「福島の着実な復興と、人々の幸せを願う」 天皇陛下、事故から15年の原発立地町巡る

天皇陛下は、巨大地震による原発事故が未曽有の複合災害を引き起こした東京電力福島第1原発が立つ福島県双葉町を訪問された。
15年を経た被災地は「帰還困難区域」が多く残り、県全体で今なお約2万3千人が避難を強いられる。
陛下は過酷な被害に改めて向き合うとともに、故郷の再生へ歩みを続ける人たちの声に直に耳を傾けた。(共同通信=黒木和磨)
▽震災の傷
陛下は4月6日午後、皇后さまと長女愛子さまと一緒に双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」に向かった。
車列は除染廃棄物を入れた黒い袋が積まれた場所のそばを通った。伝承館で陛下は展示を巡りながら、館長から被ばくに対する住民の不安や子どもたちへの影響を聞き、深くうなずき、質問を重ねていた。
町は全町避難を経験し、面積の96%は放射線量が高いと判断された帰還困難区域になった。一部が解除され、住民帰還が始まったのは2022年。在位中の上皇ご夫妻が2018年に全国植樹祭に向かう途中、高速道路を通過したことはあったが、天皇が直接訪れるのは今回が初めてとなった。
双葉町によると、居住人口は3月末時点で220人。住民登録数の4%にとどまる。
陛下は2月の誕生日記者会見で「生活環境が一変してしまった方々のことを思うと、震災の傷はいまだ癒えていないと感じる」と案じた。
側近は「福島が直面している厳しさは十二分に承知されている。この状況を愛子さまも実際に見る必要があると考え、同伴された」と明かす。
▽再生
福島第1原発がまたがる大熊町には7日に訪れ、小中学生の授業を見学するほか、特産品の再生を目指す若い移住者と面会する。「少しずつ復興へ進む姿を見てもらいたい」と県担当者は語る。
双葉町で2020年から飲食店を営む山本敦子さん(54)も故郷のために奮闘している一人だ。原発から約3キロにあった自宅は県外避難の間に動物に荒らされ、取り壊した。いわき市から1時間かけて店へ通い、住民や働く人の暮らしを支える。
山本さんは6日、天皇ご一家との懇談の場に出席した。「最近はどうですか」。こう気にかけてくれた陛下に、山本さんは「毎日忙しいです」と笑顔で答えた。「被災地を忘れずにいてくれることがうれしかった。これからも頑張っていきたい」と誓った。
陛下は夜に感想を公表した。「福島の今後の着実な復興と、人々の幸せを心から願っています」


