一人称や語尾……「言葉」がその人の「キャラ」を決める仕組み
役割語は、そのひとの性別など特徴をイメージさせることばで、時代や文化によって変化する。多くのひとに認知されれば役割語となるので、まずは人気キャラクターを立てるのが先決だ。
■話し手をイメージさせる「役割語」
話すひとの年齢や職業などをイメージさせることばは役割語(やくわりご)と呼ばれ、話の内容は同じでも「だれ」がしゃべっているのかの印象が変わる。たとえばYesと同意するだけでも、
・そうじゃ … 老人、学者
・うむ … 武士
が聞き手に伝わる。以前紹介した方言にも同じ働きがあるが、役割語は地域だけでなく、説明不要でそのひとの特徴が伝わるのが大きな違いだ。
・男性 … おれ、ぼく、〜だ
・女性 … わたし、あたし、〜よ
などは、それが正しいことばであるように使われている。さらに、語尾を少し変えるだけで、
・〜よ … 女性
・〜ですわ … お嬢様
と、印象ががらっと変わる。「ござる」なら侍、「おじゃる」なら公家と、見たことも会ったこともない人物さえも伝えることができるのだ。
■どんな人物かは聞き手次第
役割語はどうやって生まれたのか? 古い文献を読めば、「かなづかい」からある程度は特定できるが、話しことばまで同じとは限らない。これらはおもに想像をベースに、多くのひとに受け入れられたことばが役割語として定着しているのだ。
もっとも有力な担い手は文学作品で、
・作品中の人物の「ことばづかい」に特徴を持たせる
・ことばづかいと人物像が結びつく
読み手に強い印象を与え、広く浸透するほどに、ことばづかいから人物が連想され、役割語に変わる仕組みだ。
言い換えれば想像の産物なので、実際にそうしゃべっているかは定かでない。「わし」「〜じゃ」と表現すれば老人、長老、博士などを連想するだろうが、実際にそのように話しているとは限らない。極端な言い方をすれば、ことばの持つイメージが一人歩きしているだけで、演出の一部と考えるべきである。
女性ことばはその一例で、現在は性差が少なくなり、かつて普通に使われていた「〜ですわ」は、いまでは奥様/お嬢様のイメージが強く、女性のことばと表現すると違和感が強い。時代や文化とともに聞き手の印象も変わり、果たすべき役割が変わるのもこのことばの特徴である。
テレビやマンガから生まれた役割語も多く、みんなに広まれば役割語、認知度が低ければヘンなしゃべりかたで終わってしまう。あらたな役割語を生み出したいひとは、まずは人気キャラを作ることから始めよう。
■まとめ
・話し手の性別や職業などを印象づけるのが「役割語」
・実際にそうしゃべっていたか、よりも、聞き手のイメージが大事
・時代によって役割も変わる
