「映画祭を創る、女性たち。」vol.4 コンテンツマーケットディレクター 森下美香さん
――森下さんは行う映画祭でのディレクションとは一体どんな内容なのでしょうか?
森下:映画祭には、映画やTV番組の売買をしているマーケットがあるんです。東京国際映画祭のコンテンツマーケットは、TIFFCOM(ティフコム)という名前で、六本木ヒルズの40階で見本市を行っているのですが、そこを担当しております。ちょっと他の人とは毛色が違い、ビジネス寄りのBtoBのイベントを行っています。――映画祭のビジネスとは?
森下: 映画祭自体は、基本的にはBtoCの上映がメインなのですが、その上映する日本の作品を、海外バイヤーが購入したり、逆に海外の映画祭で、海外作品を日本のバイヤーが購入し日本で公開する、そういったマーケットの事です。――森下さんはバイヤーをされるのですか?
森下:私自身は買う人間ではないですね。松竹や東宝などの配給会社が、TIFFCOMのコンテンツマーケットに参加することで、日本の作品を海外に売ることができるんです。もちろん海外作品もそう。カンヌに代表される様な映画の見本市があると思うんですけど、ブースを各バイヤーの皆さんに持っていただいて、それぞれ世界各国のバイヤー達が作品購入の交渉を行う。私はオーガナイザーとして、その場所を提供しているんです。――なるほど。
森下:映画祭の上映等とは別の場所で、さらに関係者のみのスペースになるので、一般の方には分かりづらいですよね。ただ映画祭は、一般の上映とマーケットというのは必ずセットであるというのが、世界基準であり、ビジネスとしての映画を紹介するというのが私の役目なんです。――このお仕事につかれたきっかけはなんですか?
森下:初めは、15年前に住んでいた香港の充実した生活への恩返しの気持ちで、香港の貿易を促進する国の団体の日本の支部に就職したんです。日本と香港の橋渡しができるんじゃないかと思いまして。その時自分の担当だったのが、いわゆる映画産業だったんです。この関係の方からご紹介をいただいて、やってみないかということで。じゃ今度は日本の作品を海外に出していく手助けがしたいなと思い、入ったというのがきっかけですね。――この仕事で必要なスキルって何でしょうか?
森下:コミュニケーション能力でしょうね。東京国際映画祭が終わると世界に向けてずーっと営業の旅に回るんですね。L.A、ベルリン、香港、カンヌに行って、今年は北京にも行きましたね。「死のロード」と言っているのですが(笑)。時差があっても朝から晩まで基本的に商談、営業をしながら、夜はパーティー。実際、人と人とが出会って商売が成り立つという、前時代的というか、リアルなことがまだ強く根付いている産業なんです。結局、「あなたにだから売るのよ」というような人と人とのつながりなので、その辺が得意な人、パーティーに行っても知らない人でも自分から名刺を持ってガンガン行けるような、ちょっとずうずうしい人じゃないと難しいかな。私も最初できなかったんですけど、仕事となると、もうスイッチが入るのでやりますね。――自分から進んでいくのですか?
森下:行きますね、知らなくても「Hi」と言いながら。で、またその人たちにまた3ヵ月後には別の国で会ったりするので、そうすると最後東京に戻ってきてくれたりするんですよ。その為の営業というか。そう考えると一番大きいのは体力かもしれないですね。――今、世界各国で面白いマーケットはどこですか?
森下:東京ですね(笑)。実はリーマンショック以来、どこの世界も本当に厳しいですね。市場は、カンヌがトップ、その次はベルリン、アメリカと言われています。アジアはどこも均衡していたんですけど、TIFFCOMだけはおかげさまで今年も伸びたんですね。出展数や参加国が増えたりとか。去年は47カ国で今年は53カ国。減ることはあっても増えることはないので、そういう意味では東京はおもしろいと思います。――それだけ大変な仕事をしているとストレスも溜まるのでは?
森下:正直溜まります。今の解消方法は、サーフィンです。40歳になってから始めたんですが。それをやるために平日仕事をして土日に息抜きをするというか、本当にライフワークですね。スポーツクラブに行くのと同じ感覚で1週間に1度、四季を通して真冬でも行きますね。忙しいときでも、もちろん行きます(笑)。今、ほとんど休みがないんですけど、この間の3連休とかは1日は海であとの2日は仕事とかいう風にしないと精神的にちょっと辛いかな。――身体を休めるよりも身体を動かしていた方がリラックスできるのですか?
森下:仕事をしているとメイクはもちろん、ファッションにも気を使うのは当たり前。気が抜けない事が多いんです。でも海では男性も女性も関係なく、ある意味楽しいというよりはちょっと戦場的なとこでもある(笑)。ひとつの波を狙って男の人に負けずに。その明快さがいいんです。サーフィンをやる前は、美容一筋で美白に命を懸けてたんですけど、始めてから全部をやめてしまって。だから顔も黒くてももういいかなって。ただ、身体がすごく丈夫になりましたね。本当に風邪をひかなくなって、頑張れる。今の時期は、精神的にもつらくなりますし、ずっとテンション高いままで貫かないといけない状態が続くんです。そういうのも耐えられるようになった気がします。■関連リンク
・東京国際映画祭
・「映画祭を創る、女性たち。」vol.2 作品チーム ゲストホスピタリティ担当 浅田智穂さん(2010年10月15日)
・「映画祭を創る、女性たち。」vol.1 会場運用・調整 山下さん(2010年10月12日)
■「第23回東京国際映画祭」森下美香さんのオススメ作品
「4枚目の似顔絵」/「アジアの風」部門
「ズーム・ハンティング」/「アジアの風」部門
森下さんおすすめコメント:
同時開催で企画マーケット(TPG)があるのですが、この作品は過去の出品作です。今年作品が完成して東京国際映画祭に帰って来ました。それに、もともと香港にいましたので、香港とか台湾の映画は非常に好きなのもありますね。「ズーム・ハンティング」は、現在の台北の本当に都会的な、内容はスリラーの心理描写が本当に怖くて面白い作品です。「4枚目の似顔絵」現代の地方のお話なんです。10歳の男の子を巡り展開していくストーリーで、心に響く作品になっています。どちらも、台湾の今の時代、風景、カルチャーが映像で見る事のできる贅沢なエンターテイメントです。
