが有名な映画「理由なき反抗」では、ミルクが主人公の葛藤をうまく表わすことに一役買っています。



スポンジ・ボブ」でも魚たちが「おれはタフガイだ!朝食にミルクを飲まなかったんだぜ!」と威張るシーンがあるように、ミルクを飲まないことで「男らしさ」を演出する効果もあります。



深読みをすれば、映画「ホーム・アローン」で主人公のケビンが栄養豊富なミルクをぶちまけるシーンは、「母親の愛情不足」を象徴しているとも言えるのです。





つまりミルクは「子ども」を象徴する意味合いがあるため、映画「レオン」で冷徹な殺し屋がミルクを飲むことで、ユーモアを感じられるはず。



アルフレッド・ヒッチコック監督の映画「断崖」では、「ミルクに毒が入っているのではないか」と観衆に思わせるシーンがあります。わざわざ毒殺の飲料にミルクを選ぶことで不気味さを演出することに成功しており、コーヒーやウイスキーでは同じ効果は出せないでしょう。



ミルクを使って「不気味さ」「恐ろしさ」を強調する映画はほかにもあり、「イングロリアス・バスターズ」でハンス・ランダ親衛隊大佐がミルクを飲みながら脅迫を行なうシーンも同じ。



ミルクは子ども時代の無邪気さを連想させながらも、現実的な「力の象徴」として映画に登場していると言えます。



映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」では、物資が不足した世界で一部の人だけが飲めるミルクとして、「人間の母乳」が登場します。



映画「ミート・ザ・ペアレンツ2」でも、ミルクを飲んだ後に「それはデビーの母乳だ」と言われて口から出してしまうシーンがあるように、一般的に「大人が母乳を飲む」という行為はタブーと見なされるもの。



マッドマックス 怒りのデス・ロードは簡単にいうと「液体」が重要な意味合いを持つ映画となっており、女性は母乳を搾取され……



男性は血液を吸い取られます。



そして民衆は水をコントロールされて生きています。



そのすべての液体を支配しているのがイモータン・ジョーであり、ジョーの家系は多くが筋骨隆々な男性に育っています。つまり、栄養豊富な母乳は「強さ」を象徴しているわけです。



主人公のマックスが母乳で顔を洗うシーンがありますが、利己的だったマックスがフュリオサに対して献身的になるターニングポイントとして描かれています。



母乳という強さの象徴を受けて、マックスがフュリオサに血液を他人に輸血するというシーンにつながという、マックスの心の変化が描れているわけです。



つまり、映画に登場するミルクは強力なストーリーテリングの道具であり、ミルクを手にした登場人物の強さや心情を演出することができます。もし今後映画を見ていて「ミルク」が登場したときは、一体どんな意味が込められているのか、考えるのもおもしろいかもしれません。